ボイジャーと一日

伊東黒雲

ボイジャーと一日

しないだろう、出発を、どこへも、きみは。左手の中で、そう打っている。


どこにいるのかよくわからなくなるのに、どこにでもついてくるわたしが、


バスの乗り降りは幽霊のようだが、やっぱり運賃を払っている。


給水と剪定。仕事は木のように立ち続け、枯れてからも、それは。


「ニホンゴが読めれば分かるでしょ」と言われ、引き攣った笑みは生き霊。(その後、


昼食を昼休憩に食べている。いつも昼休憩に食べている。


昼休みのサッカー、受けそこなったパス。その軌道が不意に見える空がある。


誤差が二十億光年先では大差となり、だれかが星座にするのだろう。


何らかのニュースを見逃した気がする。内容よりそのことが気になる。


休憩の終わりにふと思ったのだが、「殺処分」は冗長な言葉だ。


道端で泣いている人を見ているわたしが、(pause)、動かないでいる。


「分からないことが分からなかったとき、他人ひとがいて良かった」というそうだ。


いつでもいない人に向けたい感情がある。新鮮な0の味がする。


仕事から帰っている時、今は何にも関係がない気がしてくる。


雨が降りだしたので、感傷を作ろうかと思ったところで、やんだ。


仮構からはじまる恋があるとして、どこまでが通し練習だろう。


しかし、「恋」と打つにはあまりにもやさしく、見たことはないが、明晰夢に似ていると思った。


宇宙には、一日のある場所があり、(音楽が鳴る)、ない場所もある。


今日も遠ざかるボイジャーのゴールデン・レコードに、詩は一編もない。


光るのをやめた画面にきみはうつらない。だが夜ではない。ここは、

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ボイジャーと一日 伊東黒雲 @Itou_Cocoon

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