奇跡の娘。
おやぁ!
こいつはすごい奇跡のようだ。
まるで生きているみたいだ。
これほどの出来ならば、あの偏屈な陛下も大変喜ばれることだろう。
あぁ、流石は稀代の天才技師、といったところかな?
この域に達する人形を作った者は、我らを作り賜うた神を除けば、君しかいないだろう。
まさに神業。と言う外無いよ。
僕も君の無二の親友として鼻が高い。
だというのに。
だというのに相変わらず君はなにやら随分と不満そうな顔をしているね?
これ程の腕を持ちながら、
これ程の芸術を作っておきながら、
これ程の命を弄んでおきながら、
何がそんなに気に食わないと言うんだい?
よもや君は、まことの神にでもなろうというのかい?
はぁ。
僕が君と同じ技師だったなら、嫉妬で君を殺したあと、残された美しき「彼女」を娶って幸せな家庭を築くだろうよ。
そして終わらぬ狂乱の宴を世間様に見せつけてやるだろうさ。
どうだい?
そしたら君はあの世で嫉妬してくれるかい?
この僕に。
あぁ、そうだろうそうだろう。
君はそういう男だよ。
君はあの世でもただ作り続けるだろうさ。
それこそまさに狂気の為せる業だ。
しかしそれ故にこの奇跡の娘もまた、
数ある君の試作品に過ぎぬのだろう。
君は相変わらず不幸な男だ。
どれだけ美しいものを生み出しても、
愛情を注ぐことが出来ないのだから。
おっと。
それじゃあ、この子はいただいていくよ。
僕は同業じゃないから娶ったりはしないけれど、
陛下にはよろしく言っておくよ。
君の無二の娘と同じように、ね。
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