雪解ける日
ソロイア
旅立ち
冬のある日、僕には妹ができた。妹は僕とは違って優しい白髪で、透き通った氷のような碧の瞳を持っている。笑う姿は雪を溶かす春のようだった。母さんも白髪で、父さんは僕と同じくオレンジがかった金髪だ。母さんも父さんも碧の瞳ではあるが、僕と母さんは父さん達よりも濃く深海のような瞳だ。
僕は本来覚醒する15歳よりも早く10歳で全てを浄化する光の力[陽光]に目覚めた。そしてその力から
「荷物全部持った?タオルは?手袋は?」
「大丈夫だよ母さん。朝暉と天花ならなんとかなるだろ。俺たちの子だぞ?」
「でもまだ15にもなってもいないのよ?私達だって18だったわ。」
確かに異常と言えるスピードだ。本来早くても15を過ぎなければ覚醒することはありえない。それどころか覚醒しない人だっている。
「ママ、大丈夫だよ。だから笑って」
「・・・そうね。子供達が旅立つというのに喧嘩するなんて最悪だもの。朝暉、天花のことちゃんとよく見るのよ。」
母さんの目に涙が溜まっている。空の神殿はまだ神殿に行っていない覚醒者だけで行かなければならない。神殿に危険があると困るからである。故に、母さん達はついていけないのだ。
「元気で絶対帰ってこいよ。ほら、父さんからの祝福だ。」
「く、苦しい」
力強く父さんに抱きしめられた。肩に何か水滴が落ちた感触がした。そして天花はこらえきれず大声で泣いた。
「てん、か。旅行きたくないー!」
「私達もまだ行かしたくないわよ!でも、行かないとあなた達が死んでしまうわ!それが嫌なのよ!」
覚醒すると膨大な魔力を纏う。その魔力は個人差が大きく、他の者の干渉による調節もできない。空の神殿はそれが可能なエルフが住んでいる。エルフは人間との掟で覚醒者から神殿に来るように言った。故に行かなければならない。
「天花、行ってすぐ帰ってくれば大丈夫さ!それより行かないと二度と母さん達に会えなくなる。」
「グスッ、一緒に行けないの?」
「ごめんな、父さん達はもう一回行くことはできないんだ。」
「天花、絵本のエルフはなんと言っていた?」
「大切な人は魔法でも勝てない絆で結ばれている」
この言葉は一番最初のエルフが言った言葉らしい。この言葉が天花の一番絵本で好きな言葉だ。そして天花は泣き止んだ。
「じゃあ、そろそろ行くね。」
「必ず寝る前に齒を磨いてね!寝る時はおへそを出して寝ないのよ!それから・・・」
手を振りながら叫ぶ声が聞こえる。僕はこれからの旅に期待を寄せながら天花の手を引きながら歩き始めた。
雪解ける日 ソロイア @soroia
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