第12話 縄跳び

「ゆうお姉ちゃん、今日の午後時間ある?」


11月になってすっかり寒くなったある日、いつも通り部屋でゴロゴロしてるとなつちゃんがそんな事を聞いてきた。もちろん暇な私は時間があると言ったら……


「なつちゃん、その大量の縄などこから入手したの?」


私は庭で色々な種類の縄跳びをもつなつちゃんの前でジャージ姿で立っていた。


「来週ね、縄跳び記録会があってその練習をしたいの。ゆうお姉ちゃん、手伝ってくれる?」


縄跳びかぁ……………ふっふっふ、これはカッコつけるいい機会。この私、優奈は縄跳びだけは誰よりも上手に出来たのだ!


「なつちゃんはどういうの飛ばないといけないの?」


「えっと、まずは普通の前跳び(5分)でじょ、次の二重跳び、あとハヤブサだよ」


「ふふん、このお姉ちゃんに任せなさい! 絶対にマスターさせてあげるからね!」


「うん!」


そして、なつちゃんの縄跳び特訓が始まった。


「まずは、なつちゃんがどれくらい跳べるか見たいから跳んでみて」


「うん、わかった!」


なつちゃんが縄を持って縄を回すと同時にジャンプして………当たり前のように縄を踏んでしまった。


「…………」


「…………」


2人の間になんとも言えない空気が流れる


「あぁ! 泣かないで! 誰でも最初はそうだから!」


なつちゃんの目に涙が溜まってきたから急いで慰める。


「えっと……まずお姉ちゃんがお手本を見せるから、一回見ててね」


私は大量にある縄の中から一番大きい縄を持って軽く跳ぶ。


「ゆうお姉ちゃん凄い! どうやってるの?」


「あー………じゃあもう一回跳ぶ前の状態になってくれるかな?」


「? わかった」


なつちゃんは跳ぶ前、足の後ろに縄を持ってきた状態になった。


「なつちゃんはねぇ、縄を回すと同時にジャンプしちゃってるのよ。そうすると着地と同時に縄が足元に来ちゃうの。じゃあどうすればいいと思う?」


私がそう言うとなつちゃんは「う〜ん」と言いながら悩む素振りを見せて数秒が警戒した。


「あ! わかった!」


「お、なにかな」


「いっぱいジャンプする!」


「……………う〜ん、それ以外にはないかな?」


「それ以外? う〜ん………あ! 縄を早く回す!」


「(ん〜! 惜しい!)そ、それ以外には………あるかな?」


「え〜? それ以外〜? う〜ん……………あっ! 今度こそわかった!!」


「おっ! 言ってごらん」


「いっぱいジャンプしつつ、縄を早く回す!!」


「………………ソウダネ、ソレデトンデミヨッカ」


「うん!」


そう言いなつちゃんは縄を回して跳んだ。なつちゃんが全力でジャンプをした事でスカートが捲れ上がり真っ白のパンツが…………


「ゆうお姉ちゃん跳べた!」


「…………」


「ゆうお姉ちゃん?」


「………! そ、そうだね。あ、あと縄が足元に来る直前にジャンプしたらもっと楽に跳べるんじゃないかな?」


「たしかに!」


その手があったか! っていう顔を浮かべるなつちゃんをボーッと眺めながらさっきの光景を脳裏に浮かべる。


「ふへっ」


「ゆうお姉ちゃん?」


「んにゃ、なんでもないよ。他の跳び方も練習しよっか」


「うん!」


◇ ◇ ◇



1週間後の縄跳び記録会でなつちゃんは特訓の甲斐あって素晴らしい結果を残したらしく、賞状を持って帰ってきた。

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