第12話 自己紹介

【奈月視点】


ゆうお姉ちゃんと別れて小学校に向かう。

ここには前に一回来た時あったけど、すごく広くて迷いそうになる。しばらく同じくらいの背丈の子達について行って目当ての校舎が目に入った。


昇降口の所に私の担任になる先生が立っているのが見えた。


「おはようございます、奈月さん」


「…………おはようございます」


「ふふっそんなに緊張しなくても大丈夫よ。さ、行きましょうか」


先生がそう言うとゆうお姉ちゃんとは違った大人の余裕がある優しい手で私の手が握られてきた。(ゆうお姉ちゃんは全部を包み込んでくれるようなあったかい手だった)


担任の先生(むつみ先生)に手を引かれて下駄箱に靴を入れて上履きに履き替えて職員室に入る。中には沢山の先生がいて中はコーヒーの苦い匂いで充満してて、苦い物が苦手な私は顔をしかめた。


「あらあら、ごめんなさいね。子供にはやっぱりキツいかしら」


私の顔を見たむつみ先生が苦笑を浮かべる。


「いつもこの時間に生徒が来ることはないからねぇ〜」


「だ、大丈夫………です」


「ふふっ無理しなくても大丈夫よ。違うお部屋にしましょうか」


そう言うとむつみ先生は職員室の隣にある小さい応接室?に連れてこられた。対面に置かれてる黒いソファーに座ると先生が段ボールを持ってきてその中には私が使う教科書が入っていた。


「これがこの学校で使う教科書ね。奈月ちゃんは優秀だから全額免除……タダで貰えるわ」


先生がそう言うと私に教科書を渡してきた。


私はこの学校に転入する時にテストを受けたんだけど(もちろん全部満点だった)その時に私を担当した先生が『全部満点だなんて! 入学の際はぜひ特待生に推薦しておきますね!』なんて言ってたような気がするけど、こういう事だったんだ。


「(タダで手に入るって…………良いよね)」


まぁ、タダほど怖いものはないけど学校とかなら大丈夫だよね。

なんて考えながら教科書をパラパラめくって中を見てると



キーンコーンカーンコーン



時間を知らせるチャイムが鳴った。


「あら、もうこんな時間。じゃあ教室いこっか」


先生にそう言われた私は重くなったランドセルを背負って先生の後ろを歩いてついて行く。



◇ ◇ ◇



「じゃあちょっとだけ待っててね」


先生はそう言うと教室の中に入って行った。

その後すぐに「入ってきてくださ〜い」と言われたからドアを開けて中に入った。


教室の中に入ると一斉に私の方に視線が集まるのを感じる。

人見知りの私からしてみれば大勢の人に見られるのは拷問に等しいけど、流石にここから逃げ出すわけにはいかないからなんとか我慢しながら先生の隣に立つ。


「じゃあ自己紹介してくれるかしら?」


「は、はい……………炫奈月かがやきなつきって言います……………よろしくお願いします」


簡単な挨拶をしてペコっとお辞儀をするとパチパチと拍手をする音が聞こえてくる。悪い印象は持たれてないみたい。


「奈月ちゃんの席は…………窓側の1番後ろ、陽菜ちゃんの隣ね」


「は、はい」


先生に指名された席に座ると隣のはるなちゃん?が話しかけてくれた。


「私は陽菜! よろしくね奈月ちゃん!」


「よ、よろしく」


陽菜ちゃんが私の手を握ってブンブンと振る


「えへへっもう友達だね!」


「う、うん……………」


この子………………すごい押しが強い。それに笑顔が可愛い(ゆうお姉ちゃん程じゃないけどね)私と違ってきっとクラスの中心にいる子なんだろうなぁ。


「じゃあ8時30分からの授業に遅れないようにしましょうね」


『はーい!』


先生がそう言って教室を出ると次の瞬間には瞬間移動したのか私の周りにはクラスメイトのほとんどが集まって私は動物園のパンダみたくなってしまった。


「友達になろ!」「ねぇねぇ、好きな食べ物は?」「どこに住んでるの?」「兄妹はいる?」「何するのが好きなの?」「どうしてこの学校に来たの?」「今日遊べる?」「奈月ちゃん可愛い!結婚しよ!」


「ふ、ふえ? はわぁあーー!!!!」


360度全方位から質問攻めにされる。

なんか一個変なのもあったような気もするけど何に応えればいいんだろう!?


どれに答えようか迷ってると


「もうっ! そんないっぺんに聞くから奈月ちゃん困ってるじゃん! みんな順番に!!」


隣に座ってた陽菜ちゃんが声を張り上げる。


「はるちゃんうるさい!」「女たらし!」「運動バカ!」「バカ!」「アホ!」「マヌケ!」「ロリコン!」「お金持ち!」「令嬢!」「授業中寝るな!」「ご飯均等によそえ!」「勉強しろ!」


う、うわぁ…………………女の子、怖ぁ。ていうか全体的に酷すぎる。


「おっ女たらしってなによ! 可愛いから声かけただけじゃん!」


「「「それをたらしって言うのよ!」」」


「ひぇえ〜、奈月ちゃ〜んクラスのみんながいじめてくる〜」


陽菜ちゃんが私に抱きついてくる。


「あ〜またそうやってくっつく〜!」「はるちゃん羨ましい………………私も抱きつきたい…………」「奈月ちゃん、はるちゃんうるさかったら呼んでね〜すぐにはるちゃんのことどかすから」「はるちゃんばっかり………………刻んでやる…………」「いっその事病院送りに……………」「親に身代金要求して………」


な、なんかこのクラス物騒じゃない? こう思うの私だけ?


「あっ奈月ちゃん笑った!」


少し笑ってしまった。それを陽菜ちゃんは見逃さなかった


「ふえっ?」


「ほんとだ〜! 笑ってる奈月ちゃんも可愛い〜♡」「小動物みたいだよね〜!」「私もぎゅ〜ってしたい〜」「ねぇねぇ、提案なんだけどさみんなで奈月ちゃんのこと飼わない?」「わぁ〜良い案だね! 賛成!」


か、飼う!? な、なんかこのクラスのみんな……………怖い。ていうかみんな私より大きいから抵抗が……………………












その頃の優奈(ゆうお姉ちゃん)は……………


「なんか…………なつちゃんに危機が迫ってるような気がする!!!」


「ゆうなっち!? ちょっ、どこ行くの!? すぐ授業始まるんだけどー!?」

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