エピローグ『プールデートとても楽しかったです!』
それからも、25mプールで優奈とクロール対決をしたり、ウォータースライダーで再び一緒に滑ったり、レジャープールでビーチボールを使って遊んだりするなどしてスイムブルー八神での時間を過ごしていく。
優奈との初めてのプールデートだし、優奈がたくさん笑顔を見せてくれるからとても楽しくて。だから、あっという間に時間が過ぎていって。
「あっ、もう午後6時近いんですね」
レジャープールで遊ぶのに使ったビーチボールを遊具のレンタルコーナーに返した直後、優奈が近くにあった時計を見ながらそう言った。時計を見ると……優奈の言うように、時計の針が午後6時近くを指している。
「もうそんな時間になっていたのか。楽しいから時間が過ぎるのが早いな」
「そうですね。色々なことをして遊びましたし。……スイムブルーは夜まで営業していますので、もっと遊んでいきますか? それとも、このあたりで今日はもう帰りますか? これまで、ここで遊んだときはこのあたりの時間までには遊び終わっていて」
「そうなんだ。……俺もここで遊んだときは、今くらいの時間までだったな」
特に小学校の高学年や中学生の頃に友達と遊んだときは。当時は実家に暮らしていたし、外で遊ぶときは夕食までに帰ることが多かった。帰るのにかかる時間のことを考えて、今くらいの時間までに遊ぶのを終わらせていたな。
「今日はもう帰ろうか。優奈と一緒にプールでたくさん遊べて楽しかったし。あとは……お腹が空いてきているのもある」
「ふふっ、そうですか。私も和真君と一緒にたくさん遊べて楽しかったです。では、今日はこれで帰りましょう」
優奈はいつもの柔らかい笑顔でそう言った。
ここに来て水着に着替えたときと同じく、更衣室の前で待ち合わせすることを約束して俺は男性用の更衣室に入った。
更衣室では水着から私服に着替えている人が多い。更衣室の中にはシャワールームがあるけど、そこにも列ができているし。そういえば、これまでも、今くらいの時間に帰る準備をすると、更衣室の中は人が多かったっけ。
10分ほどシャワールームの列に並び、俺はシャワールームで体を洗う。シャワーから出てくるのは水だけど結構気持ちいい。
シャワーを浴びた後、水着から私服へと着替えていく。数時間ほど水着を着て優奈とプールで遊んでいたから、私服に着るのが随分と久しぶりに感じた。左手の薬指に結婚指輪を付けることも。
着替え終わって、洗面台にあるドライヤーで髪を乾かした後、荷物を持って更衣室を出た。
「優奈は……いないか」
シャワールームの前で待つこともあったし、優奈がいるかもしれないと思ったけど。まあ、ゆっくりと待とう。
とりあえずスマホを手に取ってスリープを解除すると……数時間ぶりだから、メールやLIMEをはじめとしたアプリなどの通知がたくさん来ている。
LIMEの通知をタップすると、友達一覧が表示される。いくつかのアカウントから、新着のメッセージや写真が届いている。優奈からも新着の写真が届いていて。優奈が一番多い。水着に着替えたときの写真をたくさん送ってくれたからだろう。優奈のアカウントをタップする。
優奈との個別トークが開くと、水着に着替えた直後にここで撮影した写真がたくさん表示される。
「可愛いな……」
優奈が写っている写真はたくさんあるけど、どれも可愛い。ピンクのビキニがよく似合っていて。あと、結婚指輪が写っているのもいい。全ていい写真だ。優奈が送ってくれた写真を全てスマホに保存した。
「お待たせしました」
写真を保存し終わった直後、優奈のそんな声が聞こえた。声がした方に顔を向けると、すぐ近くにスラックスにノースリーブの襟付きブラウス姿が立っていた。この服装の優奈を見るのは久しぶりだ。
「待ちましたか?」
「ううん、そんなことないよ。優奈が送ってくれた水着姿の写真を見ていたし」
そう言い、水着姿の俺達の写真が映っているスマホの画面を優奈に見せる。
「水着に着替えたときに撮った写真ですね。我ながらいい写真です」
「そうだな。水着姿の優奈、可愛いなって改めて思うよ」
「和真君の水着姿も素敵ですよ」
「ありがとう。じゃあ、そろそろ帰るか」
「はいっ」
俺達はスイムブルー八神を後にして、最寄り駅の八神駅に向かって歩き始める。
スイムブルーに来たときと同じように、今も雨がシトシトと降っている。なので、八神駅まで優奈と相合い傘をすることに。優奈と相合い傘をしているし、昼間に比べると蒸し暑さが和らいでいるので快適だ。
数分ほど歩いて俺達は八神駅に到着する。
