第7話『プールデートに行きませんか?』

「水色もいいなぁ。写真で見たときも思ったけど、可愛さと爽やかさを感じられて」

「ありがとうございますっ」


 6月22日、木曜日。

 夜。

 今日の優奈の替えの下着は火曜日に購入した水色の下着だ。これで、火曜日に購入した新しい下着を全て着たことになる。ピンクも黒も水色もよく似合っているし、この3色にして良かったと思えた。

 替えの下着と寝間着に着替えた後は、俺の部屋で入浴後にいつもしていることを行なった。

 いつもしていることが終わった後は、昨日の深夜に放送されたものを録画した優奈も俺も好きな日常系アニメを一緒に観ることに。俺が淹れたアイスコーヒーを飲みながら。

 優奈も俺も好きな作品だし、魅力的な美少女キャラクターがいっぱい出ているので、主にキャラクターのことを話しながら観た。優奈と一緒に観るから面白くて、エンディングまであっという間だった。


「今週も楽しかったですね。水着回でしたので、今の時期に合っていましたね」

「そうだな」


 昨日放送されたエピソードは、夏休みになったので主要キャラクター達が海へ遊びに行くという内容だった。みんな水着姿になるので、こういうエピソードは水着回と呼ばれる。日焼け止めを塗ったり、水をかけ合ったりするなど、海で楽しく過ごすという楽しい内容で。最近は蒸し暑い日も多いので、優奈の言うように今の時期に合ったエピソードだったと思う。


「あと、これは私だけかもしれませんが、季節に合ったエピソードをふと観たくなって、日常系やラブコメの作品で該当するエピソードを観ることがあるんです。今は夏ですから海やプールで遊んだり、お祭りに行ったりするエピソードですね。あとは、冬だとクリスマスや年末年始、バレンタインのエピソードを」

「優奈の気持ち分かるなぁ。季節に合うエピソードを観るとより楽しめるよな。俺も夏休みとか冬休みとかになると、その季節のエピソードを観ることがあるよ」

「そうですか! 和真君に共感してもらえて嬉しいです」


 ふふっ、と嬉しそうに笑いながら、優奈は俺にそっと寄りかかってくる。今の言動のどれもが可愛くてキュンとなる。


「あと、水着回を見たので、和真君と一緒に海やプールで遊びたくなってきました」

「俺も遊びたいなぁ。優奈とは海やプールへ遊びに行ったことがないし、高校では水泳の授業もないから」

「ですね。あと、和真君の水着姿を見てみたい気持ちもあります」


 そう言うと、優奈は頬をほんのりと赤くしている。俺の水着姿を想像しているのだろうか。


「水着姿……か。魅力的な響きだな。俺も優奈の水着姿を見たくなってきたぞ」

「ふふっ、そうですか。……あの、和真君。土日のどちらかは和真君のバイトがなかったと記憶していますが……どうでしょうか」

「確か……土曜日がなかったはず。確認してみる」


 俺はローテーブルに置いてあるスマホを手に取り、カレンダーアプリを開く。バイトのシフトが決まると、このアプリのカレンダーと、家のリビングにあるカレンダーにシフトを書き込むようにしている。

 今週末の予定を見てみると――。


「うん。優奈の記憶通り、今週末は、土曜日はバイトのシフトは入っていない」


 土曜日は空欄だ。ちなみに、日曜日は日中にバイトのシフトが入っている。


「そうですか! では、土曜日にプールデートに行きませんか? 和真君と話していたらさっそく行きたくなって」

「ははっ、そっか。俺も行きたいな。優奈の水着姿を見たいし、最近は蒸し暑い日も増えてきたからプールで遊びたい」

「そう言ってくれて嬉しいです! では、土曜日にプールデートをしましょう!」


 優奈はニコッとした笑顔でそう言った。可愛いな。優奈の笑顔を見ていたら、きっとプールデートをたっぷりと楽しめるだろう。

 空欄だった今週の土曜日の欄に、『優奈とプールデート』と予定を書き込む。デートの予定ができて嬉しいな。


「どこのプールに行こうか? 梅雨の時期だし、土曜日も雨予報だから、遊ぶとなると屋内プールがいいなって思うけど」

「屋内プールなら天候に関係なく楽しめますからね。屋内がいいですね。あと、私……いい屋内プールを知っています」

「それってどこ?」

「スイムブルー八神というところです。高野からだと、電車で下り方面に3、40分ほど乗った八神やがみ市にありまして。家族や友達と一緒に何度も遊びに行ったことがあって。去年も陽葵や萌音ちゃんや千尋ちゃん達と行きました。立派な屋内プールです。和真君は行ったことはありますか?」

