ベビーブルー①

 これはいつのことだっただろうか。ボクに母が度々言っていたことがある。

「目の色が違う」

 それがどういうことなのか、全くわからなかった。髪が黒で瞳が緑だと違うのだろうか。こういうのは同じ色で揃えるものなのか、でも友達は違った。では言葉の意味とは、あの時には全く分からなかった。

 そしてボクはある日、知らない場所においていかれたんだ。待っていてと言われたが、連絡先も住所も知らない、いつまで待っても帰ってこない。何年もそこで過ごしたけど、戻ってくるって信じていた。それでも何一つ音沙汰がなかった。


   @


 響はベッドで横たわりながら、大粒の涙をこぼしていた。あの時の夢だ。母親に捨てられ、孤児院においていかれた時の。

「……っ、ぅう、ひぐ、ぐすっ……」

 彼はまるで子供の様に泣きじゃくる。何年経ってもあのことが傷になり、癒えることはない。強化手術で骨格と神経を弄られる際は全身に焼けた針が泳ぐような激痛が二週間は続いた。テロで自分が殺めた人の悲鳴や断末魔を聞きつづけて耳から離れなくなった。それでもこれを上書きすることはできない。

「はぁ、はぁ……っ」

 しばらくしてようやく落ち着きを取り戻す。あの時はまだ、遺伝子編集による格差の助長が話題になり出した辺りで禁止にはなっていなかったはず。とすると、本当に思った通りじゃなかったから捨てたということになる。なんとか母が自分を捨てたのっぴきならない理由を探そうとする度にどうしようもない現実を突きつけられる。

「……」

 響は目元を強くぬぐうと部屋を出る。寮の部屋はいくらでも増えるため一人部屋。この点に関してはよかったと言えるのだろうか。共用の洗面所で顔を洗い、意識を別のことに持っていくが目が冴えてしまった。

「そうだ、たしか今日は……」

 地下の談話室ではあるアニメを寮生が一緒に見ているところなのを思い出す。アイドルのファンが彼女の子供に転生する話だったか。デニスもそこにいたはずが。響は一人で見ていたので上映会に参加しなかった。

 響は談話室に向かう。泣き腫らした目を見られたくはないなと眼鏡でごまかす。一人で抱える癖がすぐ無くなるわけでもなく、それだけでなくなんだか気恥ずかしいというのもある。行政処理年齢では30歳という立派な大人なのだから。

 談話室のテレビではアニメのエンディングが流れており、皆して満足気であった。

「いい話だった……」

「大人は子供を守る、しかと胸に響いたぜ」

 響はあの回か、と心当たりを付ける。たしかリアリティーショーに絡んだ話だったはず。嘘を嘘と見抜けない人がネットを使うのは難しいという言葉があるが、それはテレビでも同じである。いくらリアルを謳っていても、そのまま垂れ流しでは事件も起きずに見せ場はない。演出はされるもので人に見られる以上、多少は気を遣う。

「テレビねぇ……」

 テレビさえ無い世界出身の者がいるため、白楼ではパソコンを含めたリテラシー教育が入学前に行われる。かつてネットを騒がせたバイトテロという、仕事中に不適切な写真を撮ってSNSに上げる行為と末路も伝えられる。

 響は十五年近く基幹世界で生活している上にエストエフではネットもあったのでこの授業は受ける必要もなかったが、真面目さ故かチェックのためか受けた。エストエフの事例も織り込んだものになっており、自分の証言も無駄でなかったと知らされる。一応ワールドセイバーには他の世界へ潜入して調査する部署もあるので彼らの仕事でもある。

 エストエフではテレビがSNSの危険性を煽ることで規制にもっていき、他の情報収集手段を制限した上で遺伝子編集ブームを起こすなど考えられる限り最悪の選択が行われていた。基幹世界とエストエフは異世界同士で一番似ている世界とも言われており、エストエフの失敗は基幹世界の未来でもあると政治家や学者には共有されている。ただこのアニメを見ると漫画家やその辺の人もちゃんとこれはダメだという問題を感じているのだと知らされる。

