第15話まだ始まったばかり

 いきなり、現れた俺達を見て敵は大層驚いていたが、そんなのに構っていられるほど俺達には時間はなかった。


 まず俺と昌信、信春を筆頭に約二十名程の精鋭部隊による突撃で敵の心を砕きにかかる。


 身体強化によるバフをかけてもらい、俺達は一斉に斬りかかる。


 人の血とは違う、紫色の体液が地面を濡らしていく、わずか一瞬のうちに三十人ほどを切り裂いた俺達を見て敵のゴブリン達は少し後ずさりをする。


 (「どうやら、少しばかりは聞いているようだなだがまだ足りない」)


今にも逃げそうになっている敵の懐に入り一気に刀を横腹に滑らせる、刀を鞘に戻すかのような滑らかさで相手の横腹に吸い込まれ敵兵は苦悶の表情を浮かべるがお構いなしに引き抜き、そのまま首を切り落とす。


 続いて二体同時に襲い掛かってくるが俺は少しだけ身を捻り難なくいなし、そのまま一気に一体は胸を貫き、そのままもう一体の足に刀を差し、よろめいたところを鞘で殴り飛ばす。


 バキッと鈍い音が手にも耳にも響くがお構いなしに殴打の嵐を敵にぶつける。何かを叫んでいるようだったが次第に叫び声は小さくなり、遂にはなにもいわなくなった。


 周りの奴等は敵味方関係なく、俺の闘い方に少し引いているようだったがお構いなしに、続けて敵を斬り続ける。


 多分、冒険者達はスキルで習得した技などでゴブリン達をたおしているようだったが、俺はそんなのは持ち合わせていない。あるのは、昔教えてもらった組手技を実践するのみ。


 「今、敵が怯んでいるうちに叩くぞ!!」


「お、おぉ!?」


皆、気後れしながらも少しずつ敵を切り倒し進んでいく。だがまだ前哨戦に過ぎない。


 「殿、このあとは手筈通りにやるとしましょう久しぶりに私の異名が使える日が来るとは」


刀を紫色に染めながら昌信に対し俺は無言でうなづき撤退の合図を指示する。さっきまで優勢だった俺たちの撤退に相手側は追い討ちをかけてくる。


 俺達は、最初に潜んでいた場所まで撤退する、その間昌信の逃げ弾正が発動する。


 逃げ弾正は、撤退戦に発動し、敏捷性と防具に大幅に補正が入る。例えばDランクの装備でもBぐらいの事はできるほどのかなりの性能をしている。敏捷性も同じぐらい上がる為にほぼ犠牲が出ない可能性が高い。デメリットは撤退時にしか発動しない特に攻勢や追い討ちに行くと消えてしまう為注意が必要。


 つまり、カウンターぐらいしかこちらができる事は無く、ヒットアンドアウェイの戦法をとるぐらいしかないスキルなのだ。


 (「だが、それが一番俺達にとっては噛み合っているスキルだ」)



ようやく、元来た場所に戻れた瞬間俺は色の変わった刀を上にあげ味方に合図をおくる。


 「魔法隊!今だ!!」


ようやく、気づいたゴブリン達が足を止めた瞬間大量の炎を氷の槍などの殺意がある、弾幕に晒されてしまう。


 「ぐぎゃ!?」


「ギァァ!?いたい!?あつい!?」



一部のゴブリンはしゃべれるらしく、断末魔を上げながら焼き殺されていく。約十名ほどの断続的な魔法こうげきにより彼等は蹂躙されてしまう。


 「なんだ、これは…」


冒険者達は、軽い悲鳴を上げそうになるのを必死に堪えながら惨劇が起きた場所を目に焼き付ける。


 既に周りはクレーターで敵の遺体はほとんど残っていない全て無に返っているという非情が彼等の中に響くであろう。


 おそらく討ち取った数は五百近いかもしれないこの数での戦果としては充分すぎる大勝なのだがまだ終わっていない。


 「あと、残りの者は回復に当たってくれ!次に第二波が俺達に襲い掛かってくるであろう!」


タイミング悪く、向こうから土煙が来るのが見える。どうやら騎馬隊らしいそして……。


 「遂にきましたな……」


「あぁ、どうやらそう見たいだな」


敵の軍旗見間違うあるわけがない。どうやらほんとらしい、しっかりと風林火山と書いてあった。


 「すまない、数は?」


ちょうど近くにいた偵察の者に聞く、偵察の者はしばらくして戻ってきて少し浮かない顔で報告するどうやら悪い知らせなのだろう。


 「おそらく五千程、そのうち二千程赤備えであります」


後ろにいる仲間達に動揺の波はこなかった。この程度で動揺されては困ってしまうからな。


 「さて、迎えうつか!」


敵の騎馬隊が射程範囲に入った瞬間回復した者達による、魔法攻撃が炸裂する。


 さっきのゴブリンのようにはならず、敵は無傷であった。


俺は、すぐに馬に乗っている指揮官にゆらりと現れ一気に斬りつけてみる。

 

 ギィン!っと嫌な金属同士が触れ合う嫌な音がするのお構いなしに。


 「はじめましてかな、貴様のことを知りたい。お前の本当の名は?一体なんなんだ?」


鍔迫り合いをしながら、俺は彼に質問をする。


 一瞬相手の動きが止まるがすぐに相手は槍さばきにより、一旦下がる。


 「さて、どうするか?」


騎士団の様子が気になるが俺は町を守る為に全力を尽くすのみ。

  ここで負けるわけにはいかない。


 一気に間合いを詰め斬りかかるが何食わぬ顔で避けていく。そしてそのまま腹に鋭い蹴りを入れられてしまう。


  「ぐっ!?初めて受けるダメージには流石に厳しいしな」


鎧のお陰で最小限にダメージを抑えつつ刀を構える。


 まだ闘いは始まったばなのだがさっきの鍔迫り合いで俺が少し不利なのがわかってしまった。少し余裕を持ちたかったが勝算が低い状況は変わらないがやるしかないだろう。


 何故、勝手に風林火山の軍旗を使っているのか問いただす為に俺はこいつとやり合う。例えそこに懐かしい顔があっても、俺はこの街を守る為に鬼になるであろう。


 のちに数秒後、甲高い金属音が響きわたる。勝頼とって初の一騎打ちが始まる。


 



 


 




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