第2話 ご対面
「
お店に入ってくるとお姉さんはすぐに私達を見つけてこっちに歩いて来た。(冬美はお母さんの名前)
お姉さんは髪を肩まで伸ばして全体的に落ち着いた雰囲気を纏っていて、騒がしい私のお母さんとは真逆に感じた。そしてそのお姉さんの手を握って後ろに隠れるようにしている小さい女の子がいた。
お母さんも2人を見ると立ち上がって席を離れてお姉さんの方へ歩いていった。
「ふふっしっかり10分前ね♪」
「ふふふ、昨日しっかり釘を刺されたからね。あっ!あっちに座ってるのが娘さん?」
お母さんと話してたお姉さんがこっちを向く。
私は立ち上がって挨拶をする。
「初めまして!娘の優奈です!よろしくお願いします!」
「あら〜!元気いっぱいで良いわね〜。ほら、
お姉さん改め七海さんが後ろに隠れていた大人しめな雰囲気を纏っている少女もとい奈月ちゃんを前に引っ張り出す。
「あっああ、は、初めて奈月……………です…………………よろしく、お、おお、お願いします」
う〜ん、あんまり人前で喋るのが苦手なタイプなのかな? 奈月ちゃんは髪を七海さんより少し長めに伸ばしていて、顔も整っていてとても可愛らしい子だった。
「ふふっとりあえず座りましょうか。ささ、座って!」
「そうね、奈月、座りましょう」
「う、うん」
私の対面に奈月ちゃんが、お母さんの対面に七海さんが座って、それぞれが軽食を頼んだ。私と奈月ちゃんはサンドイッチ、七海さんはスパゲッティ、お母さんは……………ハンバーグステーキ・ライス付き(←軽食?)を頼んでた。
「明後日から新しい家で良いんだよね?」
「ええ、もう私達の荷物は送ってあるから、後はふーちゃん達の荷物を今日箱詰めするだけね」
おおう、マイマザーよ、今日のうちにあの家にある大量の荷物を箱詰めするのかいな? いやまあ、お母さんは荷物少ないから終わるだろうけどさ、私のあの大量の荷物(漫画(百合)・洋服・クッション・小説(百合)・アルバムetc)は1日じゃ終わらないんだけど!?
「そっかぁ……………あ、そうだ、だったら今日家泊まってく?」
「「!?」」
お母さんがそんな事を言うと私と奈月ちゃんはほぼ同時にお母さんの方を向いた。
「優奈もいいでしょ? どうせ明後日からは一緒に暮らすことになるんだし、事前練習って感じでさ」
「いい、いや、私は良いよ? あ、けど、奈月ちゃんはどうかな?奈月ちゃんが良いって言って言うならいいよ?」
はっきり言ってめっっっちゃ嬉しいけど………………流石に今ここでそれを爆発させたら奈月ちゃんにも、七海さんにも変な風に思われそうだし、周りのお客さんにも迷惑をかけちゃうからなんとか抑える。
私に話を振られた奈月ちゃんは困った風に目を点にして顔をブンブンと振っていた。ちょっと……………悲しい。
「ほ、ほほ、ほら、奈月ちゃんも嫌だって…………………」
「奈月、ちゃんと言わないとわかんないでしょ?」
私の言葉を遮って七海さんが口を開く。すると奈月ちゃんが今にでも泣きそうな顔になりながらも
「あうぅ………………………わ、私は泊まっても………………良いです…………よ?」
「……………………(絶命&メンタルクラッシュ)」
消え入りそうな声で俯きながら言う奈月ちゃん…………………可愛すぎない!?奈月ちゃんの可愛さに私の精神は持たなかった。
「も〜何が『泊まってもいい』よ。昨日はあんなk……………」
「わー!わー!!いっちゃダメぇー!!!」
七海さんが何か言おうとした瞬間に奈月は顔をガバッとあげて立ち上がって大声で七海さんの声を遮る。奈月ちゃんの大声に私を含むお店の中にいるお客さんの視線が一斉に奈月ちゃんに集まる。
「あっ…………………す、すみません…………………」
視線に気づいた奈月ちゃんがしゅんとして席に座る。
「びっくりしたぁ、奈月そんな声で喋れるならいつもシャキシャキ喋りなさい」
「……………はぃ」
ただでさえ恥ずかしい思いをして沈んでた奈月ちゃんがお母さん(七海さん)に怒られて肩をすぼめてしまいもう見えなくなっちゃうんじゃないかってくらい萎縮してしまった。
「まぁまぁ、今のは何か七海さんに言いたい事があったからじゃないですか?」
なんとかフォローに入る。
「そうなの?奈月?」
「…………………お母さんに………………昨日のこと…………………言われたくなかったの」
そう言うと奈月ちゃんは泣き出してしまった。
「そうなのね、ごめんね、お母さん全然わかんなかった」
七海さんがそっと奈月ちゃんの抱きしめる。七海さんがそっと、優しく頭を撫でるとすぐに奈月ちゃんは顔をあげてグイッと涙を拭った。
「あらあら?珍しいわね」
「ゆ、ゆゆ、ゆ………………」
「「「ゆ?」」」
奈月ちゃんが頑張って何か言おうとするのを3人で見守る。そして、奈月ちゃんが一回大きく息を吸って
「ゆうお姉ちゃん!!ありがとう!」
「ゔんっ!(二度目の絶命)」
とびっきりの笑顔で【お姉ちゃん】と呼ばれた……………………………もう私の人生に一切の悔いは無いよ、今までありがとう、お母さん。私は目から滝のように涙を流して机の上に突っ伏した。
◇ ◇ ◇
「さ、そろそろお買い物に行きましょうか♪優奈、死んでないで行くわよ」
椅子に座ったまま絶命している私をお母さんは持ち上げてカフェを出て行く。
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