「あ、響来てたのか。もう終わっちまったぞ」

 デニスは響を見つけて声をかける。元々響は見に来る予定でなかったので問題はない。

「なぁ、ゲッターロボ出なかったぞ?」

「いやあれMAD動画ですからね?」

 テレビやネット文化そのものがないと、既存の映像を編集して生み出すMADというものにも疎い。このアニメにゲッターロボは出ない。私がそう判断した。

「でも元ネタのアニメはOVAで話数も少なくてわかりやすい部類なのでゲッター初心者にはおススメしやすいかも」

「よし、次はゲッターロボ見るぞ!」

 流れでゲッター上映会が決まってしまった。もちろん明日は学校なので次の日だ。ただルイーズがそこに口を挟む。

「ん? あんたシリーズの入門は最新のものからって……最新はアークでしょ?」

「基本はそうなんですけどゲッターは……ゲッター線が……」

 基本シリーズものは最新作から入るのがいい。ガンダムだって最初のはどうしても年代故の古臭さがあり、人を選ぶからだ。七年後の二作目になっただけでも作画の新しさが段違いという世界なので。ただそうでもないシリーズもある。特に特色が強すぎるものは。

「そういえば奏がゲッターロボのゲーム持ってなかった?」

「あれはゲッP-Xですよ」

 そこにパロディゲームまで加わると何が何やら。デニスは奏を知っているため、彼女がそういうゲームを何本か持っているのを覚えていた。

「いやそうじゃなくてスーパーファミリーコンピューターの……」

「あれは超攻合神サーディオンって別物です。三機のコアメカが合体しますが」

 またしても別物。ロボットの枠に捉われず自由な変形を描いた永井豪先生は偉大。ただおかげでルイーズの頭には宇宙が広がっていた。

「……?」

「あ、ルイーズさんがゲッター未見で虚無りましたね」

 ゲッターロボ自体ロボットものの概念が理解に必要なのでそうもなる。


   @


 翌日の放課後、響は遊騎に誘われて彼の母が経営する店へやってきた。チョコレートショップ『シュヴァルツバース』は白楼のある天地市の隣、芸術の街尾平良市では知る人ぞ知る名店だ。

「あら、いらっしゃい」

「お、おじゃまします……」

 遊騎の母と祖母に会うのはこれが初めて。遊介から話を聞き、彼の遺体を連れ帰ったのだが直に会う機会はついぞなかった。なかったというより響が避けていたというべきか。

「お袋、こいつが響だ」

「いつもうちの子がお世話になってます」

 遊騎は響を母に紹介する。社交辞令の挨拶であるが、リーザほどお世話にはしていない。手土産を持って来ようとしたがいいからと遊騎に断られてしまい、響はどうするか困っていた。

「ほら、あの写真が親父とその同僚が来てた時のだ」

 遊騎はそこで、ある写真を見せる。南極調査隊のメンバーが映った写真には響も知るものがいた。遊介以外にもあの時、共に行動したメンバーがいるのだ。

「あ、懐かしいですね……」

 あの南極での出来事は本当に大変で、氷の中に山脈があってそこを行方不明になった探索隊の救助のために探索した。その過程で遊介に救助された響であったが、世界の存亡をかけたあれこれに巻き込まれるとは思ってもなかったのである。

「こっちは?」

「ああ、リーザの言ってた初代漫研ファイブだな。……六人いるな?」

 なんと奏たちの代の漫研まで写真を残していた。何人か現在の白楼に教師として在籍しているが、当時は遊騎も幼かったため覚えていない。六人いるのは途中で追加メンバーがあったため。

「勅使河原先生、本当に変わってないなぁ……」

 その中には響とリーザの担任である勅使河原千沙登も写っていたが、十五年前とは思えない変わらなさである。

「おや、今日も深井さん来ておらんかね?」

「ええ。ここのところ一か月以上」

 カウンターでは遊騎の祖母と母が何かを話していた。小さな店であり常連の名前は覚える。どうも一か月来ていない常連がいるようだが、お菓子屋という生活に必要で定期的に来る場所ではない以上、何か心配な要素があるのだろう。

