いつからの恋
【 西野 】
日比谷は私の事が嫌いだ。
私が彼に酷い事ばかり言うからだ。
彼は背が高い。
「は?日比谷文化部なの?その身長、バレーとかバスケで活かさないなんて勿体ないじゃない。」
彼は声が低い。
「日比谷の声って地響きみたいだよね。なんかお臍取られそう…そうそう、雷と一緒だよ、アンタの声。」
彼は頭がいい。
「全国で十位以内って(笑)凄いを通り越して怖いんだけどー!知ってる?犯罪者って高学歴の人が多いんだってー。日比谷も気をつけなよ~。」
【 日比谷 】
西野は俺の事が好き…なんだと思う。
よく目が合うし、いつもつっかかってくるし。
嫌いなら無視すりゃいいだろ?
そう思ってワザと睨んだら、身体を強ばらせて悲しそうな顔をした。
俺は中学の時バレー部で、応援に行った試合先で初めて彼女を知った。
コートに立った彼女は大きなチームメイト達に囲まれ、小さな子供のようだった。
足りない身長は動きでカバーしようと、必死にボールを追っていた。
その姿は当時怪我で試合に参加出来ず、不貞腐れていた俺には眩しくて仕方なかった。
俺の声は雷と一緒らしい。腹に響く声?なんだそうだ。
…いや、そんな事言われたの初めてなんだけど。
授業中、小声で話さなきゃいけない場面があって、なかなか伝わらなかったから近付いて、耳元で話したんだ。
そしたら急に顔を真っ赤にして、下を向いて目を合わせてくれなくなった。
あれからしばらく口聞いてくれなかったっけ。
俺の声で腹痛くしたとか?
なぁ、どうなの?
(以下かけあい)
西野「えっ…し、知らないわよ。…そうかもしれないわね。日比谷頭いいんだから自分で考えなさいよっ!」
日比谷「…えーっと」
西野「は?スマホ検索?ずっる!」
日比谷「『低音ボイスが子宮に響く』…『声だけで妊娠しちゃう♡』…へぇ。」
西野「…検索結果、それ大丈夫?」
日比谷「西野、妊娠した?」
西野「ば(かなり大きいば)っかじゃないのっ!?それで妊娠するなら少子化問題も『麒麟です』で解決してるよ!」
日比谷「ははは、似てねー(笑)麒麟似てねぇ(笑)」
西野「うるっさいなぁ、じゃあ日比谷がやんなよ!」
日比谷「『西野です』」
西野「はぁ!?なんで私の苗字…」
日比谷「西野姓になるから。練習しとかないと。」
西野「え、なんで?」
日比谷「西野んちの婿養子になるって、この間君の家に行った時、お義父さんと約束したから。」
西野「ちょ…私は日比谷になる気満々だったのに!」
日比谷「ははは、いいよ、苗字なんてどっちでも。…君と一緒になれたらそれでいい。」
西野「ちょ、急にそういう事言わないでよ…。」
日比谷「西野のストーカーになって良かった。」
西野「…推薦で決まってた進学高けって、私と同じ高校に入ったこと?あれ、本当に馬鹿だと思う。」
日比谷「俺は正解だったと思ってるよ。」
西野「…はぁ。私、日比谷にはずっと嫌われてるって思ってた。酷い事ばかり言っちゃってたし。」
日比谷「そうだろうなって思った。だから俺から告白したんだよ。勘違いして離れられたら嫌だなって。」
西野「あの時は…びっくりした。」
日比谷「びっくりした顔、最高に可愛かった。…ずっと一緒にいような。」
西野「…(真っ赤)うん。」
西野:私は日比谷の事が好きだった。
日比谷:俺はそのずっと前から、西野の事が好きだった。
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