第17話
いよいよ、ライブ当日を迎えた。
緊張はしたけれど、昨日の夜はすぐに眠れ、朝もおかあさんに起こされる前にすっきり目覚めた!
リビングに行くと、相変わらず朝から爽やかな莉朋が、ペンライトの電池を交換していた。抜かりない。
「おはよう彩葉ちゃん。今日は僕たちも見に行くから頑張ってね」
「ありがとう。まあ、
点灯させる色は、いつも白。美湖ちゃんの好きな色だ。
研修生には「イメージカラー」というものがない。そのかわり、本人が公言している好きな色のペンライトをファンの人が振ってくれる。美湖ちゃんは白、私は赤。白も赤も好きを公言している先輩研修生はいないから、一目で自分の人気がわかってしまう。白はたくさんあるけど、赤はかなーり少ない……。
「もちろん彩葉ちゃんも応援するよ」
微笑んで、赤い色に点灯させる。優しい弟だ。
おかあさんの作った美味しい朝ごはんを食べる。今日は私の好きなオムライス!
朝からボリューム満点で、元気チャージ完了!
電車で一度事務所へ向かい、そこからは車に乗ってライブ会場に行く。裏口から会場入りして、まずはリハーサルをしなくていけないからね。
レッスン着のまま、舞台上の立ち位置や音響や照明のチェックをする。レッスン場と違って、客席が見えるからより緊張が高まる。
使用するライブ会場は、お客さんが約千人入る。
デビューした先輩たちは、数千、数万人の会場でライブしている。どんな景色なんだろう。
私はその舞台に立てるのかな。
リハーサルが終わり、控室に戻ってお弁当を食べ、衣装に着替えて開演を待つ。今日のライブは午後三時スタートの予定だ。
「緊張するね、美湖ちゃん」
控室では、みんな歌やダンスの確認をしているから騒がしい。ミキ先生も、注意点などをそれぞれの研修生に伝えている。
「うん、でもがんばろうね、彩葉ちゃん」
私たちはグータッチをして、気合を入れた。
いよいよ、ライブが始まる!
ライブの最初は、全員で歌う曲が二曲続く。
私は必死で身体を動かし、少ない歌のパートも心をこめて歌った。
アップテンポでノリの良い曲だから、お客さんもすごく盛り上がってくれる。それに応えるように、私のパフォーマンスにも熱が入る。
いつもは、「立ち位置を間違えないようにしよう」「歌の音程を外さないようにしよう」ということばかり考えていた。けど、今日はなんだか違う。
楽しい気持ちが心の底から湧いてくる!
この前、美湖ちゃんとお泊り会で「伝える気持ちが大事」と言ったからかも。
美湖ちゃんへの提案だったけど、自分にとっても大切なことを改めて認識できたんじゃないかな。
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