第23話一般兵士って悪い冗談だよな……


 あの後、気軽に叔父上の話を引き受け、俺はさっさと寝ることにした。いい加減長い話をするのは飽きてしまい、早く寝たいのだ。


 途中昌景や信春達に声をかけられたが、一刻も早く寝たかったのでそっけない態度を取ってしまった。特に昌景は怒っていたようで何かわーぎゃー言ってたがむしをしてしまった。


 「まぁ、明日には機嫌が直るとは思っていたがまさかあんな事件を起こすとは思ってはいなかった。


 翌朝、何故か俺は紐で縛られていてどこかの庭にいた。


 「いや、一体これはどう言うことなんだ?」


 確か今日から叔父上の話で近くの砦の援軍に向かう話だった筈なのだが何故か既に処刑されるかもしれない状況になっている。


 (「落ち着け、いくら何でもあの叔父上がこんな短絡的な事はしない。もっと他に俺を妬んでいる奴…いやそれも……いない一体誰が」)


まったく心当たりが無いまましばらく思考を働かせていると身を覚えのある赤い鎧を着た娘が降りてくるではないか。


 「どうだ!!流石のかっちゃんでも動けないだろう!!はっーはっはっは!!」


 たからかに勝利宣言を上げる昌景に俺は安堵の息を漏らす。


 「よかったこのまま訳のわからない奴に殺されると思ってヒヤヒヤしたが、なんだお前の悪戯だったのか安心した。でとりあえずこれを解いてくれないか?」


 もし、何かしらの刺客なら終わっていたが、身内のしでかしたことなら、なんてことは無い早くこんな悪ふざけから解放してもらおう。


 俺は、身体の自由を奪っている紐を切ってもらう為に昌景に近づく、だがどう言う訳か、彼女は後退りを離れていくではないか。


 「…………」


  「………」


 一歩進めば一歩下がる、また一歩進めば下がっていくまったく彼女の意図がわからない勝頼は痺れを切らしてしまう。


 「おい、一体どう言うことなんだ?」


 「どうもこうも……自分の胸に聞いたらいいと思うけど、あっあとこれわたしとくね」


 ある一定の距離を保ちつつ、昌景は一枚の紙を手渡してきた。


 怪訝な顔でもらった書類を見て俺はその紙を破りたい衝動に駆られてしまう。

「こここ、これは一体どういう、いや何でこんなことになってしまったかの経緯を知りたいんだが?」


 「経緯も何も昨日無視したからのあてつけだ!まぁ今回だか特別ということで決まった事だからよろしくね」


 彼女の悪魔のような笑顔に俺は肩を震わせながらもう一度内容を確認してみる。もしかしたら見間違いかもしれないと思ったがそうではなかつたらしいことに軽く目眩をおぼえてしまう。


 そこには山県昌景の部下として任務に当たる誓約書であった。そこに書いてある責任者の名前に信盛と叔父上の名前があるでは無いか!


 「あの二人よくも〜」


 多分、信盛は面白そうだからという理由だろうが叔父上に関しては昨日の嫌がらせであろう。あの人そこまでするような人ではなかった筈なのに、権力を手に入れると人は変わってしまうものだと俺は少し叔父上のことが心配なる。



 とりあえずあの二人は後で文句を言ってやるか


 俺は諦めこの状況を受け入れることにした、そんな俺を得意げに笑う昌景は俺の縄を解くと手を繋いできた。


 いきなりの事に俺は困惑する、最近この体にも慣れたのか、それとも心まで若返ってきてるのかこういうことをされると少し照れてしまう自分がいる事に少し驚いてしまう。


 今まで、男勝りな女だと思っていたが、案外手が柔らかくて改めて彼女の事を女だと再認識する。たまに男同士だと勘違いしてしまうことがあるがどうやらこれから勘違いすることは無いと思う。


 「で、一体どこに向かうつもりだ?」


 手を引かれながら俺は彼女に行き先を聞く、ある程度受け入れたが流石にこれからどこへ向かうのかは気にになる。


  彼女はクルッと身を翻してにこやかに告げる、今気づいたが彼女、下はいつもの鎧では無く、スカート見たいらしく履き慣れていないのかチラッと可愛らしい下着が見えてしまう。


 だがそんなことがどうでも良くなる事が彼女の口から告げられる。


 「昨日、あの将軍さんと相談して砦の偵察になったからもう準備はしてあるからあとは」


 俺は、全速力で逃げようとしたがレベル差により掴まれた手を振り解くことは出来なかった。


 (「あの弟、マジでおぼえていろ!」)


俺は抵抗もできずに引きずられる形で面倒事にまた巻き込まれててしまうのだった。


 その頃、信盛は尋常じゃない寒気に襲われ何かを悟ったのか、死んだ目で呟く。


 「僕、生きてるのかな?今日か明日が命日になるのかな?」

 

 自業自得だと思いつつも面白い事になればそれでいいかと自分に納得させながら用意されたお茶を噛み締めながら仕事の続きをする。


 久しぶりのあった兄の顔を思い出しながらこの帝国の未来のために奮闘するのであった。


 

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