繁殖するは悪意の菌


鬱々とした空気の中では、どこからか胞子が現れて、いつの間にかそこらじゅうにカビが広がっている。

掃除はこまめに、換気はこまめに。

風通しは良くしておかないと。


でもそれは、季節が許さない。


あなたが感じたその苦しみを、分かち合ってもらえたならば。

あなたが感じたその苦しみに、寄り添って貰えたならば。

今頃それは昇華され、君は笑っているだろう。

そう出来ないと言うのなら今一度確かめるといい。

胞子が今どこに隠れているのか。


こういう方法もある、目をつぶるのだ。

白い壁に生えた白いカビは見えない。

見えなければ無いのと同じである、そうだろう?

これで万事解決!良かったね!


…おや?それにしては君、少し具合が悪そうだ。

そうだね。見えないからと放置していればいつのまにか…うっ、君の体の中でとんでもないことに。


じゃあどうしようか。


大丈夫、見捨てたりなんかしないさ。

知ってるかい?

カビにも活用法があるんだよ。チーズや味噌、それにお酒。

美味しいものにはカビが有効活用されてるんだよ!

だから君のそれだって有効活用されるに違いない。


人の不幸は蜜の味…ってね。


他人の苦しみに便乗して己を誇示する輩…おっと、駄目だよ泣いたりなんかしちゃ!

栄養を得たカビが大繁殖してしまう。


カラッと乾いた場所に、カビは発生しないんだ。

だから君は、笑顔でいるのがいいねぇ。

カラリとあの青空のように気持ちよく笑ってご覧よ…さぁ口角をあげて!


君はいつだって太陽になれるんだよ?


そんな日陰のジメジメしたところにいないでさ、出ておいでよ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る