第6話 杖を倒して
宇宙空間から大落下した時は死ぬかと思ったが、着地寸前に一瞬運動が止まって無事だった。高所恐怖症の人だと、あの景色全部ポリゴンに見えるのだろうか?
それはそれで勿体なく感じるな。
「取り合えず確認から始めよう」
周囲は森の中に見える。どう見ても街中じゃ無く、いつモンスターが出て来ても驚きはない。
「いや、まずはキスの話を思い出すべきだ」
その声は隣から聞こえて来た。チュートリアルの時も思ったが、俺の声ってこんななのか。なんかこそばゆい。
「なんで居るんだ二号、勝手に出てくるなよ」
「クールタイムが終わったからな。
けどいいのか? 影分身のスキル30分クールタイムあるから、キャンセルしたらもう一回呼びたくなっても呼べないぞ?」
それは少し面倒だ。
折角手が二つあるのに片方しか使わないというのも馬鹿らしいし。
二号は召喚された時点で自動的にパーティー登録される。視界内のUIに二号のHPとMPが表示されている。このUIの内容も切り替えれるのか、二号のMPとか知っても意味ないから消しとこ。
「じゃあまずはステータス確認から」
「キスの為に必ずアポルさんに会いに行くぞ」
もうこいつ黙れよ。どこが俺なんだ。
――――――――
PN:カツラギ
LV:10
JOB:盗賊
SUB:
ELEM:影
sp(ステータスポイント):100
スキル
ステップ10
スラッシュ9
パリィ8
装備
右武器:鉄刀
左武器:ノービスリボルバー
頭:盗賊の黒マスク
胴:盗賊マント
腕:革手袋
腰:麻のズボン
足:革靴
装飾品:盗賊の指輪
――――――――
ジョブが盗賊って、アポル的にはこれが一番俺に合ってるジョブと思われたって事か? 心外だ。
武器は鉄刀とリボルバー。二号も同じだ。ステータスポイントが100余ってる。これを割り振ってHPMPSP以外のステータスを強化できるらしい。
「取り合えずSTRでいいんじゃね」
全く同じ考えだ。やはり記憶や考え方は共通であるらしい。しかし、なんとも癪に障る奴である。素直に言う事を聞きたくならない。
「AGLもいるんじゃないのか?
それにLUCはクリティカルダメージとかに関係するらしいし」
事前に得た情報を交えそう反論してみる。
それに、銃はSTRと威力に関係なさそうだ。
「はぁ? 俺が思ったって事はお前も思ったって事だろ一号様よ?」
「お前チュートリアルの時から思ってたけど、分身のクセになんでそんな偉そうな訳?」
「俺は俺だからな? 自分の胸にでも聞いてみろよ本物さんよ」
「うぜぇ。つか俺お前みたいに下世話な話はしない」
「同意見。お前みたいなむっつりは俺じゃない」
システムを弄っているとPVP機能を見つけた。パーティーメンバー同士でルールを決めて対戦できるシステムらしい。対戦相手に二号が選べる。
送った。
「俺が上な?」
「お前が下だろ?」
お互いに全く同じタイミングで刀を抜き打ち合う。森の中で戦う事数分。
こいつ……逃げ足速すぎるだろ……! 全く攻撃が当たらない。だが、それは相手も同じらしく決着がつく気配が無い。
「一号! お前逃げ足早すぎんだろ!」
「お前こそ、逃げてばっかじゃなくて正々堂々打ち合ってこいっての!」
顔が俺だからか、こいつを見ていると無性に腹が立つ。しかも、分身のクセに偉そうにしやがって。
しかし、そんな想いとは裏腹に同時に振るった刃で両者同時にHPが半分を切った。PVPのルールはHP半損にしてあった。
しかしお互い俺なのだ。決着がつかないのが当然と言えば当然な訳だが。
「プゥゥゥ」
少しうるさくし過ぎたようで、PVPの最中にモンスターが寄って来た。
現れたのは角が黒い鹿の様なモンスターだ。体が本物より少しデカいが、特徴はその程度。
「取り合えず勝負はお預けだ。まずはここら辺のモンスターを倒すぞ」
「あぁ、リボルバーの実験台にしてやるよ」
また何度か二号と激突したが、何とか勝ち切った。突進がメインの攻撃方法らしく、俺と二号で左右い別れて同時に動体を斬りつけ三枚に卸した。剣豪スライムに比べれば雑魚だ。
「プゥプゥ」
「また湧きやがった! スラッシュ」
「プゥゥゥ」
「こっちもだ畜生、ステップ!」
一匹倒したらめちゃくちゃ湧き始めて、倒しきるにはかなり時間が掛かったけど。
取り合えず後半は完全に相手にする敵を分ける形で対処できた。今度もこの方法が取れる時は、戦闘の効率が上がるだろう。
「チームワークが無さすぎるだろ二号」
「お前もうちょっと合わせろよ一号」
ハズレだろこのスキル……
いや、折角貰った進化したスキルなんだ。
使わない方が勿体ないのは分かってる。
火力自体は上がってるんだし……
取り合えず進んでみるのが先決か。戦いながら調整していこう。
「はぁ、取り合えず進むか」
二号がそう提案してくる。
「俺も今そう言おうと思ってた所だ」
空を見れば、巨大な塔が見える。
これは落下してた時も見えてたが恐らく、あの塔の先に街があるんだと思う。
少し周囲を探索してみたが周辺は山岳というか山脈に囲まれている。登る選択肢も無くは無いが、登山用の装備か移動系のスキルでもないときつそうだ。
「で、山脈が渦巻状にある事が分かった訳だが。
右と左どっちいく?」
恐らく、この二択で外すと塔の街まで行けなくなる。
塔から離れてる感じがすれば逆に戻れば良いだけだが、そこまで進んでしまって引き返すのも楽しくない。きっと俺は間違えていても進む気がする。
「「左」」
こういう所は息が合う。
俺たちは山岳に沿う様に左方向へ進む事にした。
《
効果時間30分
クールタイム30分(召喚された瞬間から、クールタイムは数えられ始める)
使用された時点での使用者の【影分身】スキル以外のステータスと記憶を参照したNPCをスポーンさせパーティーに加入させる。
分身が存在している間、最大MPは分身の数+1分の1になる。
『分身だからできる事・できない事』
・パーティーからの脱退不可。(コミュニケーション用のGUI使用不可)
・パーティーメンバー以外のプレイヤーに対して
・一部NPCとの会話不可。(他プレイヤーとパーティー状態にあるNPC)
・PVP可能。(この時は相手とも会話できる)
・装備耐久値もコピーされ、耐久を越えるダメージを受けると通常通り破壊される。(装備品もコピーのため本体は無事)
・消費アイテムを他人に使用不能。(コピーされた消費アイテムの効果はコピーにしか発動しない)
・使用者の意思で影分身をキャンセルする事ができる。
・分身は自身が分身である事を自覚している。
・分身には本体には無い「趣向」が存在する。
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