「深井さん、一体どうしたってんだ……?」

「何かあったんです?」

 響はつい聞いてしまって、後から訂正する。なぜナチュラルに首を突っ込もうとしたのか、彼にもわからなかった。

「あっと……プライバシーですしなかったことに……」

「ここが遊騎の母がやっておる店かの?」

 その時、なぜかゆいが店に入ってきた。店のこと自体は知っているが、今日は来る予定でなかったはず。

「ゆい? どうした?」

「いや何、尾平良に妙な霊力を感じて追っていたらな見かけて挨拶に来たまでじゃ」

 あのゆいが霊力云々とはなんとも不穏だ。

「霊力?」

「そうじゃ。餅は餅屋というし、ここは任せておけ」

 彼女は多くを語らない。呪い関係は知る、認知するだけでも危険なことが多いからだ。

「それでは、また来るぞ」

 本当に挨拶しに来ただけらしく、ゆいはそのまま去ってしまった。せっかちではなくどちらかとゆったりめな彼女が、これまた来るもの拒まずなゆるい店を早急に立ち去るとは、よほどその霊力が気になるのだろう。

「さっきのは……」

 彼女と入れ替わりに一人の少年が入ってきた。顔の傷が目立つ小柄な彼は、遊騎の母にあることを尋ねる。

「公界さん、深井さんは来ては?」

「ううん、こっちにも。マスカレイドの方も?」

「はい」

 響は彼のことを知っていた。奏の同級生で当時の漫研部員だ。

零人れいとさん?」

「響か……いや、こっちの話だ」

 黒崎零人はこの尾平良で養父から継いだ喫茶店、マスカレイドのマスターをしている。公界家とも親交があり、店のお菓子を頼んでいる間柄だ。彼は響や遊騎に余計な気をもませない様に話を打ち切る。

「こればかりは、あまり他人がどうと言ってもな……」

 零人は何か思い当たることがある様子で立ち去っていく。遊騎もそれに心当たりがある様子で店を急いで出ていった。

「悪い、やっぱ俺行ってくるわ!」

「遊騎さん?」

 響はおいていかれ、しばらく店内を見渡す。ふと、写真が目に入った。南極探検隊の、遊介と仲間達。それを見て、響は行動を決めた。

「おじゃましました。今度はお買い物に来ますね」

 丁寧にあいさつし、彼も店を出る。

「優しい子たちだね」

 遊騎の祖母は、彼らの行動を読んでいた。遊介ならばどうするのか、それを彼ら三人、零人、遊騎、響が受け継いでいることを。実の息子である遊騎は無論、意思として受け継いでいる者もいる。


 走っていく遊騎に響は追いついた。

「遊騎さん」

「響?」

 おそらく深井という人物のことだろうと響は読んでいた。あの様子だと遊騎も深井を知っていそうだ。店に来なくなった理由も。

「お前も来てくれるのか、助かるぜ」

 事情は一切話していないが、遊騎は響への信頼が厚いので来てくれるだけですごい頼もしく感じていた。

「ええ、その人のこと全然知らないんですけど、なぜだか放っておけなくて」

 響は遊騎達が気を揉んでいる様子を見て思うところがあった。ただなぜそれが気になるのかという言語化ができない。

(職業病? でもこれが世界終焉シナリオに……? ゆいさんが絡んだから?)

