デビル・イート

A:この公園のトイレにはある噂がある。男性トイレの真ん中の個室に一冊の本が置いてあり、その本を1ページでも捲ると…


B「こんばんは~。月が綺麗ですねぇ、あ、愛の告白じゃないですよ!会ったばかりの人にいきなり告白なんてねぇ。でもお兄さんなかなかの美丈夫だぁ。もしかしたら一目惚れ、なんて事はあるかもしれない。」


A「こ、こんばんは。」


A:噂通り、本はそこにあった。『純情レジェンド』。数年前になんとか賞にノミネートされた事があるベストセラーである。私は読んだことは無いが当時付き合っていた彼女が面白いと言っていたのを覚えている。


B「大抵はほら、全部空いていたら一番奥か、一番手前に入るじゃないですか?なんで真ん中にしたんだろ?たまたま?それとも…意図しました?」


A「…た、たまたまですよ!」


A:男のニヤリとした顔が不気味だった。


B「ほんとにぃ?てっきり貴方、そういう目的なのかなぁと思ったんですけど。残念だなぁ、お兄さんとても美味しそうなのにぃ。…じゅるり」


A「ひっ…!!違います、違いますからっ!…う(走り去ろうとして金縛りに合う)」


A:身体が…動か…ない。


B「ひゃはははは、身体は正直でぇすねぇ。求めてるんだよなぁ、欲しかったんでしょ?ほら、正直に言ってごらんなさいな。うふふふ…怖いですか?」


A「や、やめろぉお…!」


(間)


B「ふぅ~ご馳走様でしたぁ。すっごく美味しかったです♡」


A「うぅ…っ(半泣)」


B「じゃ、今度は私が貴方にあげる番ですねぇ。さぁ、仰って。今、貴方が私にして欲しいことを。」


A「…」


B「んんん?聞こえませんねぇ。まさか『ナイ』なんて事はないでしょ?貴方知ってたはずだ。私が何者なのか。」


A「…えてください。」


B「は?」


A「消えてください!あなたのいるべき世界に、帰ってください!!」


B「えぇええ…?それが、願いぃ!?」


A「そうです!僕は霊媒師!この公園のトイレに悪霊が出るので退治して欲しいという依頼を受けました。」


B「あくりょう?…私がっ?」


A「男の精気を糧にして、奪う代わりに願いを一つ叶えてくれると。」


B「悪霊…ってか悪魔ね。」


A「認めたな!」


B「まぁ、悪魔的プライド。ってかさ、それはないでしょ?こっちは等価交換してあげてんじゃん?願い事叶えてあげてるんだよ?恨まれるような事してないんだけど!誰だよ君に依頼したの!」


A「あなたが願い事を叶える事で、不幸になる人が沢山いるんですよ。ある男性は大きな富を手に入れたがそのせいで性格が傲慢になり、家族に辛い思いをさせた。またある男性は恋人になってくれる女性を渇望し叶ったが、元々彼を好きだった女性が酷く傷ついた。他にも、成功させた事業の裏で仕事を奪われた人は路頭に迷い…」


B「まてまてまて、そんなの逆恨みじゃん?幸せな人間がいる一方で不幸になる人間がいるなんて当たり前でしょ?私のせいにするのはおかしいよ~。」


A「…くっ、辛い事は誰かのせいにしないとこの世界じゃ生きてられないんですよ!と、いうわけであなたには消えてもらいます。」


B「わかったよぉ。あーあ、いい餌場だったのになぁ。ほんとに君、他に願い事ないの?富も名誉も…愛も、何でも手に入れられるんだよ?」


A「ならば、世界平和を!」


B「ひゃははははっ。それは無理だよ。」



✼✼✼ おわり ✼✼✼

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