5.神創少女

「こんにちは。もうそろそろ世界の真相を知りたくはないかい?」


「こんにちは、ええと……纐纈こうきつあやさん」


「こんにちは種田霖さん」


「あなたは透明少女さんなのですか?」


「いいえ、違うわ」


「それでは、真相少女さんですか」


「ええ。そうとも言うわ」


「他には」


「“神”に創るの“創”で『神創少女』とも言う。同音異義ね。どちらにしてもシンソウそのもの」


「ええと、あなたの姿はドラゴンですか?」


「あら、そう見える?」


「いえ、普通の女の子にしか……」


「良かった。だって、そう見えるようにしているのだもの。他のなにかに見えていたのなら困っていたところだわ」



 ところで



「世界の真相はもういいのかな」


「はい。僕にはまだ早すぎたようでしたから」


「そう」



 彼女はそう言うとつまらなそうな態度をした。神様の暇つぶしにもならなかったか、僕は。



「生き戻ってもいいことないかもよ」


「はい」


「生きてていいことなんてひとつもないかもしれない」


「はい」


「それでも?」


「人間ですから。自分の世界で生きていかないと」



 次の瞬間、瞬きした次の瞬間にはもう病院の知らない天井だった。





 ※ ※ ※






「やどりーん」


海星ひとでか。どうした、死にたいのか」


「もうっ、ツレナイです。やどりんが何度殺しても、世界を繰り返しても同じです。何も変わらないですよ」


「そうだな。そうなんだよな……あの龍、いや神様が気でも変えない限りは」



 他のメンバーは?



「ご想像通りですよ。神北のみおちーは店番続けてますし、六合東くにさきさんはコーヒー擦りながらアジトにいます。祈鈴いのりんは今日も校庭で元気に走っていますよ」


「いいのか。そんな簡単に味方の情報教えて」


「あ、なるほどです。それは盲点でした」



 おいおい。まったく、わざとだろ。



「さてね、です」



 夏になると、いつもこうして空を見上げる。他の季節よりも空が大きく広く見えるのは雲が存在感を増しているからかもしれない。人生の主人公殺しという死神に成り果てた今でも、夏というのはワクワクするものだと思った。それは人間らしさを忘れていないという意味なのか、人間に未練があるという表れなのかはわからない。しかし、人間というのは神がなんと言おうが言うまいが、考えようとも考えなくとも素晴らしい存在だと言うことに間違いはないのだろうと、そう思える季節であったことに相違はそうないのだろうと思った。






 シンソウ少女編 了

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