第5話巻き込まれた傍観者
夜も良い時間になり、空腹を覚える時間……やっと藻女は落ち着いて……
「お腹が空いたのじゃ!何か美味しい稲荷でも食べ……ふぎゃ!?」
態度がデカくなっていたので、デコピンを一撃与えた
「何をするのじゃ!妾はこれでも神の使いで……」
私は……藻女の目をじっと見る……
「神の……か…み……」
感情を込めず見つめる……
「ふぅ……いっ……」
見つめ……
「もうやめるのじゃ!!!!!まるで本物の姉上のような圧をかけるのはやめてほしいのじゃ〜〜」
涙目で藻女は土下座を始めた
「まったく……それよりも藻女……いい加減……話をしてくれないか?」
私は……少しうんざりしながら、藻女に話しかけた
今日の昼に……手伝って欲しいとか何とか言いながら、いろいろあり……一歩たりとも話が進まず……
グゥー……
私にお腹がなった
「なんじゃ!お主も腹が減っておるではないか!
それなら美味しい稲荷の店にぃぃっぃぃぃぃ!」
ニヤニヤしながら、私を見る藻女の頬を思いっきり引っ張った!
「!!!!!」
藻女の頬を引っ張った時……まるで出来たての餅を摘む柔らかさに驚愕してしまった!
「あにぇうぇ……わりゃわぁがぁわえゆかっにゃにょにゃ……にゃめぇてぇ……」
そして、思わずこねてしまった!
「にゃめぇ…………いい加減にするのだ!!!!!」
このままこの感覚を味わいたいと思ったが、両腕を弾かれた!
「まったく!何をするのだ!
本物の姉上もお主も!妾のぷりてぃな頬を!!!!!」
そう言いながら、両頬を抑えこちらを見てくる藻女に……私は一言……
「お前の姉さんとは、いい酒が呑めそうだ」
とモチモチの頬の感触を思い出しながらそう答えると……藻女は若干引いて……
「もし会えたとしても、お主には絶対に会わせぬのじゃ!」
と力強く言われてしまった
とりあえず、話は戻すが……先に食事を取ることにした
「今日に私の晩御飯は……」
「油揚げ!油揚げ!」
藻女が尻尾を振り回しながら、腕を振って催促してくるが……尻尾か……
「わがままを言うんじゃありません!」
私は自分の尻尾で藻女の顔を往復ビンタをするが……ん?思ったよりも、難しく……モフっと顔面を覆ってしまうが……
「なんで2本?」
私の尻尾は、藻女とは違い2本あった事に驚いたが
「知らんのじゃ!」
「ふにゃ!?」
藻女が尻尾を思いっきり抱きしめていて、付け根に変な感覚が来て、思わず変な声が出てしまった!
「ふっふっふ……お主もこの尻尾の感覚がわかったか?」
藻女がニヤニヤしながら見てきたが……私は尻尾に力を込めて、振り解こうとして……藻女ごと振り回してしまった!
「うにゃ〜〜〜〜♪」
遊んでもらった小狐の様に……はしゃいでいた……
「ゼーハーゼーハー」しばらく振り回していたが、一向に離れる気配がなく、結局疲れるまで振り続けただけだったが……
藻女はすごくニコニコして喜んでいた
だが、曇らせたいこの笑顔!
「言っとくが、油揚げ、厚揚げはこの付近に無いからな」
私はこの国の食文明を教えてやった
この辺は中世をモチーフにした国で基本洋食
過去に東の国に留学していた王様が、一部を輸入していたが……戦争後、まだ流通の回復には、時間がかかり私もしばらく食べていない
「なんじゃと……!?」
この事実を知った藻女の顔が某少年漫画の様に濃ゆくなったように見えたが……
すぐに、力が抜け……地面に倒れる
「まあ、一部自国でも栽培に成功しているが……」
藻女の耳がピクリと動く
「米なら……おにぎりとか出店があるが……行くか?肉串とかもあるが……」
はち切れんばかりに、尻尾を振る藻女の姿がそこにはあった。
そして……
「よう!お姉ちゃん!可愛いね!おじちゃんおまけしちゃうよ!」
「お姉ちゃんと買い物かい?良かったね!
最近物騒だから、手をちゃんと握ってあげるんだよ!」
独りで買い物をしていた頃とは大違いのフレンドリーな商店街だった
「すごいのじゃ!すごいのじゃ!お肉がいっぱいなのじゃ!おにぎりも美味しいのじゃ!」
満面の笑みを浮かべ、肉串にかぶりつく藻女を見て……不思議な感覚に襲われる……
懐から、無意識にハンカチを取り……
「ほら、藻女!口を汚して!もっと落ち着いて食べなさい!」
肉汁で汚れた口元を拭いていた!?
藻女もされるがまま、口を突き出していた……
この感覚……
そうか!!!!!
「これが母性か!」「うみゅ?」
思わず口に出てしまった
キョトンとした表情で藻女が私を見る……
私はそれを誤魔化すように笑みを浮かべ、頭を撫でる
「気にしなくて良いですよ〜
私の分のおにぎりも食べますか?」
おにぎりを差し出すと……藻女は恐る恐るとおにぎりを取り……
「ありがとうなのじゃ!まるで姉上の様に優しいのじゃ!」
と恥ずかしそうに笑う藻女を抱きしめそうになったが……食事中だったので、しきりに自分を抑えた
って!!!!!絆されてんじゃねぇ!
