03戀風 祈鈴 01
戀風祈鈴は死んでいた。
いや、正確には死体となっていたが正しいか。
ここは死後の世界なのだから死んでいるのは当然のことであるのだから、更に死後の世界で死ぬというのは意味がわからない。だから死んだというよりは死体になったが正しい。
それは死神との追いかけっこに決着がついてしまったある日のことであった。
死因は失血。背中に一撃ひどい斬撃を刀によってつけられたことによる。なんとも無惨に。なんとも儚く。
死体は死体というだけであって生きてはいない。しかし意識はある。だから祈鈴は少し考えた。生きるってなんだろう。死ぬってなんだろう、と。
今、祈鈴は死んでいるが死後の世界では生きている。意識はここにあるが、しかし現世の私はどんな状態なんだろうかわからない。どうやって死んだのかはわからないから、記憶がないから想像するに留まるが、しかし必ず死体がどこかにあったはずだ。それを誰かが見つけ、親族に引き渡され、葬儀が行われる。その間の意識はない。すでにこちら側の世界にあるから記憶もない。でも今はどうだろう。死後の世界で死体となっている今は死体としての記憶がある。なんとも不思議な感じだが、しかしこのようになることを望んでいたようにも思う。ああ、そうだ。私は死にたいって思っていて、それで死んだのではないだろうか。本望だったのではないだろうか。
死にたいって思って現世で死んで、死後の世界に来て、そこで死神さんに会って、透明少女の噂話のためにお仕事のお願いをして。いつの間にか友達がたくさん増えて、気がついたら死神さんに追いかけられていて。ずっとそれを繰り返し、繰り返し、挙句の果て背中をばっさり。今こうして死体となっている。
誰かいる。
わたしと同じように誰か倒れている。
そういえば少し前に、わたしの前に水桜ちゃんがやられてしまったことを思い出した。そうするとあれは水桜ちゃんなのかな。距離が遠いことと、視界がぼんやり霞んでいることが重なり、それは判別できない。同時にわたしの意識がその程度であることが、わたしには分かっただけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます