河童娘の憂鬱

私が河童だからって…こんな扱い酷いと思うの。


川に住んでるからって、ホタテのアレもないなんて…。

そりゃ私だって女の子だもの。可愛い水着が着たいわ。

毎年トレンドのチェックも欠かしてないのよ。

…ぐすっ、パパもママも、それに河童族の他のみんなまで、「河童が服を着るなんてナンセンス」なんて。

着ない方がNOセンスだっちゅうの!

あぁ、可愛い水着が着たい!今年はワンピースタイプが流行りだったわね。

あ、あの子の水着可愛い!川遊びにもおしゃれ心を忘れないなんて…人間の女の子は違うわね。尊敬しちゃう。

そうよ、私だってもし人間に生まれていたら…あんな風におしゃれして「女の子」を謳歌してたはず!

人間に生まれていたら、きっと頭のお皿が乾く心配なんてしなくてよくて、髪型だってお洒落にアレンジして…そしてカッコイイ彼と…。


「なぁ、あれってもしかして…」

「ひっ、こっち見てる!」

「か、河童だぁあああ…っ!」


待って、待ってよ!なんで逃げちゃうの?


「きゅうり、きゅうりを投げるんだ!!」

「馬鹿野郎!キュウリじゃだめだ、河童にはかっぱ巻きだろうが!」

「そんなの作ってる余裕あるか!」


痛い!酷いじゃない、キュウリなんかぶつけないでよっ!

トゲトゲ刺さっちゃった…新鮮なのね。せめてお味噌も置いて行って~!

なんて。はぁ…みんな逃げちゃった。荷物忘れてますよ~!


ちゃんと取りに来るかしら?こないとゴミになってしまうのよ。そうなったらまた山の神様が怒っちゃう。山の神様って怖いのよ~…なんて誰も聞いてないか。


こういうことは良くないと思いつつも、やっぱり気になっちゃうのよね~!人間の物って♡失礼しまーす!


お、これは…お味噌!あったじゃない。あと、マヨネーズも!!

こっちは…ん?何かの機械かな…(ジジジ)きゃ!(落とす、ラジオが鳴り出す)


『本日のおたよりコーナー、テーマはなりたい私、皆様からいただいたおたよりをご紹介しましょう』


なりたい…私?


『一人目は、ペンネーム恋するミジンコさん。私は優柔不断な性格を直したいです。彼氏と食事に行ってもなかなかメニューを決められず、いつもイライラさせてしまいます。…あぁ、わかります。メニュー見るとどれも美味しそうで決められませんよね。私はそんな時、思い切って店員さんに言っちゃいます「本日のおすすめをお願いします」ってね。オススメということはその日一番お店で美味しいものだということ。または店員さん自身が食べて美味しいと思ったものだったりするので、私はこの方法で注文しています。』


へぇ。なるほどね。うちのママそういうところあるから教えてあげようかしら。オススメか~。


『続きましてペンネーム恋するカタツムリさん。私は泳ぐのがとても苦手で水泳の授業が大嫌いです。スタイルもサイアクなので水着姿になるのも嫌です。そんなある日、テレビを見ていたらお酒のCMに河童が出ていました。メスの河童はみんなスタイル抜群で泳ぐのも上手。だから私、河童になりたいです!ははは。河童になりたいか~。泳ぐのが苦手、水が苦手なのかな?』


え。この子本気で言ってるの?ってか何よ、聞いてないわよ。河童族が人間のテレビCMに出たなんて。

そうか、河童でもテレビに出れるのね。なら私でもいけちゃうってことよね。だってスタイルには自信あるもん!



数日後、それはやってきた。そう!テレビカメラよ!きっと私をスカウトしにきたのよ!この間逃げた子たちが連れてきてくれたみたい。

はーい♡みなさーん、私がこの川で一番美少女の河童でーす!…え、何その網?


/// おしまい ///


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