第14話 ある日の朝・優奈編

チュンチュンチュン……………


「(小鳥の鳴き声……………聞こえる…………)」


ふかふかなベッドの上でだらしない顔をしながらぼ〜っと外を眺める。朝5時からずっとうたた寝の状態で寝転がってるけど、一向に動こうとは思えない。やっぱりお布団には特別な引力があると思うんだ。


「今は………………7時前かぁ、まだ起きるには早いよねぇ」


目覚まし時計には06:30と表示されている。

ヘッドボードに置いてあるスマホを手に取って電源をつけるとちょうど誰かからLIN◯が来た。


『今日もデカいの出たw』


『そっか』


…………女の子としては終わってるなぁ、相変わらず。けどこんなアホそうなのにメッチャ頭いいんだよなぁ、ムカつくことに。


「はぁ………………勉強しよ」


なつちゃんもいることだし、頭の悪いままいたら私のせいでなつちゃんがいじめられちゃうかもしれないし、お姉ちゃんとしてのメンツも立たないからね。


重い体にムチを打って勉強机に体を持っていく。そしてバッグの中から教科書を取り出して机の上に並べる。


「今週は課題出されちゃったからなぁ〜」


バッグの中から数学のプリントを取り出してプリントと睨めっこをする。くそ、あの鬼教師め、私にだけ多くプリントの宿題を出しやがって…………燃やしてやろうか!?


「…………なんか悲しくなってきた。早くやろ」


気を取り直してプリントと睨めっこをする………………前にスマホを手にとって友人に電話をかける。


『おっはー!!! 元気ー?』


「…………元気だよ。陽菜も朝から元気だね」


私の親友の1人である陽菜が朝っぱらバチくそ高いテンションで電話に出たせい(おかげ)ですっかり体の気怠さが無くなった。


『で、どこ教えて欲しいの?』


おお、さすが陽菜さま、私がなんで電話をしたのかを聞くまでもないというのか。いやはや、9年の絆は凄いなぁ。(私と陽菜ちゃんは小学校からずっと同じクラス)


「えっとね、数学の週末課題なんだけど………」


『いいよ、この陽菜さまにまかせんさい!』


「お願いします!!」



◇ ◇ ◇



「優奈〜起きなさ〜い」


勉強がひと段落ついたところでお母さんの声が聞こえてきた。


「…………っ! ごめん、朝ごはん食べにいかないと」


『おっけ〜。またね〜』


陽菜ちゃんとの電話を切ってリビングに向かうとスクランブルエッグとウィンナー、パン、サラダが用意されていた。


「おはよう、優奈ちゃん」


「おはようございます! 七海さん!」


今日も七海さんは大人の余裕を醸し出して綺麗だ。


「優奈ちゃん、悪いんだけど奈月のこと起こしてきてくれる? あの子ったらまだ寝てるのよ」


「あ〜この季節はまだ布団が手放せないですからねぇ、起きるの大変ですよね。じゃあ起こしてきますね!」


階段を全速力で駆け上がってなつちゃんの部屋の前に立つ。そしてドアを優しくノックする。


「なつちゃん起きてる〜? 朝だよ〜」


「…………」


「なつちゃ〜ん? 入るよ〜」


返事がない……………………これは、しょうがないよね。だって起こしてきてって言われたんだもん。部屋に入るのは合法だもん。自分の心の中で言い訳を作ってそっとドアを押して中に入る。


なつちゃんの部屋はカーテンで閉められていてまだ薄暗かった。気配を消してそっとベッドの側まで近づいて耳を澄ますと


「すぅ…………すぅ…………」


「(可愛すぎかっ!!!!!!!)」


天使のような寝顔で赤ちゃんみたく親指を少しだけ咥えてるなつちゃんがうつ伏せの状態で寝ていた。


「(が、我慢しなくちゃ……………まだ、手は出しちゃいけない………………けどぉ……………)」


「お姉ちゃ…………………好きぃ………………」


「(ゔあぁぁぁぁあああああ!!!!!!!! なつちゃん、もう一回言って♡)」


「好きぃ…………………好きだよぉ…………………」


「(ゔっ…………………)」←絶命


なつちゃんの呪詛ねごとによって私は意識を刈り取られた。

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