 罪滅ぼしのための戦い、死ぬための戦いはもう終わった。生きるための殺しという、答えの出ない問題への折り合いはついた。リーザや多くの人に幸せを願われ、それに応えると決めたことで。

 だが、なぜ今も動いているのか。

「じゃあ共有しておく。深井さんってのはうちの常連さんでな、子供を亡くしてから全然うち来なくなっちまって」

「子供……」

 深井という人物は母親なのだろうか。響は気になった。なにせ、彼は母親に捨てられた過去がある。他の母親が子供をどう思っているのか気にならないといえば嘘になる。

「まぁ喪中だしすぐに来る気にはなれないだろうが本当に長くてな」

「待て、どう声をかけるつもりだ?」

 二人が話しながら走っていると、並走して零人が割り込んでくる。

「うわ!」

「非常にデリケートな問題だ。元気づけ方によっては逆効果になる」

 彼が言うのも尤もで、下手に子供の死を忘れろ明るくなれと言ってもダメだ。子供を愛しているほど死など忘れられまい。

「んなもん、困ったことがあれば言ってくれよぐらいしかねぇよ」

 物心つく前とはいえ父を失っている遊騎はそこのところわかっていた。困ったら助けるよぐらいソフトで助っ人がいることを示唆するほかない。

「さすがにわかっていたか……わかっているよな……」

 零人は確認だけ済ませるとすべてを遊騎に託す。あまり大人数で押し掛けるのも負担だ。彼は養父を亡くしており、その時遊騎がどう声をかけてくれたかも知っていた。

「任せるぞ」

「おっけー」

 零人は遊騎と響に託し、立ち止まる。そして去っていく二人の背中を見送った。人から人へ、血筋ではなく伝わっていくものを感じながら。

「ん?」

 そんな余韻を打ち消す様に、電話が鳴る。その相手はかつての同級生で現在は白楼で情報科の教師をしている千沙登であった。

「もしもし、チサ?」

『やっほー、レイくん久しぶり』

「わざわざ電話なんて珍しいじゃん。そういえば、響の担任なんだって?」

 零人は十五年前の世界終焉シナリオで響と共闘し、その後奏の家族となったことを知っている。無論、現在どうなっているのかも奏伝いに聞いている。

「そんなこともあるんだねぇ……カービィの色したマホロアみたいなお前が……」

『それよりさぁ、面白いの見つけちゃって。知り合いの弁護士さんがネットの誹謗中傷で訴えられてる人の弁護しててね今』

「それ他所に喋っていいやつ?」

 明らかな守秘義務違反に零人は突っ込む。その弁護士も、ネットの誹謗中傷って辺りホワイトハッカー千沙登に協力を仰いだんだろうが。

『どの案件かはぼかすから大丈夫だよ。あんまりにも面白くって』

「誹謗中傷の案件が面白いってなんだよ……頭がハッピーセットとか言ったの?」

 守秘義務違反に引っかからない様に電話なのだろう。彼女の技術なら零人側で録音できない様にすることくらい造作もない。証拠が残っていなければ違反の証明はできない。

『それがね、聞いて驚かないでよ。誹謗中傷したって証拠のスクショ、コラで捏造したものだったの! しかも普通載るはずの日付とかないからエイリアスとかフォントサイズ確認するまでもなくって! 投稿の捏造なんて簡単だし、まさか相手の弁護士がどや顔でこれ出してきてるのかと思ったらお腹痛くって! でも投稿の捏造は気を付けないといけないから今度の授業でやろうか……』

 零人は容赦なく電話を切った。あれこの人情報科の教師だったよね? なんで弁護士になんか依頼されてるの? と思いつつ。


   @


 東京のあるアニメ会社では最新話の制作が急ピッチで進んでいた。あの白楼生も楽しんだアイドルのアニメである。

「ふむ、これこそアニメ作りの醍醐味よ」

 髭を蓄えた、戦艦の艦長でもしていそうな風体の老人が拙い日本語で書かれた手紙を読む。それは白楼からのファンレター。ネット文化に疎い異世界からの留学生は逆に昔ながらの手紙を出すことも多い。

