第13話似ているが少し違う

 しばらくしてから、俺は最後の確認のために刀などの点検をしていた。あまり、戦場に出る事は無かった為なのか、刀には一切の刃こぼれは無く綺麗な刀身が輝きを放っていた。


 「まぁ、こんなところだろうな」


これからやる奇襲作戦についてあらかたもう決まっていて今日の夜中にでも動かなくてはならない。ここからは時間との勝負になる、あとは指揮官のところに向かい出発することを伝えるだけだ。


 「そんなところにいないで何か俺に言いたいことがあるのではないか?」


人の部屋のドア近くでこちらの様子を伺っている何者かに俺は声をかける。もう既に正体は知っているのだが、彼女にとっては気恥ずかしいのだろう。


 「バレてしまいましたか?」


そこにいたのは、少し部屋に入るのを躊躇っている、昌景の姿があった。まだ準備はしていないらしく鎧ではなく、いかにも異国風の服装をしているので俺も少し戸惑いそうになる。


 「バレるのも何もあの時一人だけ暗い顔をしていたのは覚えているからな。それはだれだってわかるけどな」


「あはは、まぁそんなにわかりやすい顔していたのかな私」


俯きながら彼女らしくない頼りない声だ、それだけこの娘にとって重要な事だろう。


 「二人には聞けない悩みではないだろう?それにお前と同じようにあの二人も悩んでいたと思うぞこんな会って数日の男に相談するのはどうかと思ってしまうがな」


実際は信春だけなのだが、昌豊だって同じ事を思っているハズだろうと思う。だが二人ともそれが言えずにいたのだろう。まぁ、俺に何を期待したのかわからないが相談する奴は考えた方がいいと思う。


 「それは、そうなんだけどね。なんか勝頼さんはどこか頼れる様なきがするんだよ、なんか長い事苦労してきたんだなーってわかる感じするだよ」


「それは……」


確かに見た目は少年だが内面はいろんな経験をといっても戦しかしてないが、そんな雰囲気がでているとは知らなかった。


 「だから…ね。聞くけど、私ってそんなにダメなのかな?いっつも先走ってはじめてしまうからそれで他の二人に迷惑かけていないか心配で」


 どうやら俺達が話しているところを見ていたのだろう。流石に会話まではきいていなかったのだろうと思うがこの娘が悩んでいるのは自分の所に誰も相談しなかった事による不安を感じているのだろう。


「それなら、大丈夫だと思うけどな。むしろ迷惑とは思っていない、心配されているけど二人とも頼りにはしている」


 努めて彼女の不安を除く為に笑顔で本当のことを伝える。ここでありきたりな事や嘘を言うのはあまり賢いとは言えない。


 「それは、嬉しいけど、でもたまにはわたしにも相談してほしいかなー、仲間だしね」


「わかった。あの二人には伝えておくよ。あとあまり突っ走って動くのはやめとけよ。心配させるだけだからな」


「わかった、ありがとう。それじゃ」


少し単純すぎると思うが、彼女なりに納得したのだろう。最後はいつもの彼女らしくなっていたのでよかったところだ。


 「まさかな、俺がこんな役回りをやらされるとは思ってもいなかった」


かつての自分は、相談される事は無かった為に新鮮であり、貴重な体験ができた。もしかしたら人を近づけがたい雰囲気を出していたのかもしれない。それに自分から相手に相談することもあまりなかった気がする。やっぱり自分の立場を考えるあまり殻に閉じこもっていたのだろう。

  その為、さっきの話も解決できたことさえ怪しいと我ながら思ってしまうが。


 「それでも、俺にもそんな時期があったから案外似たもの同士かもしれないな」


当時の自分を思い出し苦笑いする。かつての自分が出来なかったことができる彼女を羨ましいがりながら。





 

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