第11話 初めてのクエストのようです
「ちょっと、司祭様!」
アリアが声を上げる。司祭が、ああ、と何かを忘れていたというように、深々と俺にお辞儀をする。
「申し遅れました。私、聖ミラルカ教会にて、司祭をしております。グラーノです」
「あ、よろしくお願いします」
「で、できる?」
司祭は、ニコニコと俺を見る。まさか、できないわけないよね、というように笑っている。
「いや、俺、レベル13なんですけど」
「知ってる知ってる。でも、スライム倒してるよね」
「それはアリアさんが一緒にいてくれたから」
アリアを見ると、怒ったように顔をブンブンと横に振った。グラーノがアリアを不思議そうに見る。
「アリアちゃんが倒したの?」
「倒してません。ユーキが一人で倒してくれました」
「だってさ」
確かに、村に来るまで、アリアは案内、俺は護衛というような感じで、進んでいた。いやまあ、そうなんだけど、アイテムとして持っていた木の棒に謎の特殊効果、攻撃力アップやクリティカルヒットがついたために、格段に倒しやすくなっていたのである。多分、レベル10くらいになったあたりから、その強化がついたので、勇者というジョブのおかげだとは思う。ただ、このジョブを明かしてもいいものかというのは悩ましい。アニメだと、無自覚系では言わないのが鉄則だったし、それに倣った方が良いのかとは思うが。
グラーノの半月型の瞳がまっすぐになる。見据えられている。瞳は紫色で、徐に煌めいているようであった。きっと、鑑定をされている。さっきと同じ、ぼんわりと暖かい感覚が、身体中を巡る。
「ユーキ、だっけ」
「はい」
「ジョブは、勇者だね」
ほら、鑑定されたよ。黙ってようと思ったのに、バラしやがったよ。アリアの血相が変わる。
「勇者?! それでレベルが13ですか?!」
「はい」
「意味わかってます?」
「はい?」
アリアがため息をつく。
「勇者というジョブは非常に特殊で、一般的なジョブよりもレベルが上がりにくいんです。レベルを上げるための鍛錬は通常ジョブの10倍とされています」
「えっ」
「勇者のジョブでレベル13まで上げるのに、大体10年ほどかかると言われていますし、MAXである100まで行くのには、もう……」
「待って待って、だとしたらおかしい」
「何がですか」
俺はステータスを開ける。HPとMPを見せる。
「レベル13で、この数値だ。もし、そんなレベル上げが難しいジョブなら、この数値はもっと高いはずじゃないか」
そう、アニメとかだと、1000を超えることはよくあった。なんだかんだ、HP、MPともに二桁台である。それをそんな大層なことのように言われると、感覚がバグってくる。
グラーノとアリアは俺のステータスをよく見る。よく見た上で、またため息をつく。グラーノは、やれやれというように、彼自身のステータスを開けた。
「これが私のステータス。よく見て」
グラーノ Lv.97
HP 97
MP 97
攻撃力 97
防御力 97
特殊効果:鑑定
「全部、レベルと数値が一緒?」
「あとね、ステータスは超個人情報だから、そんなに簡単に開けちゃダメだよ」
ぶおん、とグラーノのステータスが閉じられる。俺も倣って、閉じる。
「君さ、レベル13で、僕のHPとMPに近かったでしょ。攻撃力も防御力も、僕より高かったでしょ」
「はい」
「僕はね、この村で一番強いんだよね。わかる?」
「……はい」
「僕より高いレベルのやつも高い数値のやつもいないんだよね」
「つまり、俺が今一番強いってことですか。レベルは司祭様より低いけど」
「そう」
グラーノは先ほどまで座っていた椅子に再度座り直す。俺とアリアをソファに促す。もじもじと俺たちもソファに座る。
「この調査依頼、きっと、君ならすでに片付けてきてしまっているかもしれないね」
俺は手元に持っていた資料をもう一度読み返す。凶暴化したスライムが群れとなって森の中を占拠するようになっているということ。その生態と、弱点、拠点などを探って欲しいと書かれている。そこで、俺ははたと思う。
「司祭様」
「グラーノでいいよ」
「グラーノ様」
「さん、でいいよ」
「グラーノさん」
納得したようにグラーノは俺を見返す。アリアが心配そうに俺を見ている。
「多分、スライムの本隊がいるはずなんで、それについて調べてきますよ」
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