私は髪をかき上げるが……
「のぅ!姉上!あ〜んなのじゃ!」
藻女が、肉串を向けながら、年相応の笑顔……
「まっ間違えたのじゃ!?お主がいつまでも姉上の姿をしておるからのう!」
慌てて、取り繕うその姿に……思わず口を押さえて、顔を背け……ニヤけるのを我慢した!
なんだ!この可愛い生物は!!!!!
思わず陥落しそうになった!
よく考えると……藻女は玉藻前と言う九尾狐の幼名……
権力者を魅了して国を傾かせた美女だ……
魅力がないわけがないが……
姉の伝承なんて……妲己?
これは中国を傾かせた九尾で玉藻前と同一視されているが……
「のう……お主?食べぬのか?」
考え込んでいると……藻女は、口を少し尖らせながら、不満そうに私の顔を覗き込んでいた!
この萌えの塊が!!!!!
モブで居たのが長すぎて……この感覚が癖になりそうだった
「そこのお二人さん!良かったら一緒に遊びに行かないか?」
そんな時……明らかにガラの悪い五人の男に話しかけられる……まさか、藻女の魅了に?
「ロリコンか?」
思わず声が出て……周囲の視線が男たちに向く……
「ちっちが……俺はこのわがままボディの女を……」
「なんだって!?藻女のこんな……わがままで!きっと偏食なぺったんこのボディを……」
藻女の表情が険しくなる……
「みろ!変な目で見るから……表情がこんなに険しく!!!!!」
私は藻女を背に庇い隠す……が……
「うるさい!このアマ!!!!!それ以上喋るな!」そう言って私の腕が掴まれた……
「アマ?」私に言われたと思うが……と少し考えて、容姿の固定を思い出した!
まだ、よく慣れていないが、容姿が固定化されたら、こんな事があるのか!と考えているうちに、私は路地の方へ引っ張られて、藻女が不安そうに私を見ていたが……私は大丈夫と言って笑顔で路地裏に連れ込まれ……
「抵抗もなく、ついて来やがって……どうなるか、わかってんだろうな?」
五人がそう言って、私を囲む……
「変わった服をしやがって……」そう言いながら、男が私の着ていた巫女服の襟を掴もうとしたが……
私はその男の手首を掴み……
「なんだ?抵抗でも……」何かを言いかけていたが、気にせず、男を軽く腕に反動だけで上空に跳ね上げ……地面に叩きつける!
ゴッ!?鈍い音が路地裏に軽く響き……
地面に叩きつけられた男は……力無く地面にへばりつく……
『へっ?』
その光景を理解できないのか、無様な声を上げる四人の男たちを……壁や地面にさっさと叩きつける……三人目を壁のシミにした所で……最後の一人が、腰を抜かし、私に手をすり抜け……壁に手が当たり……壁が凹む
「ひゃぁぁ!?」
四つん這いで逃げ出す男
だが、私は逃げ出す男の足首を掴み……
「ひぃいいぃいぃいいぃい!?」
男を路地裏の奥へ引き摺り込む……
「この化け物!」掴まれていない足でしきりに私に手を蹴るが……びくりともしなかった……
「化け物って失礼ですね〜
これでも、私……学生なんですよ?」
そう言って私は笑みを浮かべると……
男は失礼にもヒッ!と短い悲鳴をあげ、
お前のような学生はいるか!と罵倒される
まったく、私は本当にただの学生なのに……
それは、この世界がゲームのような物と理解する前から、学園で存在して来た。
数年通っていて、気づいたが……
学園に通っているとパラメータが上昇する
普通は急激に上昇するとしても数年程度の上昇だったが……100年以上も通っていたら、そのパラメーターはすでに人を辞めている……
こんなチンピラに負ける要素はない
私は無造作に男を路地の床に転がすと……
ゆっくりと男に近づき……屈み目線を合わせる
「貴方のお仲間は、無事生きてますよ?まだですけどね?」
私は笑みを浮かべながら、私を怯えながら見ている男の両頬を両手で押さえると……その目を見つめ……
「次……私たちの前に現れたら……殺しますよ?」
そう呟いた瞬間……男は……白い泡を口から吐きながら、白目を晒して意識を失った
「此処まで脅せば、関わることはないだろう!」
私はそう言いながら、立ち上がると……路地裏を出ようとして……路地裏の入り口で……
「誰か助けてくれぬか!不届きものに……
妾のあね……あね……姉上が!」藻女が助けを呼んでいた……
その様子に、軽く息を吐くと背後から、頭を撫でる
「ぴぃ!?」一瞬怯えたような声をあげるが、すぐに私と気づき、抱きついてきた!
「心配したのじゃぞ!」
袴の裾を思いっきり掴んでいた……
何かを言わないといけないと思ったが……
「大丈夫ですか?」
私を呼び止めた兵士が、走ってきた
「ああ、さっきの兵士の人ですね……実は、不良に絡まれまして……路地裏に連れ込まれたんですが……」
私がそこまで話したところで、兵士は血相を変えて
「大丈夫ですか!?」
私の両肩を掴んでくる!?
「大丈夫ですよ!急に仲間割れを初めて……その隙に逃げてきました……」
私は少し苦笑いをしながら、そう言うと……
兵士は、安心したように息を吐き……
「良かったです……気をつけるように言った直後に、何かあったら……悔やまれますので……それでは……仲間が到着次第、路地裏に突撃しますので……あれ?誰もいない?」
話が面倒に思えた私は姿の設定を解除し、早々と立ち去った
その際、藻女がつまらなそうに……いや、名残惜しそうに、私を見ていたが……いい加減、目的を話せと思いながら改めて帰路についた。
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