第20話 第二章帝都授与式編序章

 なんでこうなってしまったのか?と、馬車に揺られながら仲間達の雑談に入らず遠い景色を眺めている。


 ことの発端はまさかこの世界に来ていた。弟、仁科信盛による帝国への謁見が決まったことから始まる。しかも強制参加ときたものだ。


 「一体なんでこんなことになってしまったんださっさと街から出ておけばよかったよ」


「まぁ、そんなこと言わないで下さいよ〜、皇帝陛下直々にお言葉をもらうなんてなかなか珍しいことなんですからね」


横でどっからかくすねてきたのか、わからないが干し肉を齧りながら、昌景は陽気に機嫌の悪い俺の口元に干し肉をすすめてくる。最近何故か距離が近いするのだが、気のせいだと思いたい。



 「そりゃあ、わかっているのだが俺の求めているものとは違う気がするんだ。それにまた厄介なことに巻き込まれるのはごめんだ」


この異世界に置いてはこの上ない名誉なことなのであろうが、俺にとっては迷惑でしか無い。そもそも俺は冒険者として自由気ままにやっていこうと思っていたのに、また街を守れなどの命令が来たらことわってやりたいとかんがえている。

 

 さらに休息が必要だ。ここまでくるのに俺たちは街の防衛に対する作業をしていたのだからまともに休めていなかったから、ここで俺は少しだけ瞳を閉じて眠ることにした。



 「カッちゃん?、カッちゃん!?」


突然誰かに揺さぶられている感覚がして、ゆっくりと瞼を開ける、周りが暗いということは、もうすでに日は落ちてしまったようだ。


 「やっと起きました!?、もう!長い事寝過ぎだよ。ほら、さっそく着いたから早く立って?」


「あぁ、わかったすまない………お前今なんて言った?」


あまりに自然な流れだった為に、理解するのに少し遅れてしまった。昌景はキョトンとしているしよく周りを見てみるとここはどうやらどこかの宿屋の様だった。


「一体何が起きたのだ?説明を求めるのだが俺が納得ができる事だと良いのだが」


「あー、それは無理かも。だって帝国の将軍の方がどうやら転移魔法を使えたらしくこの通り私達は帝国の首都に着いたわけですよ。そこで寝ていたカッちゃんを連れてこのホテルについた訳」


聞き終えた俺はしばらく眉間を押さえてしまうなんて事だあの弟そんな魔法までつかえるなんて。


 一応、信盛の事は誰にも伝えていない。それは口止めをされていたからだ。理由は確かなんだったかな。


 「にいさん、僕が弟って事黙っていて欲しいんだよ」


 「別にいいがなんでだ?」


「いやー、メリットは無いけど、単に僕の趣味なんだけどねーまぁそういう事で頼むよ」



 「はあ、まぁわかったよ黙っておくよ」


 「ありがとう兄さん!!あいしてるー!」


「うお!?、お前そんな性格だったか!?もう少しかしこまったやつだと思っていたのだが!?」


 あの後なかなか離れなかったな。どうやらこの世界は人を変えてしまうものでもあるのかと思ってしまう。


  「カッちゃん、どうしたの?さっきから頭を抱えて痛いんですか?」


俺のことを心配してか、昌景は俺の額に手をやってくる、その手は柔らかくてどこか安心する感じがして昌景の顔を見てしまう。


 「あっ、ついね。心配でね!熱はない様だしよかったよ!!」


 少し頬を赤らめながら彼女は手を引く。あの奇襲戦以来少しだけ様子がおかしい様だがその理由は全くもってわからない。


 「で、ここまで運んでくれたのは一体誰なんだ?あのいけすかない将校かそれとも昌信かとりあえず礼を言いにいかなければーー」


 「私が運んできました」


 「えっ、昌景お前が」


 遮る様に彼女らしくないしおらしい声で、俺は少し驚き確認すると彼女は短く頷く。


「……ありがとう、すまないな」


「いえ、私がやりたかったのでそれに…もう少し話がしたかったのに先に寝てしまったからその仕返しです、抱き抱えて街中を歩きましたから」


 「俺、授与式でたく無いんだけど」


 青ざめる俺に対して彼女は声を出して笑う。


 「なんだ!?、そんなに人を辱めたのがお前の趣味なのか?!」


 「いえ、ここのところ元気が無かったみたいですからね、少しからかっだよ、そしたら久しぶりに君の笑っているところ見れてよかったよ。ハァー、慣れない敬語とか使ったから疲れたよ」


 どうやら、彼女なりに元気だけようとしてくれていたのだろう。少しいつもと違っていたのは気を遣ってくれていであんな感じになってしまったのだろう。


 「さて、私はこれで失礼しますけど、早く来てくださいよ!ここの宿屋の料理すごく美味しかったんだよ!カッちゃんの分は残してあるんだけど早くしないとなくなってしまうからね!!」


まだ敬語が抜けきっていないのか、少しだけ違和感のある感じのまま彼女は笑顔を向けて部屋を出ていった。

 

 「仕方ないか〜、まぁなる様になるだけだ」


 俺は、鬱屈した気分を振り払いながらみんなの待つ食堂へと向かう。

 この時の俺は授与式で起こる衝撃的な出来事になるとはもいもしなかった。


 


 

 

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