4.心想少女
しねきえろうせろごみくずばかあほまぬけくそそんざいかちなしちびかすうざいめざわりみにくいきもいしねきえろうせろごみくずばかあほまぬけくそそんざいかちなしちびかすうざいめざわりみにくいきもいしねきえろうせろごみくずばかあほまぬけくそそんざいかちなしちびかすうざいめざわりみにくいきもいしねきえろうせろごみくずばかあほまぬけくそそんざいかちなしちびかすうざいめざわりみにくいきもいんだよ
一人の少年が自殺を図った。
安否不明。
治療中。
生死を彷徨う中、意識がとある世界に迷い込む。
ねえ、透明少女って知ってる?
透明少女?
そう、air girl《透明少女》。
夏休みにだけ会えるって言う流行りの噂。ネットとかSNSじゃなくて、学校の中でだけ。透明少女という噂がある。それは透明だから見ることはできないけど、出会うことはできる。少女だから人間だし、男の子じゃなくて女の子。大人じゃなれない存在で、でも無邪気な子供でもない。会えたら幸せになれるとか、恋が叶うとか、なんかいろいろ諸説諸々あるそうだが、実際は誰も分からない。それは誰も会ったことがないから。
透明少女はまだきえていないよ。
どちらにしても選ばないといけない。
選ぶ? 何を?
生きるか。
そのまま死ぬか。
それなら、答えはきまってる。
ほう?
死ぬために自殺したんだ。死にたい。
……しねきえろうせろごみくずばかあほまぬけくそそんざいかちなしちびかすうざいめざわりみにくいきもいしねきえろうせろごみくずばかあほまぬけくそそんざいかちなしちびかすうざいめざわりみにくいきもいしねきえろうせろごみくずばかあほまぬけくそそんざいかちなしちびかすうざいめざわりみにくいきもい
うるさいか。
うん。
だからそうやって耳を塞いでばかりいるのか。
嫌だから嫌なんだ。仕方ないじゃないか。
なあ、人間。
…………。
なあ、人間というのは気がつけばみんな好き勝手言う生き物だけど、だけど好き勝手言っている人間なんて大した人間じゃない。くだらない人間。特別な価値なんてない人間。生きる意味も生きている理由もない人間。無価値。無意味。何度人生を繰り返しても特別になんてなれやしない。足掻くだけ無駄。働くだけ働いて飲んで食って寝てまた起きて働くだけでいい。それだけの人間。人間なんてのは大概がそれであり、それ以上を望む方がおかしいんだ。普通が最上級で、それ以下でようやく平凡と呼べる。そう、それが人間なんだよ。だからさ、だから人間。生きているだけで迷惑を掛け、あらゆるコトモノを必要として消費し、それで生きるだけで精一杯な人間。そんなんだからさ、人間。だからさ、死ぬなよ。せめて生きろよ。自ら命を断つな。死ぬな。苦しくて辛い人間が山ほどいるのはこの世界見てよくわかっただろう。これだけの人間が普通になれなかったんだ。普通に生きれなかったんだ。普通を求める世界に順応できず、自らを責め立てて、声すら掻き消されて。それで死を持って抗議した人間が。どれだけいたか。どれほどいたか。非凡に死んでしまった人間がどれぐらいいたか。この世界にいるのは普通に生きれなくて死んだ人たちだ。その人たちが普通に生きるための世界だ。誰も誰かを責めることも求めることもない。許容と慈愛に満ちたユートピアでありながら同時にディストピアな世界だ。お前はまだここに来るべきじゃないだろう。死ぬ理由は、世界のほうが原因なんだろう。そんな世界捨てちまえよ。最悪ここに来られるんだ。そう思って、頑張れなかったやつの分まで頑張れとは言わないがしかし、なあ、人間。まだ生きる選択肢があるのなら。あるんだったら。とりあえず死ぬのはやめてみようぜ。
やめとこうぜ、人間。
やめとこうぜ、種田霖。
「泣いているのか」
「……え?」
誰だろう。話しかけられた。商店街のシャッターの一つに背もたれ、片膝を立てて座り、側に巨大な刀のようなものを立て掛けている。黒い服装の上下に、長い前髪。よく見えない。いや、見ていない。僕が彼をきちんと見ていないだけ。
「死神、さん」
「おお、覚えていたか」
「うん」
「そうか」
日差しが暑かった。セミが泣いている。空はどこまでも青く、白いほどに青く、儚く感じるほどに青く。かなわない願い事を今日もしてしまうように儚く。
「この世界ならうるさいやつは誰もいない。普通に生きることができる」
「うん」
「そうするか?」
「ううん」
「お、世界に抗うのか。ここから脱出することを選ぶのか。透明少女のように」
「ううん」
「違うのか」
「……うん」
僕は考える。そして言葉にする。少しずつ。少しずつ。
「僕はまだこっちに来るのには未熟すぎるんだと、そう思う。まだ早いんだ。死ぬには早すぎたんだ。うん、死にたいほど辛い世界だけど、でも死ぬには早すぎた。うん、死神さんの言うとおりだよ。神さまの言うとおりだ。僕はまだ、僕は」
僕はーー。
「まだこの世界にすら来ちゃいなかったんだ。意識だけだったんだ」
「気づいたか」
「うん。魂はここにはない。まだ生身の体の中だ」
バスが来た。
ぷしゅっ、と音がしてドアが開く。
「じゃあな」
「ありがとう。死神さん」
僕はバスに乗り込んで、整理券を取った。それはただの白紙だった。
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