第14話 金の亡者

 今になってわかったのだが、今日の俺は冷静さを欠いていたらしい。


 ―――だって、鬼瓦とトール君に復讐終わったらもう俺の仕事は完了〜とか思ってたんだぜ?


 実際にはまだ残ってるっていうのに。そう、朝山さんですよね。鬼瓦父はなんかもう会うのめんどいし、そもそも時間を取ってくれないだろうから父さんに任せる。


 もう勤務時間は終わっているかもしれないけど、先生ってブラックなんだろ?


 だから少しでも金をもらおうってするんだろ?


 じゃあ、学校行ったらいるよな?学校で思いっきり証拠突きつけて糾弾してやれば良いのか。


 さっきちゃんとお父さんから【声真似の極み】で作った音声もらったし。


 ニチャア〜〜〜


 笑いが止まんねぇなぁ!






 _______






 学校、生徒だとはいえ夜の7時をまわってるから入れないかも…?とか思っていたんだが、忘れ物しましたーで簡単に入ることができた。


 意外とちょろいんですか?それとも生徒のことしんようしてるってこと?


 まぁいい。入れたんだからそれでよしとしよう。どうせすぐにこの学校との関わりはなくなるんだから。


 玄関から中に入り、一番近くの部屋、職員室へ向かう。


 夜の学校ってきたことないからなんか変な感じがする。―――ただ怖いだけってのは内緒な?


 コンコンコンコン


「失礼します。2年2組の藤本です。校長先生に用があってきました。校長先生、いらっしゃいますか?」


「あー、校長室にいるぞ」


 と返事をくれたのは俺の担任教師。名前は、………あ、そうそう。山川下穂高やましたがわほたかだ。


 こいつも俺がいじめられてても恐らくなんのアクションも取ってなかっただろうから、俺の敵なんだろうが、もうめんどくさい。


 俺が俺になってから直接色々されたやつと、その元凶だけ潰せばいいんだ。


「わかりましたー。ありがとうございます。」


 そう言い、一応の感謝の気持ちを見せてから、隣の部屋の校長室に向かう。


 もう俺はノックも、失礼しますの挨拶もしない。そんなのをする価値を感じない。こいつには。


 トール君のときもそうだったか?いや、トール君のときはトイレ用のノックをしたんだっけか。


 ドーン、と乱暴にドアを開けると、そこには驚いた顔をした校長の姿。


「なんだね!ノックをせずに!失礼な……」


「あー、すみませんすみません。ノックをする価値を感じなかったので。」


「なんだと…!?」


 やっぱり校長ってプライド高いよな。それは先生全体に言えることかもだけど。


 もーちょっと優しくしてくれてもいいんじゃないか?大人はピリピリしてんのか。


「いやぁだって、する校長先生って、だめだと思わないんですかね?」


「!?………」


「あれぇ?なんでそんなに驚いてるんですかねぇ…?隠してたのがバレたから?」


「違っ…!」


「あーあー、無駄な抵抗して…」


 そう言って、俺は今までにやったのと同じようにカバンからコラ画像を出して、校長に見せる。


 まぁ俺は、どんなふうに偏差値が決められてるのかとか、どうやったら信じ込ませられるかとかはよくわかんないから適当にそれっぽい画像を出しただけなのだが。


 けど、それでも効果はあったようで、校長はこんな事をおれにいってきた。


「なぁ…、藤本君。いくらだ。いくらでその画像を私に渡してくれる?」


 ……へぇ。常習犯なんだ。金銭授受って。


 自分は校長が受け取っただけなのかなー?とか思ってたんだけど?自らも払っちゃうわけ?


 たしかに学校の存続がかかってることでもあるからいくら金を積んででも証拠を消しておきたいってのは当然か。


「いくらまでなら、払えるんですかね?」


 まぁここは一旦相手の言葉に乗っておく。頑なに画像を渡すことを拒否していても変な感じがするしな。金だけ貰ってグッバイするつもりだけどなぁ!


 校長は、いざ実際にいくらまでなら払えるのかと考えているのか、ゴニョゴニョ呟いている。


「10万でどうだ?」


「少ないですね。もっと」


 たかが10万円しか払える財力がないのだろうか。いや、俺のことを舐めてる?


 そうか。舐められてるんだな?俺。じゃあとことん吊り上げてやるよ。小エビで鯛を釣る、やらせていただきます。


「じゃあ!20万!」


「少ないですね。」


「30!」


「まだ行けるんじゃないですか?」


「35!」


「まだまだ」


「40!はぁ…。限界だ…。これで勘弁してくれ…。」


 ……結局その程度なのかよ。おもんねぇ。もっと出せよな?


「わかりました。それでいいですよ。」


 声に俺の怒りが含まれてしまった気がするけど大丈夫だろうか。


 バレないか?金だけ貰って結局メディアにバラすの。


 いや、大丈夫だ。女神様が言ってたろ?『この世界の人達は、すーぐ人のことを信じるので』って。


 ……その後なんて言ってたかは思い出せないけど。


 校長が40万の小切手を書いて俺に渡してきた。


「さぁ、金は渡したぞ!早くその写真を渡してくれ…!」


「あーしかたないですねぇ…。渡してあげますよ。」


「はぁっ!?複数…?」


 普通に考えたらわかるだろ、っていうことで校長は大いに驚いている。


 なにをそんなに驚くことがあるのだろうか。頭が足りないのか?


「え、だって僕、写真が1枚だけなんて一言も言ってないですし、校長先生は写真を渡してくれって言ってたので、別に2枚目までは渡す必要ないですよね?」


「クソっ…!もう40でいいか?金がほしいんだろ?どうせ。」


 あー鬱陶しい。なんでいちいち頭にくる言い方をするんだろうか。こいつは。


 どっちのほうが立場が上かっていうのをわかってないんだろうなぁ…。


 わからせてあげないと。


「えー、40じゃあ足りないですねぇ…。」


「……わかった。100で!これで勘弁してくれるよな?」


 100かぁ…。100ならいいかな。こいつからは散々金をむしり取ったあとにポイッってするのが一番効く気がするから。


「わかりました。」


 先程と同じように、校長は小切手を書いて俺に渡してきた。


 よしよし、今現時点で、140万。


「藤本君。もういいだろう。早く帰ってくれ!」


「あれぇ…?まだ話は終わってませんよぉ…?」


 そう言い、俺は鬼瓦父との金銭授受の現場の写真を見せる。


「――これ、いくらまでなら払えますか?」

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