「それで社長、あの件は……」

 秘書は社長である老人に起きている問題のことを問う。ただ彼は一笑に付すだけだ。

「ふん、原作漫画の時に言わんとアニメになった今言いにきおって。馬鹿めと言ってやれ、一人でも楽しみに待つ者がいるのなら作るのが我々だ」

 ただ社長は退かない。彼はオタクバッシングが激しくなった時期に業界で生きていた。そのため難癖の様なもので働きを潰された従業員、楽しみを失った顧客を見てきた。

 道理があれば考慮もしようが、今回は一切譲ることはない。原作漫画連載時にスルーしておいて、アニメ化で知名度が上がってから文句を言う奴を彼は信用しない。

「奴の言うことが通れば、あらゆる探偵アニメはあらゆる事件を想起されるから放映はできまい。最近はスポンサーもクレームには毅然と対応してくれている。それにもう放送した内容なぞ変えようもあるものか。このままいく」

 要求を呑もうにもその要求もよくわからず、対応ができないというのもあった。アニメが放送されてから言われても、配信サイトでも話の整合性が取れなくなるのでその回だけ抜くみたいなことはできない。単話完結の一話二話ならともかく、12話での構成が増えた昨今に続きものの四話もできるはずがない。

「はっ、わかりました」

 というわけで社長は要求を飲まないで話を進める。

「失礼します」

「お?」

 その時、世紀末救世主みたいな筋骨隆々でマントの男がやってくる。いいお店の紙袋も下げているが、なんというミスマッチ感よ。

「私はエストエフ医療協会の者です。この下のテナントを使わせてもらうので、ご挨拶に参りました」

「これはご丁寧にどうも」

 凄まじい恰好に反して、礼儀正しく丁寧。医者と聞かれれば首をかしげる恰好と筋肉だが、長時間のオペには体力も必要だろう。

「ふむ、見たところ健康体だ。さすがです」

 そして健康状態を見抜いてくる。社長も定期的に健康診断を受けているのだ。

「私が倒れては会社も回るまい。それに、若造共の成長をまだまだ見たいからな」

 ここは制作スタジオというより事務仕事を行うオフィス。スタッフの育成や制作体制のために本社の建物を全部使っているため、社長室や事務所は移動となった。

「設備の移動で騒がしくしてしまうかもしれないが……」

「なに、ここは事務所でな。それにみんなして好きなアニソン聞いて仕事してるよ。多少の騒音は聞こえまい」

 珍客を迎えつつ、社長は事態の対応を試みた。


   @


 響と遊騎は深井という人物の家へやってきた。マンションの一室である。

「ちわー、遊騎っす」

「どうも」

 インターホンを鳴らすと、やつれた若い女性が出てきた。この状態では店に来ないのも、深井を知らない響でも納得するほどだ。

「あ、こいつは友達の響」

「初めまして」

 さすがに家の中へ押しかけるわけにはいかないので、玄関での会話。

「今日は顔見に来ただけだ。なんかあったら言ってくれ」

「ボクもできることなら」

 本当に顔合わせとちょっとした会話程度である。あまりぐいぐい行くのが正しいとは限らないが、一方で控えめだと頼り切れず……みたいなことがあるので難しい。

「ん?」

 その時、遊騎は玄関に落ちているメモを見るそこには『baby blue』という単語が書かれていた。それが一体どういう意味なのか分からず、彼は見たということだけを覚えておく。

「んじゃ、またな」

 そのまま彼は深井と別れる。追及しても特に意味があるとは思えなかったからだ。

「ベビーブルー?」

「なんですそれ?」

 ただ気になるのはベビーブルーという単語。たしかにただの単語で聞いても何かあるとは思えなかったが、どうも引っかかる。

「ああ、さっき玄関に落ちてたメモに書いてあって」

「産後鬱のことだと思うんですけど」

 響が言うに、ベビーブルーとは産後にホルモンバランスの変化で起きる鬱とのこと。

「産後? まぁ深井さんの子供まだ赤ちゃんだったけど産後ってほどじゃ……」

「あとは単に色の名前ですか」

 そうなるとますますあのメモの意味が分からない。

「他の意味は……」

 遊騎はスマホでベビーブルーを検索してみる。響の言った意味以上にはないだろうが、念のため。

「これは!」

 だがとんでもない内容を見つけてしまう。気づけば彼はゆいに連絡を送っていた。

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