第11話 救世主、『窓際族』
「……誰だよ、お前。警察か?」
突然発せられた声、しかも鬼瓦に対して投降を促す声に対して、鬼瓦はもちろん反抗する。
しかし俺は、この声の主が誰かってのを知ってるので、その反抗が滑稽にしか聞こえない。
俺が準備よく警察を呼ぶ?そんなわけないだろうが。第一、警察なんて問題の解決ができなさそうじゃねぇか。
「俺はだな、鬼瓦君――」
「窓際族、だ。」
「……は?」
はっ!驚いてやーんの。いやいやおもしれぇ。まさか自己紹介で窓際族なんて言われるなんて思ってなかっただろうしな。
「鬼瓦、説明してやるよ。この人、『窓際族』さんは、俺の父さんだ。新聞社の窓際族をやってる。」
「はっ!窓際族に何ができるんだよ!」
「……鬼瓦君。聞いていなかったのかね。わたしは、新聞社だぞ?この事を新聞に乗せるなんてお手の物。そういうことだよ。わかるかい?」
「………」
「そして、だ。鬼瓦。お前の父さんの談合、金銭授受の証拠は、そのうち新聞に載るだろう。もうお前は詰んでるよ。」
俺と父さんで淡々とこれから起こること、いや起こすことをよ説明してあげた。
すると、鬼瓦はナイフを向けるのをやめて、最後の負け惜しみのような声で話し始めた。
「なんで、なんで。父さん…?父さん、何をやってるんだよ…?」
……へぇ。この期に及んで自分のやったことを後悔じゃなくてお父さんのことを責めるのか。
未だにわかっていないのだろうか。別に鬼瓦のお父さんが何もしていなくたって、息子であるお前が殺人未遂なんてことをしでかしたら立場が危うくなってただろうに。
あぁ。そうか。お父さんのせいにして、自分は悪くない。もみ消してくれないお父さんが悪いって、そういいたいんだな?
そう言えば精神弱かったもんな、こいつ。トドメをさしてあげようか。
「鬼瓦。お父さんが金銭授受してなかったとしても!お前が殺人未遂なんてやったらお父さんはどのみち終わってたんじゃないか?」
「………」
「それに。もしかしたら、お父さん、何もしてないかもな。」
「それってどういう…?」
「自分で考えろ、けど。鬼瓦、お前がほとんど悪いってことだよ。」
俺は鬼瓦のお父さんが何もしてないとは言ってないからな。してない『かも』とはいったが。
こうやって、鬼瓦により強く罪の意識を植え付けるのが目的だ。
フォぉ!!楽しい!下剋上!最高すぎるぜっ!!
それからはもう俺の独壇場で。
「お父さん、ちょっとだけ離れておいてくれねぇかな。」
そう言ってお父さんを離れさせたあと、俺は一番やりたかったことをやり始めるのだ…。
「鬼瓦君、正当防衛って知ってるかな?」
と、笑顔をキープして、なるべく怖い印象を植え付けないように語りかける。
「………」
「あれぇ?知らないのかな?じゃあ俺が、教えてあげるね?」
そして俺は鬼瓦が持っていたナイフを拾い、鬼瓦の首筋に当てる。
「鬼瓦君、正当防衛ってな、こういうことなんだぞ?」
まぁ流石に首を切るのはだめなので、手首にしてやっておいた。
まぁ親にはリスカって言えばどうにかなりそうな位置にしておいてやったから。感謝してな?
あ、もう親終わるんだったなwざまぁ!!
「……痛っ!!」
「あーあ。血、出てきたなぁ…!じゃあどこから出たのかバレないためにもっと血、出さないとな。もっと血出したら、どこが傷口かわかんなくなるもんね。あー俺って賢い。」
そう言って、俺は切った場所のすぐ近くをもう一度切ってやる。
「これでどこからでてるのかわからないな、良かった良かった。」
「ハッ……ハッ………」
「あれぇ…?今度は過呼吸だねぇ…!ダイジョブかなぁ…?あ、そうだ。呼吸を止めてあげたらいいんだ!!」
なんといいことを思いついたのだろうか。早速実践してあげないと…。
俺は完全に力が抜けて魂のようになってしまっている鬼瓦の首をつかんで、ジワジワと首を絞める力を強くする。
「ぐるじぃ……」
「あれぇ?けど、過呼吸止まってるぞ〜?」
どんどん、どんどんと。
鬼瓦から発される声がか細くなり、抵抗が弱まってきたところで手を離してやる。
「良かったな、過呼吸止まって。俺に感謝は?過呼吸が止まる素晴らしさ、だぞ?」
「は、はいぃ…!ありがとうございました。」
……と。1つだけ言っておいてやんねぇと。
「鬼瓦、最後にこれだけ聞けよ?」
「――窓際族って、最強なんだぞ?」
「………」
「父さん、帰ろっか、あ、先に警察行かないと!」
「あ、終わったか?じゃあ行こうか。」
……とうさん。めっちゃ近くにいるくないか?
まぁいいや。俺の一応の目的が達成できたところで、鬼瓦と別れて俺たちは警察へ向かって行く……
あ!!橋本にも復讐しに行かないと!!
「お父さん。今日はありがとう、それと!俺まだやんなきゃいけないことあるから!じゃ!!」
「え、おい!」
後ろからお父さんの驚いた声が聞こえてくるが、気にしない。今の俺は橋本に復讐することで精一杯なんだ。
「ああああああ!!!!!」
――鬼瓦。うるさい黙れ。お前はもう負けたんだ。ずーっと虐げていた俺にな。
あ、そう言えば手出しちった。テヘペロ。まぁいいか。別に逮捕されたってやりたいことできたから満足……
……あ、ちゃんと金は奪い返しといたぜ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます