第16話 レクリエーション(導入編)

5月に入って新しいクラスにも馴染んだ頃、私、炫優奈にピンチが迫っていた。それは…………………


「学年別レクリエーション!!!! 高校生は毎回小学生とレクをする事になってる、という事はなつちゃんと当たる可能性もあるという事!! だよね明里」


「はぁ…………ゆうなっち、ずっと妹さんの話ばっかりだね」


私の妹LOVEな勢いにため息を吐くマイフレンド。その反応は少し寂しいよ。


「だってだって可愛いんだもん! あのちっちゃい顔、ちっちゃい手、ちっちゃい体!!! あれだけでご飯何杯でもいけるよ!」


「…………私はゆうなっちが将来捕まらないか、心配だよ」


「んな! 失敬な、私はちっちゃい子が良いんじゃなくてなつちゃんが良いの!! そこらへんロリコンと一緒にしないで」


まったく、ロリコンは小さい子供が好きだけど、私はなつちゃんが! 好きなの。いや子供を見てなんとも思わないとは言わないけどさ、別に恋愛感情は抱かないし、抱こうとも思わないわけなのよ。


「いや、一緒でしょ」


「はぁ〜わかってない、明里は何もわかってないよ」


兄妹のいない一人っ子だからそんな事言えるんだよ。一回でも妹ができたらもう妹のいない生活なんて絶対に出来ないんだから。


「なんか、ムカつくわね」


「カルシウム足りてないよ!」


「うっさいわ!」



◇ ◇ ◇



「じゃあ、今週末のレクリエーションの話するぞ〜ちゃんと聞けよ〜。特に…………炫! お前どうした? 前までもかなり酷かったが、今年に入ってからもっとやばいぞ?」


先生の話を今朝の可愛らしいなつちゃんの寝癖を思い出しながらニヤニヤしていると先生からお叱りが飛んできた。


「はぁ〜可愛かったなぁ〜♡」


「おい、聞いてるのか?」


「あの両脇に跳ねた毛先!!! 食べちゃいたいくらいだよ〜!」


「おい、炫!」


「あ〜もう可愛すぎっ! いっぱいぎゅーして、いっぱいちゅーして、べちゃべちゃになるまで体を隅々まで舐めt…………ったぁああ!?」


なつちゃんとのあんな事やこんな事を口に出さないように妄想していると何故か先生に物差しで頭を叩かれたんだけど!? 私静かに大人しく先生に話聞いてたじゃん! 意味わかんないんだけど!?


「炫、お前に二つの選択肢をやろう。反省文を5枚出すか、それとも説教を1時間受けるか、さぁ選べ。お前が望めば両方選んでも良いんだぞ?」


「………………お説教で、お願いします」


「よろしい、では放課後残ってもらおうか。じゃ、さっきの続き話すぞ〜」


ふっ誰があんなみたいなクソ教師の話なんか聞くか、帰りはなつちゃんのお迎えをしないといけないからお前に構ってる暇なんてないのだよ!


「………て事で、今回は4年生とレクリエーションをしてもらうからな。やりたい事を考えておいて2つにまとめておいてくれな」


先生はそう言うと教室を出て行った。

ふぅ、これでなんの気兼ねもなく妄想できる。


〜〜〜30分後〜〜〜


「あ〜かり〜、話し合い終わった〜?」


気がついたらみんな授業が終わるタイミングを見計らって起きるとちょうど話し合いが終わったタイミングだった。


「まったくあんたは……………終わったわよ」


「そっかぁ〜じゃあ帰るね〜!」


先生が戻ってくる前にさっさとなつちゃんのとこ行って帰らないとね。あ〜今日も疲れたなぁ〜(寝てただけだけどね)



◇ ◇ ◇



なつちゃんとバスに乗って家に帰って私の部屋でいつも通りなつちゃんと本を読んでる時になつちゃんに聞いてみた。


「ゆうお姉ちゃん、レクリエーションって何やるの?」


「ん〜…………クラスによって違うけど、大体は鬼ごっことかかなぁ」


私がそう言うとなつちゃんがあからさまに嫌な顔をした。

そういえば、なつちゃんはあんまり運動が好きじゃないんだっけ? そうなると今回のレクリエーションは少し辛いかもなぁ。


「ゆうお姉ちゃん、レクリエーションって絶対出なきゃダメなの?」


「なつちゃんは運動苦手なんだっけ?」


「…………うん」


「そっかぁ、けど大丈夫だよ。運動が苦手な子でも楽しめるようにちゃ〜んと考えられてるから。それにクラスの子と仲良くなる絶好のチャンスなんだから、休んじゃダメだよ」


クラスの子と仲良くするとメリットしかないからね。宿題だって写させてもらえるし、体育とかで2人組になれ〜って言われた時も友達がいっぱいいたら1人になることもないからね!


「……………やだ、やりたくない」


「どうして?」


「………言ったらゆうお姉ちゃん怒りそうだから言いたくない」


「だいじょ〜ぶ、怒んないから言ってみな?」


なつちゃんの頭を優しく撫でる。

すると………


「運動ニガテ………あと、人と話すのも………ニガテ」


「? お姉ちゃんとかお姉ちゃんのお母さんとかとは普通に話せてるじゃん」


なつちゃんは私とは当然だし、私のお母さんとも昨日とか普通に話してたし、苦手って感じじゃないと思うんだけどなぁ。


「ううん、家族とか仲のいい人は大丈夫なんだけど……………クラスの人とか関わりの少ない人とか、人前に立っちゃうと………喋れなくなっちゃったり、思ってないことも言っちゃうの」


あぁ〜……………確かに七海さんもそんなこと言ってたような気もするなぁ。


「そっかぁ…………なんかごめん」


めっちゃ気まずい。


「ううん、大丈夫」


どうやったらなつちゃん来てくれるかなぁ…………


「そうだ、お姉ちゃんね、なつちゃんの学年の子達とレクするんだけど、それだったらきてくれる?」


「…………ほんと?」


「うん! なつちゃんのクラスかはわかんないんだけどね………」


「じゃあ行く!」


「ちょ、なつちゃん?」


私と一緒にできると言った瞬間、曇っていたなつちゃんの表情が一転して太陽みたいな明るい笑顔になったかと思ったらスキップするような軽い足取りで私の部屋を出ていってしまった。


「……………まぁ、結果オーライという事で」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る