「誰が悪い?」犯人探しは不要です。この案件が前に進めば

「誰が悪い?」

 犯人探しは不要です

 この案件が前に進めば



「あれ? この画面から顧客情報を確認したいってお願いしましたよね?」

 瞬間、冷や汗が出た。

 管理画面の開発状況をクライアントにレビュー中の出来事だ。出来上がった画面ごとに説明をしていたのだが、お客さんから突っ込みが入った。

「申し訳ありません、確認させていただきます」

 説明を行ってる僕もこのプロジェクトは途中から参加したため、全容が掴めているわけではない。お客さんが指摘した内容は、開発チームの中では話題に出なかったはずだ。けれども、言ってることは尤もで、この画面から顧客情報を参照できると業務がやりやすいはず。

 


「──ということなんだけど、誰かこの件聞いてるかな?」

 社内に戻って、開発チームと確認する。議題は、先程のお客さんの指摘だ。

「いや、聞いてないですよ」

「知りません」

「私も知らない」

 どうやら、誰にも心当たりは無いようだった。本当かどうかは知らないけれど。

 もしかすると僕の前任が聞いてたのかも知れない。やめてしまったし、議事録にも残ってないのでわからないけれど。

「この機能足すと、どれくらいかかる?」

 とはいえ、検討しなければ始まらないのだ。

 エンジニアたちは画面を指さしたり、設計書をめくりながら何やら話し合って、

「多分2週間くらいですかね」

 スケジュール変更になるけど、仕方ない。

「了解。悪いけど作業に組み込んでくれる。部長には僕から報告するわ……」

「大迫さんが聞いてたんですかね?」

 エンジニアの一人が、僕の前任者の名前を出す。

「いや、もういいよ。どっちにしてもやらなきゃだしね」



 <日常>

「え? そんな話してました?」

 そんな会話は日常茶飯事です。

 聞いてたという時もあるし、本当に初耳のこともある。だけど、どっちにしても対応していくしか無いのですよ。

 よほどのことでない限り、誰が悪いとかはどうでも良いのです。

(後日、反省会はするけどね)






 

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情シスエレジー 島本 葉 @shimapon

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