電光掲示板を見ると……高野駅がある上り方面の列車は、5分後に3番ホームから快速電車、8分後に特別快速電車が2番ホームから発車する予定になっている。
ただ、優奈曰く、3番ホームから発車する列車は八神駅が始発とのこと。始発なので座れる確率はかなり高いのだそうだ。なので、優奈は快速電車を提案してきた。ちなみに、これまで優奈は八神駅周辺で遊んだとき、3番ホームから発車する電車があるときはその電車に乗って帰ることが多かったらしい。
快速電車なので行くときに乗った特別快速電車よりも時間はかかる。ただ、プールで遊んで疲れがあるので、座れるのはとても魅力的だ。なので、優奈の提案を受け入れた。
快速電車が発車する3番線ホームに行くと、既に電車が停車していた。
行きと同じく先頭車両に乗ると……電車の中はかなり空いている。立っている人はおらず、座席もぱっと見7割ほど空いていた。
俺達は数席連続で空いている座席に隣同士に座った。
「座れたなぁ。あと、先頭車両なのもあるだろうけど、かなり空いてるな」
「ですね。この電車の3分後には特別快速が八神駅に来る予定ですし、そちらに乗る人が多いのでしょう」
「きっとそうだろうな。プールでいっぱい遊んで疲れもあるから、こうして席に座ると結構気持ちいいな」
「ですねぇ。電車の中も涼しいですし」
「ああ。まだ発車していないけど、この快速電車で良かったってさっそく思うよ。提案してくれてありがとう、優奈」
「いえいえ」
俺にお礼を言われて嬉しいのか、優奈は嬉しそうな笑顔でそう言った。涼しい電車の中で座れているし、すぐ近くから優奈の笑顔も見られているから、プールで遊んだ疲れが少しずつ取れていくのが分かる。
優奈と一緒に座っているのが快適なのもあって、時間はあっという間に過ぎていき、俺達が乗っている快速電車は定刻通りに八神駅を発車した。3分後に特別快速電車があるからか、発車した時点でも空席がいくつもある。
扉の上にあるモニターに、この先の停車駅と所要時間が表示される。俺達の住まいの最寄り駅である高野駅は……45分か。ただ、座っているし、優奈と一緒だから45分間は長く感じないだろう。
「和真君との初めてのプールデート、とても楽しかったです!」
優奈はニコニコとした笑顔でそう言ってくれる。本当に楽しかったのだと分かって嬉しい気持ちになる。
「俺も凄く楽しかったよ。3年ぶりだし、高校生になって初めてだったけど、一緒に行くのが優奈で良かったなって思う。プールデートに誘ってくれてありがとう」
「いえいえ。和真君も楽しんでくれてとても嬉しいです! こちらこそありがとうございます」
「いえいえ」
「本当に楽しかったですよね。水をかけ合って、ウォータースライダーを一緒に滑って、流れるプールで一緒にゆっくり流れて……いろいろしましたね」
「ああ。サマーベッドで好きなものを飲みながら休憩したり、ビーチボールで遊んだり、25mプールで泳いだりもしたな。盛りだくさんだった。あとは……俺がナンパされて、優奈が助けてくれたな」
スイムブルー八神でのことを色々と思い出す。特にナンパから俺を助けてくれたときの優奈が印象的で。本当に盛りだくさんで楽しいプールデートだった。
「そうでしたね。……まだ梅雨の時期ですが、プールで遊ぶと夏って感じがします」
「そうだな。プールは冷たくて気持ち良かったし」
プールデートは俺達の夏のデートの恒例になりそうだ。
「プールデートが楽しかったし、あと2ヶ月以上ある夏がもっと楽しくなりそうな気がするよ。夏休みもあるし」
「私もです!」
優奈は満面の笑顔でそう言ってくれる。この笑顔を見て、高校最後であり、結婚してから初めて迎えている今年の夏がもっと楽しくなると確信した。
「和真君とのプールデートがとても楽しくて、帰ってからも和真君から一緒にいられるなんて。幸せです」
「そうだな。俺も幸せだ」
一緒に住んでいるからこそ感じられることだな。
幸せそうな笑顔になっている優奈が俺にそっと寄りかかってきて。そのことで優奈の温もりや柔らかさを感じられて。幸せな気持ちが膨らんでいく。
それからは今日のデートのことを話したり、俺が夕食当番なので優奈に夕食に何を食べたいのかを訊いたりするなどして、優奈との電車の時間を楽しく過ごすのであった。
特別編3 おわり
□後書き□
これにて、この特別編は終わりです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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