第9話 決戦直前

「ではホームルームを終わります。さようなら。」


 鬼瓦に金を渡したあと、俺はしっかりと奴隷としての最後の役目を果たし、長い長い学校が終わった。


「さようならー!」


 みんなはそれぞれに挨拶をしながら自らの家に帰っていったり何処かへでかけたりしている。


 それは鬼瓦たちも例外ではないようで。


「なぁ。トールたち。藤本から金でどっか出かけねぇか?」


 と。あたかも『貰った』ことを強調して、橋本たちを誘っている。


 まぁたしかにあの態度はあげた事になってもおかしくはないのか。


 ……いやいや違う違う!そんな事を考えてるんじゃあなくて。俺にはやらなきゃいけねぇことがあるだろうが。


 そう。【コラ画像生成】で作った画像であいつを脅すんじゃないか。


 そうと決まれば、勇気を出して。俺には女神様がついてるんだ。いくらいじめられていたって、大丈夫。


「お、そうだな。行こ「おい、鬼瓦。」」


 俺は1言、今までとは全く違う声色で鬼瓦に声をかけた。


 案の定、鬼瓦たち、そして、俺がそんな声色で鬼瓦のことを呼び捨てにするなんて思ってもいなかったであろう、帰っていなかったクラスメートたちも驚いたように俺の方を見てきていた。


 いつもならこの視線は汚物を見るような視線だが、きょうは少し違う。


 そのことに若干興奮を覚えながら、続けて俺の要求を口にする。


「俺はいつまでもお前の奴隷のようになっているつもりはない。今日、俺と戦え。一対一だ。」


 もちろん、こんな事を言って鬼瓦から逆上される可能性だってあるだろう。けど、俺には【転移】があるのだ。精神安定してることが条件とか言ってるけど、……ダイジョブだよな?


 まぁいい。いつだって逃げ出せる。この勝負、おれの勝ちはあったとしても俺の負けはないだろう。


「あん?お前、誰に口聞いてんだ?」


 流石に鬼瓦も頭にきたのか俺に対して厳しい口調で言ってきたが、そんなことは気にしない。


「お前だよ、鬼瓦。話聞いてなかったのか?」


「そうかそうか。ハハッ。お前が、俺に挑むだと?アホか?お前ごときが勝てるわけがないだろうがよぉ!」


 ……それはこっちの台詞なんだがな、鬼瓦。


「そう言って逃げるのか?大口をたたく暇があったら俺と戦えよ。」


 若干煽り気味に俺が言うと、鬼瓦は我慢できなくなったのか、顔を赤くしながら


「わかった。やってやるよ。お前じゃあ俺には勝てねぇだろうしな。」


 と、ゲームの序盤に出てくるモブキャラの勝ちはようなセリフを吐いて、俺と戦うことが決まった。


 ……というかこれ、鬼瓦、俺と力で戦うと思ってねぇか?


 そんな、力で戦うわけねぇのにな。それすらわからない時点でアホだ。


「なら、お前はおれについて来い。橋本、お前らは来んじゃねぇぞ?」


「へいへい。優さん、きょうは帰っていいんすか?」


「まぁそうだな。明日になったら藤本はいなくなってるだろうから。楽しみに待っておけよ。」


 ……意外だ。こういうのって駄々こねてついてくるものだと思っていたのだが。


 まぁいい。俺の希望が通ったんだから喜ぼう。


「じゃあ行くぞ。鬼瓦。」


「おう。まぁ、俺に手を出した時点でお父さんがお前の事なんぞ潰すけどな。」


 ……そのお父さんも、俺の手によって潰されそうと聞いたらどんな反応になるんだろうな。


 考えただけでゾクゾクしてくるよ。ね、鬼瓦君。首を洗って待っててな?

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