プロローグ2
それは夕焼け色に染まるいつもの帰り道。友達もおらず、一人で学校を終えて帰る途中、何処にでもある普通の高校に通う|高波莉葉(たかなみりつは)という美しい黒髪が似合う少女がいつものように足早に歩いていた。
そんな時、莉葉は自宅の帰り道でよく通る神社の前で足を止めた。
「じっ、神社か……うーん、たまにはよってみようかしら……」
家を帰っても、宿題以外やる事がない莉葉は、たまに違う事をしようと思い、神社を見ながら、そう呟き、神社の方向へ足を向けて、石段を一つ一つゆっくりと登り、大きな赤い鳥居を潜り、境内に入った。
そこは両サイドに沖縄のシーサーの形をした銅像が立ち、時刻は夕方の5時だというのに、周りには誰一人いなく鳥の声すら聞こえない。
この神社は莉葉以外誰もいなかった。
「めっ、珍しい。誰もいないなんて……。まぁ、いいかお参りして行こう」
微かな驚きと共に境内を進み、賽銭箱の前に近づくと何かを思い出し、その場で立ち止まった。
(神社で願い事をするなら、持ってる鞄は邪魔になる)
ふとそう思った莉葉は、手に持っていた学校鞄を境内にある大きな木の下に置いた。そうして、少しだけ軽くなった身体で再び賽銭箱へと向かい、その前に立ち止まった。
莉葉は左ポケットから財布を取り出し、中に入っていたお金を取り出し、財布をポケットの中にしまい、賽銭箱に入れ、鈴を鳴らし、手を合わせて願いを込めた。
それは現実的にはあり得ない、冗談めいた願いだった。
(もし、異世界へ転移出来るならして下さい。そして、私を魔法使いにして下さい。)
心の奥でそう願った。
何故、こんな願いをするかは、今の学校生活が退屈すぎて、友人と過ごしても全然楽しいと感じないからだ……。
小説に描かれるような魔法の世界へ行きたいと願っていた。魔法使いになりたいと。だけど、そんな願いが現実離れしたもので、叶うはずがないことは莉葉は理解していた。
そんな世界はないと……。
「……なんてね。そんな願い、叶う訳がないのにね」
そして、お願い事を終えた莉葉はゆっくりと賽銭箱から離れ、神社の境内を見渡しながら、自嘲気味に呟いた。
その時、足元から輝きが現れ、魔法陣が浮かび上がり、眩い光が神社全体を覆い、周囲の風景が一瞬で消えた。
「え、何これ?」と驚きの声を上げる間もなく、次の瞬間、光に包まれていた。神社から離れるとともに、その光の中へと飲み込まれていった。
光の中へ飲み込まれた莉葉はまだ知らなかった。自分が住んでいた世界から剣と魔法の世界へ転移され、最弱魔法使いの少女と出会い、自身が魔法使いになり、魔法学園に入るなんて……。
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