第12話 転生者バトルロワイヤル

同刻、蠍尾大聖橋さそりびだいせいきょう


橋の上では、横断し王宮内へと迫ろうとする化け物と、それを阻止しようと攻撃魔法を詠唱する宮廷魔導師達の間で激しい衝突が起きていた。


「火矢球を放てぇ!!」


「「「了解!」」」



宮廷魔導師たちは各々詠唱し火の球を化け物に向かって飛ばす。


が、効いている様子はなく、そのままこちらへ前進してくる。


「そ、そんな」 「嘘だろ?」


「ひ、ひぃぃぃ」


宮廷魔導師たちは悲鳴を上げ、化け物に背を向け逃げ出してしまう。


すると突然、何者かが血の斬撃を飛ばし化け物を撃退する。


「貴方たち後ろに下がって!」


「勇者パーティーのフェイラ様だ!助かったぞ!」


「それにしてもキリがないわね」


愚痴りつつもフェイラの手は休むことなく化け物を次々と倒していく。


しかし...


「な、何コイツ...一撃で倒せない!」


化け物の中に一回り以上体躯が大きく、翡翠色の結晶を背負う個体が現れる。


その化け物はフェイラの血の斬撃でダメージこそ与えられるものの倒すまでには至らない。


「フェイラぁ、何辛気臭い顔してんだ!」


頭上から声がしたかと思うと何かが巨大な化け物目掛けて降ってくる。


「もっと楽しめ!」


空から降ってきた声の主はロックだった。


ロックは空中で弓なりに腕を引き、身体をしならせる。


腕が紅く光ったかと思うと、ロックは拳を固く握り、腕ごと投げつけるようにしてその巨大な化け物を殴りつけた。


鼓膜が破れんばかりの破裂音がしたかと思うと化け物は肉片となって辺りに四散し、紫の体液が雨のように降り注ぐ。


あまりの衝撃に耐えきれず橋は王宮側を残して崩壊してしまう。


「よっと」


崩壊した橋と共に下へと消えたロックは直ぐさま跳躍し橋上へと戻る。


「あとは雑魚だけだな」


ロックは首を鳴らしながら眼前の敵を見据える。


ズゥン...ズゥン


突然、巨大な地響きと共に大地が震える。


「何あれ...山が動いてる」


「はぁ?山が動くわけねぇだろ」


ロックはフェイらの視線の方へと向き直る。


「おいおい、マジかよ」


巨大という言葉が陳腐に思えるほどの化け物がそこにはいた。


化け物はクジラのような外見をしているが、筋肉質な脚があり、全身に白く太い硬質な毛が生えている。


化け物は大地を震わせながら悠然と歩いている。


─────────────


遥か上空、クジラの化け物の背には銀灰色の円盤が食い込むように張り付いていた。


「ウヒィ、あんまり集まってないみたいだけどなぁ〜♪」


「よき、これから来る」


円盤内にはクンニス王と丸眼鏡の男が操縦席コックピットのようなモノに座っている。


「そろそろいいだろう。次の段階に移行しろ」


「でも息子さん、スグそこまで来てるみたいですよォ〜?」


「ワシはあやつを愛しておる。きっと大丈夫じゃ」


「あいあいさー」


「まぁもし死んでもまたあなたが身ごもればいいですもんね♪」


「ご開帳でござる☆」


ポチっと丸眼鏡の男は何かのスイッチを押した。


瞬間、辺り一面を閃光が照らしたかと思うと、轟音と共に極大の稲妻が落ちる。


ズガァァン


稲光が消え、視界が晴れると─────


「なによこれ」


「おいおい冗談じゃねーぞ!」


目の前に飛び込んできたのはフェイラでさえ倒すことの出来なかった巨大な化け物達が街一面を覆い尽くす光景だった。


「お前ら!橋から遠ざかれ!」


「絶対落ちんじゃねぇぞ、下は地獄だ...」

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