第16話 昏倒
ズダダダダダダダダ
真横から降り注ぐ弾丸の雨にディーンは物陰で頭を抱え震えていた。
対して女は迫り来る弾丸の尽くを刀で全て捌ききっていた。
「なぁ女さん?さっきからさぁ、俺の攻撃を全部捌いてるのは凄いけどさ、もう懲りたろ?今すぐ邪魔立てを辞めたら、勘弁するけど...」
女は毅然とした態度で刀を持ち直すと答えた。
「できません、お断りします」
「へぇ、頑固だねぇ、やだやだ、俺、繊細だから善人、殺りたくないんだよねぇ」
カチッ
口とは裏腹に銃口は即座にこちらを向き、迷いなく引き金が引かれる。
ズガガガガガガガ
「どの口がッ...」
数刻前────────────
ヴァンは焼け焦げた死体を尻目に2本目のタバコに火をつけながら吸おうと口に加えたところでとある男女の2人組が目に入る。
男は片腕がなく女は男に担がれている。
「おいカイン、あいつらは、どう見える」
少年は少し考えるような仕草をした後答える。
「そうだねぇ...少なくとも、男の方は殺したほうがいいかもね、この状況だと最悪、こいつが生きてるだけで多くの人が犠牲になる」
「はぁ、、、悪人なのか?そんなに」
「・・・・というよりはクズだね、端的に言うと。人の善意を食いつぶして生きてきた類いだよ...アレは」
「.......」
─────────────
ズガガガガガガガ
しかし何故この女はこうまでしてあの男を庇うのか...
ヴァンは余所事を考えながら無造作に銃のトリガーを引き弾丸の雨を浴びせ続ける。
引き金を引く単純作業に飽き飽きしてきたその瞬間______
「!!」
ヴァンが殺気を感じ取り身構えたのとほぼ同時に高速で女が肉薄し、居合の構えから1歩踏み込み逆袈裟斬りに刀を振るった。
ギャイイン
「っぶねぇ!!」
ヴァンはナイフで女の斬撃を受止める。
この男...強い!
女はヴァンが今の一瞬で銃を一旦血液に戻し、瞬時にナイフに変化させ斬撃を受け止めた技量の高さに驚愕する。
「どういうことだ、こいつッ」
ヴァンはジグザグにバックステップを踏みながら銃弾をばら撒き女から距離をとる。
しかし女は銃弾を掻い潜り、一撃かと見紛うほどの瞬速の四連撃を放つ。
ヴァンはなんとか斬撃をいなすが一撃、頬を掠める。
ヴァンは再度距離を取り直すと女に問いかける。
「女、名前は?」
「レイン、レイン・レイルシェルト」
「チッ、レイルシェルト家、まだわからんことはあるが大分、合点がいったぜ」
「お前”
「...」
「なるほどなぁ」
ヴァンはそういいながら銃口を上に向けると銃は血となり霧散する。
「お前が守り人ならあの男は指図め、
ダックフットピストルを2丁取りだす。
「スロット
二丁で計8ある銃口から一斉に弾丸が発射される。
さらに古式銃であるにもかかわらずヴァンのダックフットピストルは秒間40発で連射されている。
「くっ...」
これには流石のレインも苦悶の表情を浮かべる。
しかし少しずつ、だが確実に弾幕を押しのけヴァンに一歩一歩近づいていく。
「しゃらくせぇ!」
ヴァンは苛立ちながらポケットから豆粒大の玉を取り出しレインへ向けて放る。
「癇癪玉だザマァwww」
煙が晴れるとそこには二本の刀を交差するように構えた無傷のレインだった。
レインはガードに使った刀をヴァンが銃でしたように血に戻し霧散させる。
「チッ、そういうことかよ!お前も主人公かッ」
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