第9話
研修生ライブの映像は、当日夜にデータで送られてくる。
それを見て自分に足りないところはどこなのか、伸ばすべき長所は何かを自分で見つけて努力する。ミキ先生から言われるだけじゃなくて、自分で気づいて改善できるようにならなくちゃいけないんだって。
もちろん、送られてすぐ映像は見るけど、自分ひとりだとなかなか客観的に見られない。だから、お泊り会を実施してじっくり自分たちのステージを振り返るんだ。
夜食にポテチやチョコやジュースを用意して、反省会スタート!
一曲目から、お互いに気になったこと、良かったことを言い合う。といっても、私から美湖ちゃんに注意できることはあんまりないんだけどね。私がちゃんと出来てないから。
いつもはいろいろ褒めてくれる美湖ちゃんも、反省会の時は細かい部分まで指摘してくれる。
たとえば、ダンスの時に指先まで意識がいってないとか。
少しミスをしたときに、顔に「ヤバい」って出ちゃってるとか。
映像を細かく見て、自分ではスルーしていた部分を改めて指摘されると、自分ってまだまだだなーって思う。
「彩葉ちゃんも、気になる部分は言ってくれていいんだからね」
「そうは言っても……私から美湖ちゃんに言えることなんてあんまり無いんだよ~」
「なんでもいいの。私、デビューしたいの」
そうだよね。遊びでステージに立っているわけじゃない。それはわかってるんだけど、歌もダンスも私よりずっと上手だから……。
じーっと、映像を見る。
美湖ちゃんはいつものように、安定した歌と、キレのあるダンスをしている。研修生になった当初から上手だったけど、今はさらに磨きがかかっているとわかる。
でも……ひとつ、ようやく気になるところを見つけた。
「美湖ちゃん、私たちが一番最初に出たライブの映像、見せてもらっていい?」
オレンジジュースを口にしながら、気になる部分を確かめるため、私たちの最初のライブが見たくなった。
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