「俺もそこには家族や友達と何度も行ったことあるよ。最後に行ったのは……中3の夏休みだったな。友達数人と受験勉強の気分転換で行って。あそこ、立派でいいよな」

「そうですね! 和真君も行ったことがあるんですねっ」


 優奈は嬉しそうな笑顔でそう言う。自分が遊びに行ったことがある場所に俺が行っていたり、立派だと褒めたりするのが嬉しいのだろう。


「では、行き先はスイムブルー八神にしましょうか」

「ああ、そうしよう」

「分かりました!」


 スイムブルー八神は数種類のプールやウォータースライダーがある。家族や友達と一緒に行ったときも楽しめたし、きっと優奈とも楽しむことができるだろう。


「あと……和真君。明日の放課後ってバイトはありますか?」

「明日の放課後はないよ」

「そうですかっ。では、水着を買うのに付き合ってくれますか? 高校生なってから毎年水着を新調していまして。それに、胸がGカップになったので、去年の水着が着られない可能性が高いですし。下着のときと同じく、和真君がいいなと思ったり、選んでくれたりしたものを買いたいんです」

「そうか。もちろんいいぞ」

「ありがとうございます!」


 優奈は嬉しそうにお礼を言った。

 優奈の下着を選ぶのは楽しかったし、俺の選んだ下着を優奈は嬉しそうに着けてくれている。それに、俺がいいなと思ってくれる水着をデートで着てくれるのは嬉しい。だから、水着選びにも喜んで協力しよう。優奈が選んで、どんな水着なのかデートまでのお楽しみというのもいいと思うけど。


「俺も明日、水着を新調しよう。暖かい季節になって、優奈とプールや海で遊ぶことがあるかもしれないと思って、引っ越しのときに実家から水着を持ってきたけど。高1のときに買ったものだから穿けると思うけど……俺も優奈の選んだ水着をデートで穿きたいなって思って。優奈、俺の水着を選んでくれないか?」

「もちろんですっ! お任せください!」

「ありがとう」


 俺は優奈の頭を優しく撫でる。優奈は俺に頭を撫でられるのが好きだし、気持ちいいのか優奈の笑顔がとても柔らかいものになる。可愛い。


「水着選び楽しみです。大好きな旦那さんの水着ですし。あと、男性の水着を選んだことは、小さいときにお父さんとおじいちゃんの水着を陽葵と一緒に選んだくらいで。同年代の男の人には一度もないです。ちなみに、男性に水着を選んでもらったのも、小さい頃にお父さんとおじいちゃんが候補を出してくれたことくらいです」

「そっか。同年代だと俺が初めてか。嬉しいな」


 気持ちを素直に伝えると、優奈は楽しげに「ふふっ」と笑った。


「あと、下着と同様に、水着も高校生になってからは萌音ちゃんと一緒に高野カクイで買っていて。一昨年と去年は日葵と、萌音ちゃんや千尋ちゃんを含めた友達数人と買いに行ったんですけど、萌音ちゃんとても楽しそうにしていて。特に私や日葵や千尋ちゃんが水着を試着した姿を見たときは」

「井上さんらしいな。まあ、水着によっては胸が結構見えるもんな」

「ええ。萌音ちゃんであれば、和真君の水着選びにも一緒にいていいですし。和真君さえよければ、萌音ちゃんを誘ってもいいですか?」

「ああ、いいぞ」

「ありがとうございます」


 優奈は笑顔でお礼を言うと、井上さんに『明日の放課後に和真君と一緒にプールデートのための水着を買いに行きます。萌音ちゃんも一緒に行きますか?』とメッセージを送った。


 ――プルルッ。

「あっ、萌音ちゃんからメッセージです」

「早いな」


 優奈が送ってから15秒くらいしか経ってないぞ。俺のツッコミに優奈は「ふふっ」と楽しそうに笑った。


「行くと返信が来ました。家の用事がありますが、そんなに早い時間ではないので大丈夫とのことです」

「そうか」


 ニコニコとした井上さんが頭に容易に思い浮かぶよ。


「……そうだ。優奈、最近の水着姿の写真ってあるか? どんな水着がいいかの参考にしたくて。あと、水着姿を見てみたいのもある。いいかな?」

「いいですよ。去年、スマホにスイムブルー八神へ遊びに行ったときの写真があります」

「ありがとう」


 優奈はスマホを操作していく。

 優奈の水着姿……どんな感じだろうな。楽しみだ。今まで見たのは、結婚直後のお家デートで見せてもらったアルバムに貼ってある小さい頃の優奈の水着姿の写真くらいだし。


「ありました。去年、スイムブルー八神に陽葵達と一緒に遊びに行ったときの写真ですね」


 優奈はスマホを俺に渡してくれる。

 画面には白い無地の三角ビキニ姿の優奈が映っている。オレンジの三角ビキニ姿の陽葵ちゃん、赤いフリル付きビキニ姿の井上さん、黒いクロスホルターネックビキニ姿の佐伯さんと一緒に笑顔でピースサインしていて。優奈はよく似合っていて、今と変わらずスタイル抜群だ。露出度もそれなりにあってセクシーさも感じられる。陽葵ちゃん達も似合っている。あと、1年前だからか、陽葵ちゃんの雰囲気が今よりもちょっと幼いな。


