第11話 一緒に登校

「優奈〜起きなさ〜い」


お母さんの声が聞こえて目を覚ます。

初めての場所で寝たからかあんまり眠れなかったせいか、頭がボーッとする。ボーッとする頭でなんとか体を動かしてカーテンを開ける。


カーテンを開けると差し込んできたのはポカポカな太陽の光……………………ではなくシトシトとした雨音と灰色の雨雲だった。


「………………はぁ〜」


雨の日ってなんか嫌だよねぇ〜。雨が降ってるだけでテンションが下がるっていうか、やる気が無くなるし。



トントントン



「どうぞ〜」


「ゆうお姉ちゃん、起きてる?」


部屋に入ってきたのはパジャマから洋服に着替えて髪をサイドに結んだなつちゃんだった。


「おはよ〜なつちゃん。良く眠れた?」


「ん〜あんまり眠れなかった」


「そっか、お姉ちゃんもあんまり眠れなかったんだ〜。同じだね」


「うん。そうだ、お母さんがご飯出来たから早く降りてきなさいって」


「りょ〜かい、すぐ行くね」


そう言うとなつちゃんは部屋を出ていった。


「………………なつちゃん、可愛かったなぁ♡」


さっきまでなつちゃんが立ってた場所を見る。そこには天使の様な可愛さと後光を放つなつちゃんが現れる(←幻覚) そしてなつちゃんがこっちを見てニコっと笑いかけてくる。


その微笑みを見た瞬間、私の視界には私の部屋にあるちっちゃめのちゃぶ台の角があった。



ゴンッ!!!!!!



「〜〜〜〜〜〜ったぁぁぁぁぁぁああああああああ!?!?!?」


「ゆうお姉ちゃん!?」


ゴン という鈍い音が響いた瞬間なつちゃんが部屋に戻ってきた。

そして部屋に入ってくるなり床でのたうち回っている私に駆けつけてくれた。


「お姉ちゃんどうしたの!?」


「………………でこ、おでこがぁー!!!!!!」


おでこの痛みをなんとか抑えながら仰向けになる。仰向けになるとなつちゃんが私の顔を心配そうに覗き込んでいた。


「(あぁ、心配してるなつちゃんも可愛い♡)」


「お姉ちゃんおでこからいっぱい血出てるよ!? 早く手当しないと! お姉ちゃん立てる?」


なつちゃんに手を引かれるまましたに降りていって手当をする。

幸いちょっとおでこが凹んだだけですんで大きな怪我じゃなかった。お母さんからは「あんた何やってんのよw」とケラケラと笑われた。七海さんは心配してくれたのに…………同じ母親でも私のお母さんはクソだぁ〜


おでこに大きい絆創膏をつけて朝ご飯を食べる。その間ずっとお母さんは私の顔を見てツボっていてずっと過呼吸になっていた。いっそのことそのまま倒れれば良かったのに………………



◇ ◇ ◇



「ほっほら、ははは、早く、いっ行って、きき、来なさいw」


「いつまで笑ってるのよ!!」


制服に着替えて身支度を整えて家を出るその時までお母さんは笑ってた。なんかずっと笑われてると殺意が湧いてくるなぁ………………


「ゆうお姉ちゃん行こっ!」


「…………! うん、そうだね!」


はぁ〜〜癒されるぅ〜♡ まったくなつちゃんは可愛いなぁ〜。お母さんは脛を打って倒れればいい。


なつちゃんと手を繋ぎながらバス停まで進む。

私達が通ってる学校は小・中・高の一貫校で敷地内に全部の校舎があってまぁ〜沢山の人がいるわけですよ。だからバス停も学校専用のバス停があるんですよ、それも大量に。


バス停でバスを待つこと5分、バスがやってきた。


「なつちゃん、バスカード持ってきた?」


「うん!」


「じゃあ乗ろっか」


バスにはすでに数人の人が乗っていて本や単語帳を読んでいたり、スマホをいじっていたり、ご飯(春雨スープ)を食べていたり色々していた。


隣同士に座ってスマホを開く。

開くと同時に友達からメッセージが来ていて


『おはよ〜今日朝めっちゃでかいの出たw』


………………今日も平和だ。



◇ ◇ ◇



しばらく乗ってまたバス停に停まった所でさっき快便の知らせをくれた友達の明里あかりちゃんがバスに乗ってきた。


「ゆうなっちおっはー!」


「はいはい、おはよ〜。今日も元気そうだね〜」


「あったりまえよ! だって今日体育あるんだよ!? 楽しみに決まってるじゃ〜ん!」


はぁ、どうしてこんなにも朝っぱら元気なんだろう。一緒にいるこっちまで疲れてくるよ。


「……………およ? 隣に座ってる美少女ちゃんはだれ? 野良の人?」


知らない人を野良って言うなよ。

明里がそんな事言うから可愛い可愛いなつちゃんがビクビクしちゃってるじゃん。


「私の妹の奈月ちゃん。なつちゃんとは一昨日知り合ったんだ!」


「………………あんた、大丈夫? 病院行く?」


おいこら、人をキチガイと決めつけるんじゃないよ。


「昨日親が再婚したって言ったじゃん。それで向こうの人の子供さんが奈月ちゃんだったの」


「あぁ〜そういえばそんな事言ってたな。あれ嘘じゃなかったんだ」


「私は嘘ついたことありません〜だ」


「ははっそうだな。私は明里、よろしくな!」


そう言って躊躇なくなつちゃんの方に手を伸ばす明里ちゃん。陽キャってすげ〜


「よ、よろしくお願いします……………」


ほら、なつちゃんも訳もわからないから困惑の表情を浮かべてるよ。

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