第18話 ホルスの目
砂埃が舞う中、少年とディーンの視線が交わり、両者の間に緊張の糸が張りつめる。
一瞬が永遠に感じる程の緊迫感を意に介さずディーンは少年に問う。
「なんなんだよォお前らァ〜」
イラ立ちを隠せない様子でディーンは頭を掻きむしる。
「う~ん、なんっていわれてもねぇ...」
少年は困った様子で首を傾げる。
「...。今日は夕方までは仕事が合って、帰ってきても仕事行って仕事したと思ったらあんな化け物に...。」
「ほら見てよこの腕ッ!!」
ディーンはバッと無い右腕をこれ見よがしに少年に向ける。
「それに加えてお前らだぞッ」
ディーンはそこまで言い切ると肩で息をしながら怒りを露わにした。
「...」
少年はそんなディーンの様子を冷めた表情で眺めていた。
少年の態度にディーンの怒りが再燃する。
「あ゙ぁ゙~もう!!!!!!
クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソカスカスカスカスカスカスカスカスカスカス」
普段声が小さく聞き返されることの多いディーンだが今この
怒りに任せ地団駄を踏み怒鳴り散らす
少年は眉間に皺を寄せ心底不快そうに両耳を塞いだ。
あ〜うるせぇクソ野郎・・・
内心苛立ちながらも一呼吸し気持ちを切り替えると張り付けの爽やかな笑顔を
「大丈夫、僕は君の味方だ!」
そう言うと少年はディーンの肩にポンっと手を置いた。
しかし、周りのもの全てが敵に見える今のディーンの心には届かない。
「ふざけるな!!
僕を寄ってたかって殺そうとしたくせに」
初対面のはずの少年に対しディーンは声を荒げてそう答えた。
「はぁ~ウザ
そんなんだから前世でも持てないんだよ」
「えっ、なんて、」
"前世"...少年の口から唐突に飛び出したその単語にディーンの脳内はパニックになる。
「あ!?・・・そーか知らないよね!」
合点がいったと一人納得した様子で少年は何度か頷く。
「僕達はお前と同じ転生体さ。自己紹介が遅れたね、僕の名前はカイン。この世界ではね...あぁそうだ、なんで転生者とわかったかだけどね、それはこの目にある。」
カインと名乗るその少年は人差し指で自分の目を指さしながら続ける。
「この目は万物を見通す"
「この目は人の記憶や心を見ることもできるんだ。便利でしょ?」
「あっと、そうだなぁ...折角だし一緒に見てみようか、君の記憶」
言うが早いかカインの目が見開かれるとディーンはその目に吸い込まれるような感覚と共に閉じていた記憶が掘り起こされる感覚を覚えた。
─ ── ─── ──────
「君ィ...今グループワークの時間だよねぇ?周りと話し合わないと答えわかんないよ!?」
「えっと・・・大丈夫です」
「なにも大丈夫じゃないよねぇ...やれって言ったことできてないんだからッ!!」
「うわぁあぁあぁ」
ガタン
ガラガラ・・・バタン
タッタッタッタッタッ...
─ ── ─── ──────
「お前ってキ○ガイ?」
「あ、あぁ、あっ」
「いや違うなぁ・・・僕の目の情報から察するに君は端的に言うとバカでクズで意気地なし...融通きかない石頭。おまけに特技は自分を守る嘘。危機管理とその場しのぎは一級品。ビビリのくせして堕ちてる自覚のないクズ。 周りと馴染めないのを周りが自分を理解できないからと責任転嫁するから当然友達いない。あ〜それでさっきの記憶に繋がるわけか」
「あんまりだ〜も~」
少年の辛辣な物言いにディーンは反論する気力すら失いその場にへたり込む。
「おら、行くぞ!そろそろヴァンが決着つけてる頃だ」
少年はディーンにヘッドロックをかけるとそのまま引き摺ってヴァンの元へと向かう。
「いてて あの男が勝てるとは限らね〜だろッ」
「いや、勝つよ、どう見たってあれがある分格が違うもん。"格"がそろそろ決着つけるんじゃないかな」
「?」
───────────────
「ぐぁあ..」
ヴァンは呻き声と共に凄まじい速度で壁に叩きつけられる。
脚を大の字に開き壁に寄りかかったまま口端についた血を親指で拭うと一言。
「しんど、お前」
「これで終わりです」
刀をヴァンに向け、構え直しながらレインはそう告げる。
「そうだな、大層な化粧も剥がれ落ちた...すっぴんだぜ?お前」
「?」
「スロット
ヴァンは再び癇癪玉のようなものを投げる。
しかし今回投げたモノは以前のものとは違う。
爆ぜると放射状に無数の血棘が展開され視認することすら困難な速度でレインに刺し迫る。
すんでのところでなんとか刀で受け止めるが血棘の勢いに押され弾かれてしまう。
弾かれたことで体制を崩すレインだったがそのまま首を
しかし、矢継ぎ早に幾つもの血棘がレインめがけ飛んでくる。
レインは脚に力を入れ持ち前のスピードを活かしジグザグにヴァンの周りを駆け抜けなんとか回避していく。
しかし二の矢三の矢と次々と放たれる棘に一つ、また1つと逃げ道を塞がれていく。
「くっ、」
遂には袋小路に陥りレインは霞の構えを取る。
「逃げ場が無くなったなぁ!」
────────────────
「いってて、一人で歩ける。いい加減離せよッ!」
「なぁ、便所で食う飯って美味いの?」
「うるせぇ!!」
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