35.伝説

 “双異そうい相難そうなん神剣じんけん


 青一面の天空は闇に包まれ、緑芽吹く大地にはほむらが全てを黒へと変貌させる。


 アルレギオン王国に、1000年ほど前から伝わる『龍と双剣英雄」の伝説をご存知か。

 人々が豊かに暮らす大地に、天より降り立った大きな双子龍ふたごりゅうが災いをもたらした。

 しかし、双子龍はやがて死を迎えることとなる。

 一人の英雄によって……。


 オォォォォォォォォォーーーーー。


 天空に舞う双子龍。

 それぞれ特徴があり、役割のようなものが存在していた。

 一方の龍は非常に身体が長い。大きい身体だが、神速というほどの目では追えない速度を持つ。飛べば世界は炎に包まれることだろう。

 もう一方は比べると少し小柄だ。小柄とは言うものの人間からすると十分の大きさを誇る。小柄ではあるが、その皮膚はダイヤモンドのように硬く、圧倒的な防御力も持つ。神速までの速度はないものの、一度ひとたび炎を吐けば、大地を焼き尽くすだけでなく、溶かして消し去ってしまうほどの破壊力も持つ。


 双子龍の降臨に、人類は愚か全ての生物は立ち向かうことができずに、逃げ惑うことしかできなかった。


「おいおい、これ以上暴れるのは許さねぇよ」


 そんな中で、暴れる双子の龍に立ち向かった男がいた。


「俺の好きなこの大地を壊すんじゃねぇよ」


 鍛え抜かれた身体。

 両手に握る二本の剣。


 オォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーー。


「いいぜ、かかってこいよ」


 男は暴れる龍に対して宣戦布告をぶつける。


 アァァァァァァァァァァ!!!!


 男と双子龍の戦いは10日間にも及んだ。

 大地を溶かす灼熱の炎を斬撃で切り裂き、目で追うことのできない神速には、あえて目を使わずに気配を感じて対処してみせた。

 

「はぁ………はぁ…………」


 結果としては、男の勝利で幕を閉じることとなる。後に彼は、倒した龍の鱗や爪などを使って二本の異なるつるぎを作った。

 残った人類からすれば、彼は英雄だ。

 だが、そんな英雄は数年後に忽然こつぜんと姿を消してしまった………。


 人々は彼の行方を追ったが、結局見つかることなかった。

 しかし、遥か北方。

 最高峰の頂上にある大きな岩に、双子龍から作られた二本のつるぎが突き刺さっていた。

 加えて、突き刺さっていた岩の表面には、このような文字が刻まれていた。


 “双刃ふたば相異あいことなるならば”


 “難技なんぎもたら神界じんかい龍双剣りゅうそうけん


 “神速しんそくなり剣技けんぎきわめし強者つわものこれささぐ”


 “われたましいともに”


 実在したかは定かでないが、

 語り継がれる英雄達の神剣伝説の1つだ――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る