クリオネ Ep.?
――帰り道、そこには「クリオネ」がいた。
Ep.? クリオネ
帰り道、そこには「クリオネ」がいた。
白い体にピンクの頭の大きな天使。それはとても神秘的で、非道く恐ろしかった。
何をするわけでも、どこかへ向かうわけでもなく。
ただ彼らは自由気ままに空をプカプカと泳いでいる。
ふと、クリオネが地上へゆっくりと降下してきた。
その先には小学校から下校しているのであろうランドセルを背負った小さな女の子。
女の子は近づいてくるクリオネに気がつくとクリオネに向かいにかっ、っとはにかんで見せた。
瞬間、クリオネの頭は醜く変形し、可愛らしいピンクの頭は六本の触手へと変貌し、最早元々の可愛らしさなんてものは欠片も残っていなかった。
その変貌した姿はとにかく恐ろしく、悍ましい姿なのかもしれない。
だけど、僕らの目にはそれは何よりも美しく、何よりも神秘的に見えた。
クリオネは六本の触手を起用に使い、女の子を絡みつくように持ち上げると、そのまま大きく変形した頭の中へと放り込んでしまった。
そのまま、ゆっくり咀嚼するように頭を動かす。そこからはぐちょりと、パキポキといった耳を嫌に刺激するような、スプラッタ映画でしか聞かないような音がとともに、赤くてドロっとした液体や、偶に焼く前のハンバーグのかけらのようなものをつけた触手が見え隠れしていた。
しばらくして、満足に砕ききったかクリオネはぬるりと変形させた頭をもとの可愛らしいピンクの頭に戻すと、満足だったと言わんばかりに優雅に空に戻ってい行った。
そこには女の子が身につけていた黄色い帽子だけが残っていた。
そんな、まるでB級スプラッタ映画のような光景を視ていた僕らは...
それを羨んでいた。
もしくは妬んでいた。なぜそんな冴えない子が?と。
僕ならもっと。私なら。ワシなら。俺なら。
そんな顔を皆浮かべていた。
こんな世界にいるくらいなら。生きるくらいなら。
天使の養分となったほうがマシだと。
皆悲願していた。
ここは救済の町。
大きな
こんな悲しくて、哀しくて仕方のない世界から
唯逃げるため。救われるため。
喰われることを望んでいる。
僕もこうして
こんなつまらない世界より
天使の腹へ放り込まれることを
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