第14話異世界での戦争


 俺達は、夜遅く出陣してからしばらくたっていた。


 まだ奴らを奇襲する場所からは距離はあるらしく早く行軍しなければ、前線で時間稼ぎする部隊が段々不利になっていくだろう。


 「急がなくてはダメですね」


「そうだな……」


不安そうに信春はこちらを見つめてくる。君らより戦経験はあるがここは異世界なのだからあまりそんな顔は見せないでほしい。


 結局の所、この奇襲戦の指揮官は名目上昌景がやる事になった。レベル的に彼女ほど最適な人物はいないのとパーティーとしての知名度補正を加わっている。

 

俺はそれを利用して彼女の副官としての立ち位置を確立する事に成功している。


 もちろん、それは昌豊達含めてであり、この奇襲部隊の指揮権は俺達が握っているのだが早速問題が発生してしまっている。


 どうやら殆どの冒険者が戦争未経験者だと言うことに対してである。実践経験は豊富なのだが肝心の組織だっての行動はあまり得意ではないらしい。


 加えて平均レベルも三十そこそこらしく頼りの武力に関しては昌景や俺達で補うしかないようだ。


 今俺達が向かう、おそらく相手が陣を取る場所はジオストロ山地という、険しい山々が連なっている帝国きっての整備が整っていないところで、あまりこの道を通りたがらないという。


 一応、大規模な道づくりでできたのが山々の間にできた。太い道なのだが、軍が通るにも陣を張るにしても狭すぎる場所なのだ。


 それでも相手側は知っているのに通らなければならない。理由は最短で俺達の街を制圧するにはここしか無いのと、迂回すると倍以上の日数がかかる。


大軍の為に兵糧の消費が激しい為に短期決戦を仕掛けるくらいしか勝機はなかったのだろうだからこんな無茶な事をするしか方法がなかったのだろう。



 「まぁ、肝心は相手が奇襲されてどのくらいの対応をしてくれのかだがな」


「そうですな、場合によってはこちらが試されている様で主力を本陣に隠してある可能性を隠している様だな」


「まぁ、今の状況では何も分からんとりあえず偵察部隊には逐一報告は欠かせずに厳命していてくれ」


「また難しいことをおっしゃいますなわかりました検討してみせまする」


体力、 偵察、索敵、隠密系のスキルを持っている冒険者を何人か選んで敵の動きを探ってもらっている。


 に、三人程適したものがいた為に、彼らに任す事にしたのだが、思った以上に情報がわかってしまうのに俺は冷や汗をかいてしまう。


 (「馬より、早いとはな彼等と一緒に戻って長篠からやり直したいものだよ、いやほんとに」)


 「どうした?カッツンなんかあったの?」


「いや、この世界の便利さにちょっとな…あとその名前どうにかならないか?」


「え〜、だって短時間の間にこの奇襲部隊をまとめてしまうんだものそりゃ尊敬してしまいますよ〜」


 昌景は笑顔で返してくるが、若干遊ばれている感じがするのだけど、いつもの昌景に戻ったからいいとするか。


 この後も偵察の報告を聞きながら、俺達は予定の場所に来る事ができた。


 大量の木々に囲まれた場所のを突っ切ると人一人が入れそうな洞窟があった。


 「ここか、昌信」


「はい、ここですね」


地図を確認しながら昌信は答える。この山地の中で地元の人しか知らない抜け穴の洞窟があり、俺達はそこから最短で敵陣近くに隠れて潜むことを考えていたのだ。


 もう日が出始めていてる。偵察の話ではもう少しで敵は目的の場所にくるらしい。


 俺達はすぐに洞窟にはいる。だいぶひんやりしていて寒気がするのだが、あまり問題は無いのだが昌景だけは震えている様だったが深く考えない様にしようと思う。


 どうやら、新しい鎧には耐寒耐性をつけてもらわなかったらしい、自業自得なのだがそんな機能まであるのかと、本当に異世界に住みたいと思ってしまう。


  俺達は、何も言わずに洞窟を抜け近くの草むらに隠れる事にする。


 身を潜め暫くしていると、地鳴りの様な音が身体中につたわる。


 「どうやら、きたようだな」


「そのようですな」


最初に俺達は、奇襲を始める合図を決めている。誰もその指示に従うと思っていた、一人を除いてだが一応対策はしている。


 「昌景、動くなよ」


俺は、拘束魔法で動けなくなっている昌景に対して念をおしていう。色々と食込みが危ないのだが仕方ないのだ。


 「わかっているけど……あとで…覚えていろよ」


顔を赤らめながら、こちらに殺意を込めて言い放ってくる、拘束魔法がギチギチと悲鳴をあげているのを見てしまうのとこのあと起こる自由を得た化け物からの仕返しを想像して少し冷や汗をかいてしまう。


 「さて、そろそろかな?」


既に敵軍は油断しきっている、昌信からの報告にあった。風林火山がないのは気になるが、前線の足止め隊がどうなっているか気になる。


 「勝頼さん、報告が…」


「どうした?」


タイミングよく、足止め隊の状況を知る為に一人だけ置いていた冒険者が報告しにくる。その顔には、少し滝のように汗が出ているところから急いでここまできたのだろう。


 「現在、我が軍と魔王軍がぶつかりましたが、当方、圧倒的に不利です。持って半日程だと思われます」


「どうやら、迷っている場合はなさそうだな」


俺はすぐに軍配を掲げ勢いよく降る


 「狙いは、本陣の食い破る事のみとする!多くの敵を討ち取るぞ!!」


一斉に鬨の声をあげ一斉に森から出て敵の懐に飛び込む勢いで突き進む。


 ここに異世界での戦争史に残る激戦が始まろうとしていた。


 

 



 



 

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