第22話 崩血

ロクスはおもむろに外した帽子を軽く振る。


するとコロコロとサイコロのように手のひら大の正六面体の箱が出現する。


箱はロクスの三角帽と同じ翠緑色をしており、寄木細工を思わせる幾何学模様が彫り込まれていた。


「トリガー、血に変換せずにずっと帽子の中に入れてたのぉ!?」


エニアは驚いた様子で言った。


「くさそう」


ヴァンはこれみよがしに鼻をつまんで見せた。


「うるさいよ」


「ブラッドトリガー・トリガー解除オフ


ロクスは短くヴァンに言い返すとトリガーを発動させる。


トリガーを解除すると箱は機械的な変形を繰り返しながら展開していく。


箱が展開を終え動きを止めると、真紅の光を放つ結晶が姿を現す。


紅く光る結晶は浮遊しており、その場からゆっくりと上昇していく。


結晶は一同の遙か上空まで上昇したところで停止する。


一瞬、より一層紅く光ったかと思うと円柱状に、紅い光のカーテンが額面通り幕を下ろし、一行を覆い隠す。


「ブラッドトリガー、孤独に冷えた秘密箱レイレイル ロメンシャウント ハイト


「ナニコレ、随分明るくて目立ってるけど、これで敵の侵入を防げるの?」


カインはぐるぐると辺りを見回しながら言った。


「・・・」


「俺のトリガーから出ているこのカーテン・・・中と外じゃ次元世界からして違う。内側からは視認ができるが、外側から視認することは出来ない。外部からは認識することも・・・ましてや干渉することなど不可能だ。」


ヴァン「…それだけ?」


「失礼だが・・・なんというか..ブラッドトリガーの割に・・・能力しょぼくね?」


レイン「十分・・・凄まじい性能だと、思いますが・・・」


ヴァン「はぁ~やだやだ、これだからビギナーは」


レイン「・・・イラ」


カイン(あ・・・怒った)


三人がそんなやり取りをしている横でディーンは指先から出血していることに気がつく。


自身の青い血の雫が、重力に逆らって上に向かって滴り落ちていく。


(・・・? こいつの、トリガーの効果か?)


ヴァン「俺の見立てでは、お前はある程度カインの能力には察しが着いてるはずだ。

そう断定して言わせてもらうがお前は自分のトリガーを何らかの・・・例えば発動制限の緩和や、付随効果の強化のために、ワザとブラッドトリガーの能力を弱くしているように思える。それによってカインをもってしても能力の全容が掴めない。」


「ご明察通り。俺のブラッドトリガーは本来の効果をかなり弱くしている。その代価リターンとして、大抵の奴のブラッドトリガーが5分程度しか維持出来ないのに対し、俺のトリガーはフルで発動しても最長10時間程度は回しっぱなしにできる。さらに、基本的にブラッドトリガーは再使用にそれなりの時間を有するが俺のは制限が一切ない。理論上、限界時間がきたとしても、次の一瞬から再度発動することが出来るってわけさ」


「┈┈┈それもいいな…」


ヴァンが言葉を返した直後、一同の遥か背後から、激しい音をたて巨大な鯨の化け物があ出現する。


「あれ…山よりもでけーぞ…」


ヴァンが驚いた様子で呟くと、皆一様に息を飲み一瞬静寂が訪れる.....が、それを遮るようにカインの焦った声が辺りに響く。


「ちょっと待って、エニアがいなくない?」


「「「「!?」」」」

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