第62話 伝説の新メンバー
極彩街道にて。
「ショーコですぅ……」
【これまた濃い子が来たなぁ】
【今までの二人とは全く別タイプ過ぎてどういう伝手を辿って参加したのか気になりすぎる】
「ぶ、部活で、一緒にな、なって……」
【まあでも可愛いから良し!】
【やはりパーカーには趣がありますな……今の時期は暑そうだけど】
「ひぃ………………!!」
未若沙が彩雲プランテーションに参加した初日、さっそくとばかりに配信を付けた俺は未若沙を紹介した。
活動名はショーコ。その由来は笑子という名前をカジュアルにしただけなのだが、少しケシ子と被るところが懸念点か。
ちなみに、白保間未若沙のどこから笑子という名前が来たのかと問われれば、それは彼女のネットでの活動名である『ゲラゲラ』に由来する。
新人配信者板を中心として、辛口評価で名の知れたコテハンであるゲラゲラがこんなあがり
その正体を知っている百合騎士や低年は今頃、配信を見て笑っていることだろう。
さて、新たな新メンバーを加えたこともあって、彩雲プランテーションの戦力は大幅に上昇した。具体的に言えば、今までは近距離ジョブ二人ということもあって、見敵必殺を基礎としたやられる前にやるのが基本的な戦闘スタイルだった。
しかし、ここで現れたショーコの存在ににより、戦略に幅ができた。具体的に言えば、強敵相手にも遠距離からじっくりと戦う手札が増えたといったところか。
無論、ショーコはメインジョブではないことを追記しておこう。
とりあえず現在のショーコのステータスを見てみようか。
―ステータス開示
名:ショーコ(表示名切替『ゲラゲラ』『白保間未若沙』)
齢:17
〇ジョブ
クラス3ジョブ〈贄士〉Lv.5
補正値
STR補正:-C
VIT補正:-C
DEF補正:-C
AGI補正:-C
MP補正:+A
〇ステータス
〇所有スキル
-ジョブスキル
〈武器召喚〉〈呪殺〉〈制作:藁人形〉〈生贄術〉〈火魔法:中級〉〈レジスト:呪い(小)〉
-固有スキル
〈回路連結〉〈設置魔法〉
……改めて見てもピーキーなジョブを選んだなほんと。
いやまあ、使いにくいジョブ筆頭候補である〈銃士〉派生を使っている俺が言えたもんじゃないけど、それでもステ4つに-C補正のジョブはなかなかない。
〈贄士〉は、魔法使い系統火魔法使い特殊派生のクラス3ジョブだ。先に言っておくが、基本的にクラスは上に行くほど特殊派生が増えていき、クラス4は通常派生――つまり、一つのジョブのレベルを上げるだけで解放されるジョブが存在せず、複数のジョブのレベルを上げるか、何らかの条件を満たすことで解放される特殊ジョブしか存在しない。
かくいう俺も今のジョブに就けているのは幸運だったというほかないほどだ。あと純粋にクラス3はレベルの上昇が遅いこともあり、愛代のようなそれなりにダンジョンに潜っている人間でも、クラス3で止まっている冒険者は多い。
話を戻そう。〈贄士〉は先に言った通り火魔法使いの特殊派生ジョブ。しかし、区分けでいえばどちらかといえば呪術士系統に近い性能をしている。
というよりも、聞いた話によれば〈呪術士〉と〈火魔法使い〉、そして〈人形士〉をレベル100にしなければ解放できない特殊ジョブとのこと。まあ、奴のメインジョブを考えれば火魔法使い系統で間違いないんだろうけど、微妙に納得できないんだよなぁー。
ともかく、その性能は妨害と攻撃の間の子といった感じ。
「なんかモンスターが急に吐血したんだけど!?」
「あ……そ、それ、あーしの……」
「貴方の手柄なのはわかりましたが、この痛ましいビジュアルどうにかなりませんの……?」
「む、無理……」
相手をしていた七色猿が、まだ何もしていないというのに吐血した。おそらくはこれが〈贄士〉の効果なのだろうが……しかし凄惨だ。
普段は殴る蹴るなどの暴行の後にドロップアイテムとなって消えていくはずのモンスターが、血というわかりやすくもバイオレンスなダメージを残していることがまれ。しかも、それを成した張本人であるショーコもショーコで地面に置かれたモンスターに似た藁人形を、杖の尖った部分でぐりぐりと刺激しているという、戦闘そっちのけで何やってんだと言いたくなるような光景を繰り広げているのだから苦言も呈したくなる。
『流石のショーコの奇行にコメント欄もドン引きだな』
「そこのカメラマンうるっせぇぞ!!」
「うわぁ! びっくりした……今のショーコちゃん?」
【え】
【誰今の】
【凄いドス聞いた声出て来たんだけど】
「ひぃ~……」
「意外な個性が出てきましたわね……」
とりあえず、ショーコの本性を見せることでこの凄惨な現場はギャグとして収まった、か? まあそれは今後の成り行き次第だな。ショーコも、早く素の自分を見せつけられるようになるといいんだが……。
さて、これが吉と出るか凶と出るか。まだわからない。
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