「おおっ、白いビキニか。似合っているし、ビキニだからスタイルの良さがよく分かるな。白いから落ち着いた雰囲気や爽やかさも感じられて」

「去年の写真ですが、和真君にそう言ってもらえて嬉しいです」


 えへへっ、と優奈は頬をほんのりと赤くしているのが可愛らしい。


「写真を見ていると、スイムブルー八神で遊んだことを思い出しますね。みんなと色々なプールで遊んだり、ウォータースライダーを何度も一緒に滑ったりして楽しかったです」

「そうか」


 楽しかったと言っているだけあって、優奈はいい笑みを浮かべている。


「あと、この写真……陽葵ちゃん達と一緒にピースサインしているのもいいな。3人も水着似合ってるし」

「ふふっ。プールに入る前に、遊びに来た記念にみんなで水着姿の写真を何枚も撮ったんです」

「そうなんだ。……よく見ると、4人とも水に濡れてないな」

「ええ。……一昨年に行った写真もあるので、それも見てみますか?」

「ああ」


 そう言い、優奈にスマホを返す。

 一昨年の優奈はどんな水着を着ていたのだろうか。楽しみだ。


「ありました」


 そう言い、優奈は俺に再びスマホを渡してくれる。

 スマホの画面には、先ほどと同じく水着姿の優奈が陽葵ちゃん達と一緒にピースサインで映っている。優奈が着ている水着はボトムスがミニスカートの形になっているピンクの無地の三角ビキニで、陽葵ちゃんは黄色いフリル付きビキニ、井上さんは水色のワンピース水着、佐伯さんは青いホルターネックビキニだ。あと、2年前だと、陽葵ちゃんは今よりも結構幼い雰囲気だ。


「優奈も陽葵ちゃん達も似合ってるな。色はピンクだし、ボトムスはスカートだから可愛らしい印象だ」

「ありがとうございます。この水着が可愛くて買ったのを覚えてます。陽葵達からも可愛いって言われたことも」

「そうだったのか。……参考になったよ、ありがとう」

「いえいえ。私も参考に、和真君の最近の水着姿を見せてほしいです」

「分かった。じゃあ、俺も去年のを。夏休みに西山とか友達一緒に海水浴へ行ったときの写真がスマホにあったはずだ。ちょっと待ってて」

「分かりました」


 優奈のスマホを返して、ローテーブルに置いてある自分のスマホを手に取る。

 アルバムアプリの写真一覧で去年の夏頃に撮った写真を見てみると……無地の黒い海パン姿の俺と西山が一緒に写っている写真があった。その写真を画面いっぱいに表示させる。


「あったよ。どうぞ」

「ありがとうございます」


 優奈に自分のスマホを渡す。去年の水着姿だけど、優奈にどんな反応をされるかちょっと緊張する。さっき、優奈も同じような気持ちだったのだろうか。

 優奈は「わぁっ」と可愛らしい声を漏らして、


「黒い水着姿の和真君かっこいいですね! よく似合ってます!」


 目を輝かせながらそう言ってくれた。嬉しい気持ちと同時に、ちょっとほっとした気持ちにもなる。


「ありがとう、嬉しいよ。その水着が高1に買ったやつで、今も俺の部屋にあるよ」

「そうなんですね。素敵な水着です。……西山君と一緒にピースサインしていますし、楽しそうなのが伝わってきます」

「男数人で行ったけど楽しかったよ」

「そうでしたか。海もいいですよね。私も友達や家族と一緒に海で遊びます。海水浴場とか、うちの別荘のプライベートビーチとかで」

「そうなんだ。海もいいよな。あと、優奈の家はプライベートビーチ付きの別荘を持っているんだ」

「はい」

「凄いな!」


 別荘を持っているだけでも凄いのにプライベートビーチ付きとは。さすがは有栖川家。


「別荘に家族だけで行くこともあれば、友達とも行くこともあります。高校生になってからは萌音ちゃんや千尋ちゃんとも行きました」

「そうなんだ。どんな感じか気になるし、いつか俺も優奈と一緒に別荘へ行ってみたいな。プライベートビーチがあるから、できれば夏の時期に」

「そうですね! 今年の夏休みに行きたいですね」

「そうだな」


 もし行くことができたら、きっと高校最後の夏休みの思い出になるのは間違いないだろう。


「写真で和真君の水着姿を見られましたし、参考になりました。ありがとうございます」

「いえいえ」

「水着姿の和真君の写真を見たら、水着選びとプールデートがより楽しみになりました!」

「俺もだ」


 俺がそう言うと、優奈はニコッと笑った。

 それからは、優奈を再びアニメを観る。さっき、夏になると水着回を観たくなることがあると言ったのもあり、ラブコメアニメの水着回を。優奈と一緒に観るのは初めてだけど、2人とも好きなアニメだからとても楽しめた。

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