第24話対魔王軍砦、海津砦

 半ば、強制的に連れ出され向かっているのは叔父上と信盛が反対を押し切ってまで建築した、四層からなる城だ、便宜上砦になってしまったがあえて叔父上達は城と呼んでいるのだ。


 海津城、かつて対上杉のために建てた城であり、よく父上が海津城から出陣し上杉謙信と何度も戦ったと聞いている。


 その時、海津城城主として入っていたのが昌信であったのだが、彼は上杉に睨みをきかせていたために戦場に出ることは少なくなり、長篠での出迎えが久しぶりの戦になったのだろうもっとも決着は、早く着いてしまい彼は敗戦した俺を迎えにきただけに終わってしまったのだが。


 叔父上は、それを生で見ていたのか定かでは無いが、ある一種の願いを込めて海津の名を入れたのだろう。それに砦というよりほぼ城だという話で当時の海津城より立派なのは確からしい。


 話によると何度も魔王軍からの侵攻を防いできたらしいが、今回ばかりはかなりまずい状況だという。何せ今回、野戦での決戦に敗北し多大な犠牲を出してしまったようなのだ。

 いかに堅固な城でも守る兵士が少ないと落ちるのも時間の問題であろうと、俺たちに救援に向かってくれと頼まれたはずなのだが。


 

 「かっちゃん、見てよ!!あそこに手頃な魔物がいるよ!かっちゃんのレベル上げのためにたおそうよ!」


 馬上から指差してみつけた魔物に興奮、女らしさがない彼女と二人で向かう事になってしまった。


 (「はぁ〜、一体何でこんな事になてしまったのだろうな」


 昌景の呼ぶ声に答えずに俺は昌景の馬を引いてから暫くの間考え込んでしまう。


  誓約書のおかげで俺は一般兵士と同じ扱いのため、馬に乗ることさえできなくなり、こうして昌景の馬を引くことが今回、道中の仕事になってしまったのだ。砦は近くにあるらしいんだがおわいにくさま歩きの移動なために時間がかかってしまうだろう。もっとも馬なら早く着いたと思うのだがな、こればかりはあまり昌景には言えないのだ。


 「あぁ、そうだがここで体力を使うのはダメだ、んな奴は放っておくんだ、それに…そのあだ名みたいな呼び方どうにかならんのか?なんかむず痒いというかあまりいい気がしないんだ」


 いつから、この呼び方になったのは知らないが昌景は何故かこの呼び方をする、何回かやめてほしいと頼んだのだが一向にやめてくれる気はサラサラないようなのだ。


 昌景によると信頼した人にはそう呼ぼうと決めているらしい。だが昌信に関してはためらってしまうというのだから驚きだ。詳しく書いてみると一人だけまったく違う空気をまとっているからすこし苦手意識があるとのこと、それは仕方ないと俺は思うしかなかった。



 現にこの異世界に来て俺自身若返ってしまっていることはわかってはいたが、どうやら精神面も若返ってしまっているようなんだ。


 最近そのことに気づいて昌信にも聞いたのだが当の本人は全く違和感が無いという。


 どうやら個人差があるのだろうかはたまた耐性があるのかわからないが、今のところ何か困ったこととは言えば口調が変わり始めている感じがするのだが、それは単に若返ってしまっただけの副作用だと思う。


 だが、気をつけなければならない精神面の退化は戦場では命取りになるかもしれない。甘さや恐怖といった、今まで耐えれてきたものが急に耐えれなくなってしまうかもしれないと思うと少し不安になる。


 今までのように戦場に呑まれなかった事が呑まれてしまう事がないように実戦を通して鍛えていくしか無いと思う。


 「そう言えばかっちゃん、海津砦の指揮官については知ってる?」


 さっきまですこしむくれていたが、すぐにきげんを直して新しい話題を振ってきた。



 「いや、知らないな」


 

 「それじゃあ、私が教えるね。今回救援に向かう海津砦の指揮官は帝国で「槍聖」の名で有名なラゼル大佐です」


 「確か、帝国内で右に出る者がいないほどの槍使いとは聞いたことはあるが……その大佐は確か…」


 一度だけ街での情報を集める時に聞いた事がある、帝国内です特に優れたものに与えられる、呼び名で「剣聖」、「槍聖」といった二人の達人がいるとこの二人がいる限り帝国に敗北はないと言われていたが。


 ある理由が俺を不安にさせてしまうそれは。


 「その二人はかなりの高齢と聞くのだが実際どのくらいなんだ?」


 「確か、今年でラザル大佐は七十五になるらしいんだけどね、歳の割にはよく動ける人なんだよ、まぁ、高レベルのおかげでもあるんだけどねそれでも片手間にドラゴンを倒せるほどなんだけどね」


 「だが、そんな方が苦戦されているという事は敵にもかなりの実力者だったのかだな」


 そう俺が答えると昌景は無言で頷いた。


 そんな話をしながら、険しい山を登っていくと、ある建物が見えてくる。話に聞いていた海津砦に着いたようだ。


  「おい、昌景本当にここであっているのか?」


 ここで合っているのか、昌景に問う。


 「そうだとおもうんだけどね……」


 聞いていた話と違い過ぎていた、まるで落城間近のような半壊した城がそびえ立っていた。



 この半壊した城から分かる事はこの先俺たちに待っている戦いが壮絶なものになるかもしれないと

 

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