孤独な王さま。
これは今よりずっと昔のこと。
氷に閉ざされた北の大地に、それはそれは大きな国がありました。
その国の人たちは、寒さに負けないようお互いに助け合って暮らしていました。
けれどその国には一人のわがままな王さまがいました。
王さまはとてもえらいから、みんなが助けてくれるのは当たり前だと思っていました。
みんなはそんな王さまのことをえらいから仕方がないなと納得していました。
王様はみんなに愛されていたのです。
ある時、北の国よりもっと北にある山に、おそろしいドラゴンが住み着くようになりました。
ドラゴンは実ったばかりの畑を荒らしたり、丸々と大きくなった家畜を盗んだり、建てたばかりの家を壊したりしてみんなを困らせていました。
国のみんなは自分たちだけではドラゴンを止めることができないので、えらい王さまに手伝ってくれるようにおねがいにいきました。
王さまは国の人たちの話をきいて「そんなに悪いことをするドラゴンならわしがきびしくしかってやろう」と言いました。
みんなは王さまが助けてくれると大よろこびしました。
王さまはさっそくドラゴンにめいれいするためにみんなに言いました。
「ドラゴンをここにつれてこい」
みんなはそれを聞いて困ってしまいました。
国の人たちはおそろしいドラゴンをつれてくる方法など思いつきませんでしたし、なによりとってもこわかったからです。
こわがるばかりでドラゴンをつれてこないみんなを見て、王さまは怒りました。
「わしのめいれいが聞けないようなやくたたずはこの国から出ていけ!」
王さまの怒鳴り声は国中にひびきわたりました。
みんなはびっくりして王さまに言いました。
「それはあんまりにひどいです王さま。私たちは王さまのことをこんなにたいせつにしているのに王さまはたいせつにしてくれないのですか?」
それを聞いて王さまは言いました。
「わしはえらいからたいせつにされてあたりまえだ。おまえたちこそ、わしの言ったことをたいせつにしろ」
国の人たちはとても傷つきました。
そして王さまがあまりにいばりんぼうなので、みんなは王さまのもとを去っていきました。
とうとうあいそを尽かしてしまったのです。
いつしか王さまは大きな大きなその国でたった一人になってしまいました。
今でも、その国には王さまが一人で寂しく暮らしているそうです。
おしまい。
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