第7話
ショッピングモールでは、まずはバラエティショップコスメを見ることに。
研修生のメイクは派手なものはダメだけど、やっぱり少しでもかわいくなりたいから、ライブの汗で落ちないファンデーションとかアイブロウペンシルの情報は必須!
バラエティショップはプチプラの可愛いコスメがたくさんあるから、何時間でも見ていられる。
「
ファンデーションの色選びをしている所で、美湖ちゃんが微笑む。
「日焼け対策してる成果が出てる?」
研修生に入るまではメイクどころか日焼け対策もまったくしていなかったので、日焼けし放題だったんだよね。でも、研修生はみんな色白でとっても可愛かったから、焦って日焼け止めを買った。
「ほっぺもツヤツヤしてきたし、スキンケアの効果も出てきてる」
美湖ちゃんは、私のほっぺを人差し指でつついた。美湖ちゃんの可愛いお顔が目の前にあってドキドキしちゃう。
美湖ちゃんに教わって、化粧水もつけるようになったの。子どもだからいらないでしょ、って思ったけど、使ってみると肌のモチモチ感が全然違ってびっくり!
でも、調子に乗っておかあさんの乳液やクリームを使ってみたらニキビだらけになったんだけど……私にはまだ早かったみたい。
「全部、美湖ちゃんが教えてくれたおかげだよ」
「ううん。彩葉ちゃんが努力したからだよ」
「やったー、嬉しい!」
美湖ちゃんがちゃんと見ててくれたのが嬉しくて、コスメ売り場で思わずはねちゃう。
「彩葉ちゃんの努力は、私が一番近くで見てるつもり! ミキ先生よりもね」
ぴっと親指を立てて、顔を傾ける。美湖ちゃんのさらさらの長い髪が揺れて、なんだか「キラキラ」って音がしそう。それぐらいきれい。
私の髪は、ショートボブだしちょっとくせ毛だし、子どもっぽい。
「私も伸ばして、縮毛矯正しようかな」
「今の髪型、明るくて元気な彩葉ちゃんに似合ってるけど、長いストレートヘアも大人っぽくなってきっと可愛いね」
コメントがすべて天使! 絶対褒めてくれる!
「私、同期が美湖ちゃんで本当に良かった。えっと……美湖ちゃんもそう思ってくれてる?」
「当たり前じゃない!」
当然だといわんばかりに、ちょっと怒ったように眉を八の字に下げる。
「えへへ、ありがとう」
私は照れ笑いをしてしまう。なんか、告白したみたいな気持ち。
とっても嬉しくて、心がふわふわしてしまうけど……。楽しい思い出が増えれば増えるほど、遠くない未来の別れも想像してしまう。
この春、美湖ちゃんは高校三年生になる。
ということは、デビューするか、できなければ福岡に帰るかのどちらか、ってこと。
研修生同期として、レッスンしたりお買い物したりってことが出来なくなる日が来る。
嫌だな……。
「あ、彩葉ちゃん! あっちに新作のリップがあるよ」
泣きたくなる気持ちをこらえて、私は笑顔で「ほんとだ! 見に行こ」って美湖ちゃんの手を引いた。
ずっと一緒にいたいなんて言ったら、美湖ちゃんの夢からは遠ざかってしまうもんね。
美湖ちゃんは私と友達になるためじゃなく、デビューするために東京に来ているんだから。
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