第14話 夢双
クンニス王朝外れミクリヤ市街地
翡翠色の結晶を背負った化け物の一匹がとある店へと向かって歩いている。
化け物はおもむろに右腕を高く振り上げる。
ズガァァン
振り下ろされた豪腕は店を破壊し中で息を潜めている人間を見つけ出す。
そのまま化け物は本能のまま喰らわんと建物内へと腕を伸ばす。
大衆食堂を営むテルヌラは実の娘のように育ててきた姉妹の危機に自身を犠牲にすることを瞬時に決断する。
「あんたたち、私のことはいいから逃げな!」
「そんな、できないよ...」
「おばさん...ダメだよ!」
「化け物!こっちだ、私を食いな!」
化け物はテルヌラの方へ向き直ると雄叫びを上げ
テルヌラは逃げる二人を目の端に捉え安堵し、両目を閉じ覚悟を決める。
あぁ...二人の花嫁姿、見たかったなぁ
ドガァン
「え?」
テルヌラを喰らわんと迫っていた筈の化け物は遥か彼方へと消え失せ、代わりにフードを目部下に被った少年が眼前に現れた。
テルヌラはその少年の出で立ちに見覚えがあった。
「あ、貴方は毎日ウチでスープを頼んでた...」
少年はチラリと後ろを振り返るとフードから片目を覗かせて笑いかける。
「スープ、美味しかったです。」
フードを被った少年はディーンだった。
「助かりました。これで二人の花嫁姿を見ることがでます。」
「安心するのはまだ早いですよ」
ディーンが前に向き直りながらそう返すと同時に地響きが辺りに響く。
ズズゥン...ズゥン..ズズ
「来たか」
地響きの正体は何千匹もの化け物の足音だった。
視界を覆い尽くす程の群れはこちらに向かって近づいており、奥にはクジラの化け物もいる。
「ひ、ひぃぃ」
「こわいよ」
テルヌラは腰を抜かし娘達は震えている。
「危ないので下がっててください」
ディーンは冷静にそう言うと化け物に向かって悠然と近づいていく。
近づくにつれディーンの顔に青い茨の文様が浮かび上がる。
顔に浮かび上がった茨に指をかけ引き抜くような動作をする。
すると模様だったはずの茨は実体化し、指にかかりズルズルと引き抜かれていく。
そのまま茨は蔦をのばし周囲に拡がっていく。
蔦が地面に触れた瞬間、一瞬で茨が張り巡らされ魔法陣のような幾何学模様が地面を覆う。
「
ディーンの一言で8000体の化け物は体内から青い茨に引き裂かれて破裂する。
物陰に隠れ成り行きを見守る住民の一人が呟く。
「あれが伝説の四桁級冒険者...ディーン・ソージャー」
決勝を背負う化け物を一掃したディーンだったが、奥に控えていたクジラの化け物達には効果は無いようでダメージを与えることは出来なかった。
「ふーん即死耐性持ちか・・・だったら」
ディーンは茨を拳に纏わせると一瞬でクジラの化け物に肉薄し拳を突き上げる。
上空へと打ち上げられた化け物はディーンの拳による連撃により断末魔を上げて絶命する。
しかし息付く暇もなく残りの化け物達がディーンを囲み迫り来る。
「面倒だな...」
ディーンは人差し指の腹を親指の爪で切りつけ出血させる。
血は傷口からは考えられない勢いで噴出し、ディーンの手元へと収束しギターの形を創る。
「
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