姉の嫁入り

【登場人物】

・ともみ:妹。お姉ちゃん大好き。

・ようこ:姉。嫁に行く。

・アナウンサー男(渋谷):姉の夫になる人。人気アナウンサー。

・アナウンサー女:クールビューティー系アナウンサー。


---------- 以下本文 ----------


アナウンサー男「それでは週間予報です。(こっからフェードアウト気味)期間前半は平年並みの気温が続きますが、後半からは一気に冷えて、地域によっては雪が降る所もあるようです。気象予報士の上野さん、詳しい解説をお願いします。」


ともみ「あ、雪だ。」

ようこ「あらあら、そうねぇ。」

ともみ「電車大丈夫かなぁ。」

ようこ「大丈夫でしょ。そんなにいきなりは積もらないって。」

ともみ「分かんないよ?どうする?たかしさんの所に行けないかも。」

ようこ「その時は車で迎えに来てもらうから。」

ともみ「車の方が危ないんじゃないかなぁ。やっぱり遅らせたら?春にしたら?そうしようよ!春の方がほら、スタートって感じがするし。」

ようこ「(小さく溜息)なに?ともみは私を行かせたくないの?」

ともみ「…だって。」

ようこ「結婚の報告した時、あんなに喜んでくれたじゃない。」

ともみ「…だって、お姉ちゃんがいなくなるの、やっぱり寂しいんだもん。」

ようこ「私だって…ともみと離れるのは寂しいわ。生まれた時からずっと暮らしてきたこの家を離れるのだって、寂しい。」

ともみ「…ごめん。たかしさんが良い人なのは知ってるし、お姉ちゃんがたかしさんを大好きなのも知ってる。でも、でもね…せめて近くなら良かったのにって思う。」

ようこ「高速飛ばせば一時間よ。」

ともみ「そんな危ないことしないで!」

ようこ「ふふ…。たまには帰ってくるから。」

ともみ「絶対よ!…そうじゃないとお姉ちゃんの部屋、わたしがもらうから。」

ようこ「そんなの好きにしていいわよ。」

ともみ「帰ってきても部屋なくなるよ?」

ようこ「ともみの部屋に泊めてもらうもん。」

ともみ「そ、そういう意味じゃなくて…」

ようこ「出戻りってこと?やめてよ、これから新婚生活が始まるのに」

ともみ「わかんないじゃん、だってたかしさんは…」


アナウンサー女「急激な冷え込み、いよいよ冬到来と言ったところでしょうか。さて、ここで渋谷タカシアナウンサーからお知らせです。ネットニュースでも話題に上がりましたあの事、についてですね。」

アナウンサー男「お騒がせしており大変申し訳ございません。わたくし、この度一般女性の方と結婚させていただくこととなりました。これから寒い季節になっていきますが、二人で暖かい家庭を築きあげていきたいと思っております。これからもどうぞ、よろしくお願いします。お時間を頂きありがとうございます。」

アナウンサー女「渋谷アナウンサーは女性からの人気がとても高いですからね。悲鳴が聞こえてきそうです。コメント欄見ましたか?」

アナウンサー男「はい。沢山のお祝いの言葉もいただきました。ありがとうございました。励ましの言葉もあり、より精進していかなければという思いです。」

アナウンサー女「爽やかにかわしましたね(失笑)それでは、今日はこの辺で。また明日、同じ時間にお会いしましょう。」


ようこ「…ふふ、緊張してる。」

ともみ「心配しかないよ。人気アナウンサーなんて芸能人じゃんか。」

ようこ「普通の会社員よ。沢山の人に知られてるってだけで。」

ともみ「絶対浮気する。」

ようこ「ふふ、会った時にそんな事しない人だってわかったでしょ。」

ともみ「テレビの前と普段のギャップが凄すぎるって、なんで話題にならなかったんだろ。」

ようこ「私は普段の彼が好き。(着信音)あ、噂をすれば。…はい。…ふふ、見てたわよ。お疲れ様。」

アナウンサー男「(酷く訛っている)いやぁ、緊張したっけぇ。俺、おがしぐねがった?」

ようこ「いつもの素敵な渋谷アナだったわよ。」

アナウンサー男「よ、ようこちゃんだがらそげして見えだんだべ?」

ようこ「そんな事ないよ、ふふ。いいの?タカシ君まだスタジオでしょ?素に戻ってるわよ。」

アナウンサー男「っあ!?やべ、安心したら、つい。…(訛りなしのただのイケメン)じゃ、また後で電話するよ。準備は順調?」

ようこ「ええ。もう大体済んだわ。」

アナウンサー男「したば…あ(言い直す)だったら、予定を早めようか。天気が心配だし…なんて(コソッと)俺が早く会いたいだけなんだけど。」

ようこ「そうね、私もよ。だけど…(ともみを見る)」

ともみ「どうしたの?やっぱり予定延ばすって?(ニヤニヤ)」

ようこ「(首を振る)…ともみと過ごす時間も私には大事なのよ。だから予定通り。」

ともみ「おねえちゃんっ!(大事と言われ嬉しくて抱きつくか何か。)大好き!!」


アナウンサー男「(通話を切ってため息)はぁ」

アナウンサー女「マリッジブルーですか?」

アナウンサー男「違うんですよ。最強のライバルに負けた気分になっただけです。」

アナウンサー女「ライバル?負けちゃったんですか?(ニヤニヤ)」

アナウンサー男「義理の妹なんですが、妻にベッタリなんですよ。彼女だけには敵わない。好きだって気持ちは俺だって負けてないんだけどなぁ。」

アナウンサー女「は…惚気かよ。」



✤✤✤ おしまい ✤✤✤







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