ドMマダムは責められたい
A:あら、西園寺さんのご主人じゃないですか!こんにちは。
B:げ、勅使河原さんの奥さん、こんにちは。
A:そうそう、お宅のミミちゃん、昨夜見かけましたわよ。背の高い男性と一緒に五反田のホテルが(街と言いたい)…あ、大きい声で言うのはちょっとアレでしたわね。おほほほほ…失礼しました。
B:背の高い…あぁ。
A:お付き合いしてる方がいらしたんですねぇ。てっきり奥手だとばかり。ほら、ミミちゃん、うちのナナとは正反対で…どちらかと言うと地味、じゃございませんか。だからてっきり、そういう事には疎いものだと。意外でしたわ。
B:そういう奥様こそ、五反田にはどなたと?ご主人は海外に出張中ですよね?
A:う…た、たまたま通りかかっただけですのよ。
B:奥様のようなお上品な方がたまたま通りかかるような場所とは思えませんが。あ、そう言えばこの間、奥様が通ってらっしゃるスポーツジムの前を通ったんですけどね、インストラクターの方って随分と距離が近いんですね。あんな風に若い男性に密着して指導されたら勘違いしてしまう女性もいるかも。
A:勘違いなんてとんでもない。本気かそうでないかの違いくらい分かりましてよ?
B:ふふふ…火遊びも程々に。
A:そちらこそ、お嬢様の行動にはもう少し気を配られた方がよろしいと思いますわ。結婚前なのに…ハレンチな。
B:自分のことは棚に上げて、他人に対しては随分と古臭い考えをお持ちでらっしゃる。
A:万が一あの方と仲違いして別な方と結婚、なーんて事になった際、変な噂が立ってしまったりしたら…お困りになるでしょう?
B:そんなのイチイチ気にしませんよ。気になったら潰すだけです。噂を流した根元ごとね。今はデジタル社会、色々な方法がありますから。
A:あら…随分物騒なことをおっしゃるのね。…わたくしはただ心配しているだけですわ。
B:心配、ね。それなら…昨夜貴女があそこにいたのは誰かと密会する為じゃない、ナナちゃんを追っていたから、ですよね。
A:うっ…!ち、違いますわ!!うちの娘がそんなハレンチな場所に行くはずないじゃないですかっ!日頃から淑女の嗜みについてはわたくしがよく言い聞かせてますからっ!
B:ナナちゃんが誰に会いに行ったか、教えて差し上げましょうか?
A:え
B:陥れるつもりが、どんどん追い詰められていきますね。追い詰められる程イイ顔になっていく…。奥様はマゾっ気がおありのようで。
A:や、やめてくださいまし!そ、それで?…な、ナナは一体誰と。
B:私です。
A:は?
B:ナナちゃんは私に会うためにあそこに。
A:あ、あ、あなた…み、未成年ですよナナは!なんてこと、な、なんてことを…っ!
B:奥様が想像するような事は一切ありませんのでご安心を。
A:へ
B:ふふ、貴女の頭の中は“それ”しかないんですねぇ。
A:ち、違うと言うなら!一体ナナはなぜ貴方と!?
B:私あの辺でスイーツの講師をしておりましてね。ナナちゃんはそこの生徒なんです。因みに娘と、娘の背の高い友人も。
A:は?貴方は確か飲食店経営を…。奥様がそうおっしゃって…。
B:今は経営に専念しておりますが元々パティシエでね。趣味をかねて月に一度教室を開いているんです。あ、奥様もよろしければ。
A:そ、それならそうと、あの子、言えばいいのに。
B:言えなかったでしょうねぇ。だってお宅のご主人、老舗和菓子屋の若旦那ですし。
A:そ、そんな…。
B:と、いうわけでご心配なさらず。ナナちゃんの事は叱らないでください。お母さんの誕生日ケーキを作れるようになりたいと、教室に通っているのですから…あ、いけない。つい。
A:なんですって…。
B:真実なんてそんなもんですよ。淑女の嗜み、なんて仰ってましたけど…奥様の方がずっとはしたない。インストラクターの若造なんかに現を抜かして…。
A:だからそれは…っ!
B:奥様は痛い目にあうのがお好きのようですものね。
A:ち、違いますっ!!
B:ハハ…程々に。それでは。
❂❂❂ おわり ❂❂❂
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