「つらかった」その一言がいえたのは

永杜光理

「つらかった」その一言がいえたのは

世間とはペルソナつける舞踏会ヒールの折れた私はピエロ


一同で輪唱するから混じって言う「みんなもつらい だから平気だ」


「大丈夫」ありがちな笑みで言うことは大人の悲しい業となりけり


身体の細い悲鳴に気づかずに雑な感想「今日もだるいな」


まとわりつく齟齬と理不尽流せずに排水溝は泡をふいてる


世間でのことわり飲めなくなったとき過呼吸になり滑落してゆく


秒針の硬い音で目を覚ます朝も夜もなく苦痛を持ちこす


ガラス窓の向こうで世界は流れゆき病は独りでは重すぎる


一日が過ぎて次の日また、次も 一里塚など見あたりはせず


いにしえの傷を大事にしすぎてた私は私を傷つけていた


久々に長く笑えたその時に赤子のように肺がふくらむ


「つらかった」その一言がいえたのは心を殺した数年後だった


本心を暗く無明で果てのない韜晦の海へ投げ込んでいた


人気歌手の曲が脳に沁みたとき人間だったと思い出し泣く


矜持なきヒトガタにしたその理由貼られたレッテル真に受けたから


生きる価値無しとは誰の宣告か 神はいつでも沈黙している


朝の風ツツジとツバキを愛でている隣でのんびり光合成する


死ぬまでに本当に見つけ出せるのか他人と自分を赦す方法


一歩ずつ過去のいばらをかきわけて飛べなくていい自由になりたい


どう生きてどう果てるかは知らないがいつか全てを笑いとばせる?

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「つらかった」その一言がいえたのは 永杜光理 @hikari_n821

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