第13話 ぎゅっとされたい気分

深夜1時私はベッドの中で寝れずにいた。

外は12月だというのに雪ではなく雨が降っていて屋根に当たる雨音が聞こえてくる。


私はベッドから起き上がってある所に向かった。


「お母さん、入ってもいい?」


「いいわよ」


私はお母さんの部屋に来ていた。お母さんはいつもは七海さんと一緒に寝てるんだけど、仕事がある日は別々に寝てるのは知ってたから。


「珍しいわね、優奈が来るなんて。どうしたの」


「えっとね、眠れなくて」


お母さんは部屋の中で何か分厚い本を開いていた。


「お母さん、何読んでるの?」


「これ? アルバムよ、優奈の小さい頃の」


お母さんはそう言いながらアルバムをこっちに見せてくれた。


「見て、優奈が3歳の頃の写真よ。優奈ったらあの頃はすっごく甘えん坊さんで、ちょっとでもお母さんが離れたらすぐに泣き出しちゃうんだから大変だったわぁ〜」


「え〜そうだったっけ〜。全然覚えてないや」


「そうよ、そんな甘えっ子ちゃんがこんなにも大きくなっちゃって」


お母さんが私の頭を撫でてきた。

お母さんの隣にいるからか少し眠くなってた私はぼんやりしてて特に手を払うことはなかった。


「こっちはお花見ね。お父さんのこと覚えてる? 優奈、お父さんの膝の上に座るの好きだったわよね」


「それは覚えてる。ずっと座ってた」


アルバムには覚えているもの、覚えていないもの、沢山の家族の思い出が収められていた。どの写真も笑顔で写っていて誰が見ても幸せな家族であることがわかる。


「こっちは…………」


お母さんが次のページを開こうとしたところで手が止まった。次のページには写真が1枚も貼られていなかった。


「ごめんね、ここから先は現象してないの……………それどころじゃなかったから」


家族の記録は私が5歳になって少し経った頃からキッパリと無くなっていた。いや、無くなったんじゃなくて出来なかった。


「お父さんが死んじゃって、お母さん一人で優奈を育てなくちゃいけなくて、優奈にかまってあげられる状態じゃなくなちゃったの」


「ううん、大丈夫」


お母さんの手が優しく、そっと私の手の上に重ねられる


「………ねぇ優奈、今日は一緒に寝ない? お母さんと一緒のベッドで」


「ん〜…………いいよぉ」


お母さんの声、体は不思議。自分の部屋にいたときは全然眠くなかったのに、お母さんの部屋に来てからはすぐに眠くなって、ベッドに寝転がればすぐに寝ちゃいそう。


「ふふっ眠そうね。けど、もう少しだけ、お母さんに付き合ってちょうだい」


お母さんはそう言うとベッドから1枚のタオルケットを持ってきて私を包むように肩にかけてくれた。


◇ ◇ ◇


「優奈、もう寝よっか」


「んぅ〜………ママぁ」


「…………ママのところにおいでゆうちゃん。………しょっと、じゃあベッドに行こっか」





「おやすみ、ゆうちゃん」

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