第5話またこのメンツが揃うのか!?

 「ただいま!二人共元気にしていた!」


冒険者ギルドとか言うのだろうか?そこの扉を蹴破る勢いでこの女は笑顔のまま入る。俺と昌信はあまりの入りづらさに腰を低くしながら体を縮ませてはいる。


 「このクソガキあとでとっちめて武田の恐ろしさを見せてやりましょう!!」


「バカ!これ以上ややこしい事を考えるな!お前そんなに短気だったか!?俺はお前がわからなくなってきたぞ!」


逃げ弾正が攻め弾正になりそうな勢いに頭を抱えながらなだめに入る。

 「(このジジイ、見た目だけじゃなく心も若返っているし、何よりこっちにきてからやたらテンションが高くなってやがる!!)」


バカをなだめながらあたりを見渡してみるとどうやらこの場所は宿屋と酒屋が一つになっている場所らしい朝から酒を飲んでいる荒くれ者共が沢山いるようだ。皆、イスや机について談笑をしているのを見てると冒険者は相当羽振りが良いように見えてくる。


 そんな中、荒くれ集団の中に二人の女性が座っているのがわかる。一人は少し長めの茶色の髪で落ち着いた雰囲気をしている女性だ。

 多分歳は二十代ぐらいだろうか、もう一人はさっきの女性よりも長めの髪で少し小難しい顔をしているのと見た目な感じからまだ十代後半だと思うが雰囲気はさっきの女性と同じぐらいにみえてくる。そんな二人の女性がこちらを警戒しているのか睨んでみてくる。


 「(おい、最初から敵対心ありで俺達を見ているのかよ?それに……」)


よくみると、彼女達だけこの酒場で浮いているような気がする。それもそのはず彼女等が身につけている鎧をみるとわかってしまうからだ。


 「勝頼様、あのお二人が身につけているのはもしや……」


少し、うわずった声で尋ねる昌信に対して俺も無言でうなづく忘れる筈がないであろうに…。


 「あぁ、どう見てもあの鎧少し色合いが変わってしまっているがどうやらあの二人の鎧で間違えないであろう」


だが確証が得られないし、この警戒のされ方では聞くこともできない。ここは昌景に全てを任すしか俺達にできる事は無い。


 俺達の思惑など知らずに昌景はズィッと出てきて少し咳払いをしてから少女達の方をみる。


 「ノブちゃん!、トヨちゃん!、私達のリーダーになってくれそうな、ニート捕まえたぜ!」


大きく手を振って満面の笑顔でこの悪魔はつげやがった。


 「「待て待て待て!?」」


俺達と少女達は同時に昌景の決定に異をとなえる。


 「かげちゃん、あなたは…そう言う所なのよ勝手に決めないでよ。そのおかげで私達は……」


マサちゃんと呼ばれた少女は頭を抱えながら昌景に涙目で詰める。


 「無理よ、トヨちゃん、あのかげちゃんが決めてしまったことに逆らう事はできない。潔く諦める方が楽になるわよ」


「でも〜」


「大丈夫!、この人達強そうだしきっと力になってくれると思うし!!男だけど……」


チラッとこちらを見てくる昌景含めた三人組に少しイラっと来てしまう。しかも余計な一言までくわえやがって。


 「ハァー、とりあえずあの二人の名前はわかっているの?かげちゃん?」


のぶちゃんと呼ばれた女性は暴君のような振る舞いを受け入れることにしたようだ。なんか呆れと諦めが混ざって悟りを開いた瞳でこちらを見ている。


 「名前はー、知らない。けど大丈夫だよ!」


「うん、わかった。少し静かにしてね、でそこの二人共名前はなんていうの?」


昌景を軽くいなしてから彼女はこちらに話を振ってきた。俺と昌信は顔を合わせてから、まず先に昌信が答えることに決めた。


 「わ、僕は高坂昌信。魔物?とかに襲われてる所を助けてもらった。ただそれだけの関係のハズ」


少し考えてから昌信は少し自信なさげに答えてしまう。そりゃ、案内するだけの話が一緒に冒険者をやってくれってなるとは思わないよな。


 「なるほど、ではもう一人の方は?」


サラッと昌信の話は流して俺に話を振る。


 「あぁ、俺は勝頼と言ってな。こいつとおんなじで魔物に襲われた所を助けてもらったんだ」


話をまとめながら話てもやっぱりおかしい事に気づいてしまう。どうなったらこんな事になるのか俺達が知りたいぐらいだ。


 「よく、わかった。だが見るからに強そうないでたちをしておる。それに私達と同じような名をしているようだ歓迎する!」


スゥーっと彼女は薄く笑いながら手を差し伸べてきたのだ。


まさかの歓迎に俺は固まってしまう。


 「(えぇ〜、なんでこうなってしまうの!?)」


昌信に助けを求めるが、彼もお手上げ状態であるらしい。だがほかに頼る者がいないから仕方ない。


 「こちらこそ、歓迎してくれるならありがたい」


ひきつった顔で握手をしながら俺は最後の確認の為に彼女らの名前を教えてもらった。


 「あぁ、私の名は馬場信房と言う、あそこで昌景に飛びかかろうとしているのが内藤昌豊でな。二人共女の子らしい名前ではないからあだ名で呼んでいるんだ。呼びにくいなら苗字で呼んでくれても構わないぞ」


「おい、昌信一体これはどう言う事だ?」


「さぁ、僕にもわからないですけど……ひとつ言えることは」


「「武田四天王揃っちゃったよ!!」」


俺達はそう叫ぶとその場に崩れておちてしまう。


 かつて信玄公を支えた、武田四天王。今は形も性別を変えてこの異世界で復活を果たしてしまうのであり、ここから俺の物語が始まる。


 







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